大阪杯を考える

【求められる適性はなんだ】

 スタート直後とゴール手前に急坂があって、他は特にアップダウンは無く中盤は平坦か下りで構成されるコース、そんな阪神2000mで行われる大阪杯がどんなレースなのかというところから考えていくと、私は”トップスピードをどれだけ持続できるかが試される脱落戦”だと考えます。

G1になって以降(2017~)大阪杯ラップ

 大阪杯のラップを並べてみると分かりやすいですが、重馬場で開催された2021年を除いて7F地点から一気にペースが上がり残り1Fは急坂もあって苦しくなって減速するというのがパターン。
 メンバーや展開に関わらず、一定以上のメンバーレベルでこの舞台を走る場合はコース形態的にラスト4Fで早いラップが求められるので、今年もそれは同様と考えて良いと思います。
 毎年急にペースが上がっている7F地点は3コーナーの途中、ここから下り坂がはじまるというのも一つの要因ですが、阪神内回りは直線が359.1mしかないので差馬は直線だけでは届かないのでコーナーから動き始める必要がある。先行勢が下り坂で自然と加速していくのに併せて後方勢はコーナーで少しでもポジションをあげようと更にスピードを出して加速していく。その2つが合わさる8.9F地点は最も早くなり、最後は早めのスパートで苦しくなった先行勢が失速しながらも凌ぎ切るか、早めのスパートに対応しながらも短い直線で瞬発力を見せた差馬が届くか、そんなレースになりやすい。
 G1になってからは全ての年で4角を5番手以内で回ってきた馬が勝利しているので、勝ち馬を探すという視点で行くならば残り4F地点からどれだけスピードを持続できるかの脱落戦でも沈まずに耐え切れそうな強い先行馬を探すのが定石。
 だけど全く差馬が来ない訳ではなく、この早めスパートに対応して最後短い直線でも瞬発力を見せることが出来れば馬券内に滑り込んでくることが出できる。
 そんな簡単なようで難解なレースですが求められる適性は前に行く馬と差馬で分けて考えたほうがいいかと思います。
 前に行く馬はシンプルに「長くトップスピードを持続させることが出来る力」後ろから行く馬は「早いペースに対応して直線まで足を溜められる基礎スピードの高さと瞬発力」これを重視していきましょう。

【こんなキャリアがあると良い】

 もちろんですが同コースでの実績はあるに越したことはないですが、このコース自体そこまで頻繁に重賞が行われるコースでもないので、過去このレースを勝利した馬でもコース実績があったのはレイパパレのみ。
 それよりも重視したいのは、この長くトップスピードを持続させるという適性が求められやすいコースである東京1800~2000の実績。あるいは2000m以上重賞の実績もありながら過去にマイル重賞でも通用するほどのスピード能力の高さを見せている。このどちらかを満たしている馬を積極的に狙っていきたい。
 勝ち馬で見ると
・ジャックドール(白富士S1着)
・ポタジェ(白富士S1着、毎日王冠3着)
・レイパパレ(チャレンジC1着)
・ラッキーライラック(中距離重賞複数勝ち、阪神JF1着)
・アルアイン(中距離重賞複数勝ち、マイルCS3着)
・スワーヴリチャード(共同通信杯1着)
 7頭中6頭がこの実績を持っており、唯一の例外となるキタサンブラックは条件こそクリアしていないが、とにかく前から常に強い競馬をしてきていた。
 2.3着馬でもこの条件をクリアできている馬は多く、過去の穴馬もこれで概ね拾える。6人気以下を穴とした場合
2023年10人気3着 ダノンザキッド 香港C2着、マイルCS2年連続馬券内
2018年6人気2着      ペルシアンナイト 皐月賞2着、マイルCS1着
2017年7人気2着    ステファノス 富士S1着 天皇賞秋2年連続馬券内
 一見阪神2000mとは関係があまりなさそうな東京実績と、マイル実績、ここをチェックするだけで過去馬券内に好走したほとんどの馬を拾うことが出来ている。今年の出走馬で言えば
・エピファニー (ケフェウスS1着)
・スタニングローズ (秋華賞1着)
・ステラヴェローチェ (朝日杯FS2着、中距離重賞複数実績)
・ハーパー (クイーンC1着、中距離重賞複数実績)
・べラジオオペラ (チャレンジC1着)

 の5頭のみ!!(条件戦は対象外、OP~G2なら勝利、G1なら馬券内を条件にしています)
 かなり少ないですし、べラジオオペラを除いて人気サイドではないというのはかなり面白いですね。

【血統傾向】

 キーワードは2つ
・父か母父がディープインパクト
・母父が米国系

 非常にシンプルですが、これだけで良い。
 G1になってから馬券になった21頭の内これを満たしていないのは4頭のみ。ダノンザキッド、ペルシアンナイト、キタサンブラック、ヤマカツエースですが、全ての例外キタサンブラックを除く3頭はマイル実績がある馬なので、結果論で言ってしまえば「この血統傾向を満たしておらずマイル実績が無い馬は機械的に切っていい」これで当たっているのがこれまでの大阪杯。
 今年の出走馬だと
・エピファニー (母父ディープ)
・キラーアビリティ (父ディープ、母父米国系)
・ステラヴェローチェ (母父ディープ)
・ハーパー (母父米国系)
・ハヤヤッコ (母父米国系)
・プラダリア (父ディープ、母父米国系)
・ミッキーゴージャス (母父ディープ)
 以上7頭!!こちらもあまり多くないですね。

 前段の求められる実績と併せて満たすことのできたエピファニー、ステラヴェローチェ、ハーパーは傾向から単純に考えると激熱。
 逆に人気サイドになるであろうタスティエーラ、ローシャムパーク、ソールオリエンスがどちらも満たせていないというのも高配当を狙いたい穴党からするとワクワクしてきますね。

【現時点での注目馬】

・ハーパー
 まずこれまで書いてきたとおり、大阪杯の好走傾向にはぴったり。
 勝ったクイーンCは稍重、その後の良馬場桜花賞では4着と好走しきれていないが桜花賞はスタートの位置取りでやや積極性を欠いたのが馬券内に届かなかった理由として大きく、スピードが足りなかったという訳ではない。
 瞬発力、一瞬のキレという点では決して優れているとは言いづらいが、前に行ってトップスピードを持続させる能力は高い。G1で3連続馬券内に入ったオークス、秋華賞、エリ女ではそのキレないが止まらない持続力を存分に発揮しての結果であり、特に評価したいのはエリザベス女王杯。
 レースラップとしては12.5-11.4-12.6-12.5-12.1-11.9-12.7-11.8-11.6-11.5-12.0となっているが、6F目で入った11.9のタイミングで逃げていたアートハウスとローゼライトが早いタイミングで後ろを引き離す仕掛けをしており、直線を向くまでにその差をある程度詰めなければならない位置にいたハーパーはラップ以上に長い間スパートをかけており、登りの途中、残り900mくらい長くスパートをかける非常に苦しい展開だった。
 結果としても比較的差有利の決着で、負荷のかかるポジションから長く11秒台のラップを刻み続ける展開を最後まで馬券内に粘ったのは今回の大阪杯で求められる適性にも通ずるものがある。
 また、前走の有馬記念も9着と大きく負けはしたが悲観する内容ではない。スタートはスターズオンアースの次に良く、スムーズに逃げを見る位置につけることが出来た。1コーナーで外からプラダリアがタイトに被せてきたことで少しスムーズさを欠いて無理をせず5番手に納まってそのまま追走。残り800mあたりから仕掛けるもプラダリアを躱す形での仕掛けになったので外3頭目を回して負荷が大きかった。勝負どころでは勢いよく捲ってきたドウデュースに躱されてしまい、精神的にもズルズル沈んでおかしくないところを踏ん張って残り1F地点では5番手、ラスト1Fは苦しくなって沈んだが3歳牝馬の有馬としては十分に力を見せた。
 レース後の望来騎手のコメントで「良いポジションがとれて、やりたい競馬は出来ました。」とのことなので、スタートから良いポジションを確保してこその馬だという認識もしっかりありそうなので、今回の大阪杯、距離短縮ローテで前走のようにスタートよく好ポジションに納まることが出来ればかなり好走に期待できる。
 内目の枠、4枠より内に入ってくれれば積極的に狙いたい。

・ステラヴェローチェ
 超長期休みから3走目で復活の勝利。元々中距離で実績を上げてきた馬なのに復帰してから3走が短い距離を使ってきたというこのローテが今回かなりプラスに働きそう。
 久々で短い距離を使っているにもかかわらず3走とも先行する競馬が出来ており、復帰戦の富士Sはダノンタッチダウンの奇襲逃げで前半半マイル45.2のハイペースを2番手で追走とレースセンスは全く衰えていないところを見せることが出来た。
 次走の武蔵野Sは適性外のダートでも難なく先行するスピード能力、ダートで流れて前半半マイル46.3でも抑えながら先行できる前進気勢の強さを見せたが、最後は流石に伸びず殿負け。
 そこから休みを挟んで1F伸ばして前走の大阪城S、58.5㎏と斤量を背負いながら前半58.6で後半12.0-11.4-11.5-11.9と実に1800らしいあまり息の入らない持続的なラップを前からこなして上がり34.5で押切り。
 そして今回距離延長の0.5とはいえ斤量減で大阪杯……あまりに理想的過ぎるローテですね。
 復帰してからも、とにかくスタートが安定しているのが魅力。今回もよほど外枠を引かなければ楽に好ポジションから競馬が出来そうで前有利のレース傾向にも合致。
 大阪杯の好走傾向にもばっちり合致しており文句なし。1週前にも6F78.5から終い11.0-11.3と猛時計を出しており状態面でも更に上積みがありそうで、長期の戦線離脱から奇跡のG1戴冠も十分あり得るのではないだろうか。

・エピファニー
 気性面で中々難しいところがあり、OP入りしてからは出世が遅れたが前走でようやく重賞を勝利しその勢いのままにG1挑戦。
 とにかく走ることに前向きなので、相手は強く、ペースは速いほうがいいので前走から一気に相手が強化されるのも悪くない。
 同舞台のオープン戦であるケフェウスSでもマテンロウスカイが超ハイペースで飛ばした展開を追走して上がり最速の勝利。走破時計も1.57.2とメンバー内では圧倒的でありこれは馬場状態が違うとはいえ過去の大阪杯と比べても勝ち切れるタイム。これだけでも無視できる存在ではない。
 また、条件戦なのでカウントしなかったが3勝クラスはこの舞台への適性を高める東京1800mを先行して上がり33.3で勝利。11秒台の早いラップを持続させる力はこのメンバーでも随一。
 更に面白いのは馬券外にはなったが昨年3月12日の中山1600東風Sの内容。単距離でスピードが出やすくはあるが、直線が短く阪神以上の急坂がある中山で上がり33.4で追い込むことが出来ている。
 大阪杯で差してくる馬に求められる”短い直線でのキレる足”これを持っているというのは非常に面白い。前走の小倉大賞典もセルバーグがハイペースで飛ばす展開をコーナーから早めに動いて長く足を使ったがしっかり上がり2位の34.6で差し切り。この経験が活きればコーナーの加速に持ったままついて行って直線瞬発力を見せるという理想の立ち回りができる可能性もある。
 大阪杯の好走傾向にもばっちりハマっているにも関わらず鞍上込みで大きく人気を落としそうな今回、高配の使者となる条件は十分に満たしている。

【まとめ】

 現時点での注目馬として、過去の結果から好走傾向に合致する3頭を挙げてみましたが、流石に条件に合致する馬は過去のレース内容を見てもこの舞台での好走につながりそうな適性をしっかり見せてくれており、3頭とも波乱を呼んでくれる可能性は十分に感じられますね。
 トップスピードを長く持続させることが求められるレースなので、かみ砕いてしまえば2000mよりも短い距離でも通用するようなスピードを持っている足の速い馬が好走できるのがこの大阪杯。
 そんなレースなのに今回出走するメンバーは2000よりもう少し長いところの方が合いそうな馬というか、ここより宝塚のほうが?と思ってしまうような馬が多い。人気サイドにもチラホラ。
 逃げ馬不在のメンバー構成なので、枠順次第で展開もかなり変わってきそうですし、混戦ムードで今週も面白いG1になりそうですね。

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