NHKマイルを考える

【大変荒れやすいレースとなっております。】

 シンプルな傾向としてみた時に人気馬は悪くは無いが苦戦傾向。過去10年の人気別の成績を見ると
1人気          2-1-1-6
2人気          3-2-1-4
3人気     1-1-1-6
4~9人気  4-3-4-49
10人気以下 0-3-3-83
 4~9人気が毎年何かしら走ってきた上で2桁人気の激走も珍しくない。人気サイドのみで決まったのが2015年の3人気、4人気、2人気の順で決まった年くらいで、1~5人気の人気サイドから2頭以上が好走したのですら2015年に加えて2016年と2021年、2022年だけ。基本的に人気サイドから1頭、中穴どころから1.2頭、場合によっては大穴が激走というような感じ。
 この荒れ傾向の要因となっているのが、前哨戦となるNZT、アーリントンC、ファルコンCがいずれも東京コースではなく、東京マイルでの実績がある馬が少ない。
 このレースに至るまでに東京マイルで重賞レベルのレースを経験するには2歳時のサウジアラビアRC、アルテミスSそして3歳時のクイーンCの3つだが、2歳時のレースでは頭数が集まりづらく、完成度もまだまだなのでタイトなレースにはなりづらく、クイーンCは牝馬限定戦ゆえにタフなコースへの対応というよりはスローから如何に切れを使えるかという点が求められるため、このレースで求められる適性とはリンクしてこない。
 そんなことも相まって「東京マイル+多頭数+牡牝混合のハイレベル戦」という全馬初経験のレースになることから、直近の成績がこのレースでの好走につながらず、前走条件合わずで負けた馬が今回人気を落として激走するというパターンが多発します。
 とはいえ、前走条件合わずで負けたとしても基本的には惜敗した馬の巻き返しが多いだけで、大敗馬は厳しいのが実態。前走掲示板を外したところから巻き返したのは5頭いますが、その内3頭は前走2000、1800からの距離短縮。マイルで大敗してから巻き返したのはソングラインとカワキタレブリーの2頭のみ。ソングラインは桜花賞でかかったメイケイエールにかなり外まで押し出される不利があっての大敗。カワキタレブリーは前走のアーリントンCで大外枠から強引に先行→NHKマイルで控えて最後方からの末脚一気とドレフォン産駒の激走パターンに噛み合った上にレース展開も噛み合った結果。よっぽどの理由が無ければ前走マイルで大敗してからの巻き返しは難しく、更に1400m以下の距離からの巻き返しは更に厳しく近10年では0、20年まで遡ってもキンシャサノキセキただ一頭のみ。基本的にはこの2パターンはよっぽどの理由が無ければ軽視してしまってもいいかもしれない。

【じゃあNHKマイルで何が求められるのか】

 過去のレースを見返していて思うのは結構シンプルで、シンプルな追走力の高さに加えて、長い東京の直線でしっかり足を使い切る能力とそれを支えるスタミナないし早熟性、これなんじゃないかなと思います。
 NHKマイルではメンバー構成的に、これまでの世代限定マイル戦と同様本質的にはスプリントがベストの馬が交じるので、基本的にはコーナー含めて極端にラップが落ちるということなく、このタイトなラップに対応しつつ足を溜めることがまず大前提。
 そして東京コースにあって、他のコースに無いもの、それは直線で坂を上ってから300m近くもある長い平坦部分。ここでスピードを支え切るだけのスタミナと完成度高さがなければ中々最後まで勝ち切るための一伸びを生むことはできない。
 前哨戦になるレースでは基本的に3Fより長い距離でスピードを持続させるような能力は求められず、ある程度ポジションを取ることや一瞬のキレ、トップスピードの高さが求められるので、前走実績がNHKマイルに直結しないのはこの求められる適性のズレのせい。
 ということで基本的な考え方としては前哨戦のレースを”上手く立ち回って”好走してきた馬や”バイアスを上手く活かした”馬、”展開に恵まれた馬”よりも、”恵まれないながら能力で馬券にねじ込んできた”爆発力のある馬や”トップスピードは足りなかったがスタミナと持続力で馬券内に粘り込んだor馬券内まで伸びてきた”そんな馬を狙うべきレースかと思います。
 基本的にレースというのは上手く立ち回って恵まれた馬が勝つものなので、前走で勝利した馬がNHKマイルで苦戦しがちなのもこれ故でしょう。

【とにかく米国血統】

 NHKマイルで求められるものというか、ここで結果を出すために必要なのが早熟性、今の時点で東京コースをこなせるだけの完成度の高さ。
 そしてそれを助けてくれるのが米国系の血統という訳です。
 米国ダートだとそもそも、序盤から飛ばしてそのスピードに最後まで耐えきったものが勝つというレース質になりやすいので、そこで結果を出すためには早くからのスタミナの完成度が求められます。それが日本の競馬の中でも特に早熟性が求められるこのNHKマイルでは顕著に良績をあげており、昨年のオオバンブルマイも父はディスクリートキャット。2年前に激走したカワキタレブリーも父ドレフォン、他にも上げたらきりがないくらい米国系血統を持っている馬が良く走っています。
 特に人気薄こそ米国血統のパターンが多く、逆を言えば米国血統を強めに持っていない馬で結果を出しているのは人気サイドがほとんど。人気サイドの馬はもちろんこれまでに人気になるだけの結果を出しているので血統的な助けが無くとも最低限の完成度は備わっている。一方で人気薄で馬券になっているのは米国血統を強めに持っている馬が多く、一瞬のキレこそ持っていなかったが、実は既にこの時点での完成度は高く、この舞台では最後まで足を止めずに走り切って馬券内に滑り込んでくることが出来る。
 今回のメンバーで言えば意外と父、母父で米国系血統を持っている馬は
・ウォーターリヒト(父ドレフォン)
・エコロブルーム(母父Candy Ride)
・ゴンバデカーブース(父ブリックスアンドモルタル)
・ジャンタルマンタル(父Palace Malice、母父Wilburn)
・ディスペランツァ(母父Medaglia d’Oro)
・ノーブルロジャー(父Palace Malice、母父More Than Ready)
・ボンドガール(母父Tizway)
・マスクオールウィン(父ドレフォン)
・ユキノロイヤル(母父タイキシャトル)
・ロジリオン(母父パイロ)
 と半数近いですが、この中に人気薄からの激走馬が潜んでいる可能性は高いかもしれません。

【現時点での注目馬】

 人気サイドだとジャンタルマンタルが使ってきたレース、血統、これまでのパフォーマンスも含めて文句なし過ぎます。あとはあれだけ激戦となった皐月賞から中2週でどこまで状態面をキープできているか次第。
 逆にアスコリピチェーノは近2走がサンデー×欧州系のダンチヒがかなり相性のいい傾向にあった阪神1600mだったこと、これまでの経験でハイレベル戦としては牝馬限定しか経験しておらず、今回牡馬混合でスプリント質の流れへの対応が求められた時にもろさを見せないか不安が大きい。
 人気を集めそうな2頭についてはこんな感じです。今回は荒れやすいレースなのでもう少し人気薄から狙いたい馬を挙げていきます。

・ノーブルロジャー
 今回の出走馬の中で血統だけ見た時に一番買いたいのがこの馬。
 父のパレスマリスはアメリカダートで活躍した馬であり、母がパレスルーマーということでジャスティンパレスの半兄でもあります。米国ダートで通用するだけのスピード、スタミナを持ちながら日本の芝との親和性も高いので、走っている馬が少ないながらも既にこのレースに2頭の産駒を出走させています。更に母父のMore Than Readyはアメリカ、オーストラリアで多くのスプリンターを輩出した名血。早い時期からの完成度の高さと早いスピードへの耐性を兼ね備えた血統と言えます。
 更に経験してきたローテも良く、新馬戦の東京マイルでは折り合って上がり33.3で快勝と末脚のトップスピードを見せており、次走のシンザン記念では一点してハイペースを中団で追走して、タフな馬場にも対応して勝利、スタミナの完成度の高さを見せた。そして前走の毎日杯はメイショウタバルには大きく負けたが、シンザン記念を中団で競馬したところから距離延長+先行へのポジションアップ+重馬場とかなりスタミナ負荷がかかる臨戦。それでいて直線ではシンザン記念よりも早い上がりを記録しており評価を下げる内容ではない。
 そこから今回は距離短縮+久々に走りやすい良馬場替わり。かなり能力を発揮しやすいローテになっている。
 想定では6番人気くらいになりそうだが、血統、臨戦過程からは間違いなくNHKマイルでの激走に期待できる馬であり、既に土曜の坂路で50.8から11.9-11.9を記録してきており、状態面でも相当期待できそう。重い印を回す可能性はかなり高い。

・ディスペランツァ
 前走のアーリントンカップの勝ち方は評価せざるを得ない内容で、馬場傾向的にサンデー×欧州系ノーザンダンサーの組み合わせが穴でも好走が目立ち、米国系の血を含んでいる馬がかなり苦戦傾向だった中で快勝。スローペースで基本的には前有利展開、結果としても番手から競馬をしたアレンジャー、中団からスムーズに外に持ち出した上で末脚を爆発させたチャンネルトンネルを更に一段後ろからぶち抜いて勝利。血統的なバイアスに逆らって勝利した上に今回は逆にピッタリの血統構成になるというのは非常に好感が持てる。
 マイルに切り替えての2走は末脚を爆発させながらもまだまだ脚を余しているような勝ち方であり、東京コースに舞台が変わっても問題なくこなせそう。体幹が強いため、走っている途中で手前を替えるときにもスピードが落ちないのも魅力、長く末脚を使うための素地が出来上がっている。
 使ってきたレースもよく、ファントムシーフの半弟ということもあり2歳時は2000mを使われたことが現時点でのスタミナの完成度を高めており、特に2歳戦でもハイレベルレースとなった京都2歳とホープフルを経験できたのは大きい。

・ユキノロイヤル
 大穴で気になるのがこの馬。
 中山で2勝して、前走がNZTで逃げて3着。東京では未勝利、1勝Cともに勝てていないということで今回全く人気にはならないと思うが、NHKマイルで激走し得る要素を持っている。
 前走のNZTは小回りの中山で恵まれたようにも見えるが実は差し優勢の持続ラップを逃げて粘り込んでおり、むしろバイアスに逆らってスタミナの完成度の高さで馬券内に粘り込んだと言っていい。
 スタートからの初速こそ早くなかったが、レースラップとしては12.7-11.6-11.7-11.3-11.6-11.9-11.7-11.9と息を入れたいはずの中盤で早いラップを差し込んでおり、馬場状態も考えると相当に前で残すには厳しい内容。実際この馬に先着した2頭は、スタートよく前目に構えてからラップが早くなった中盤のタイミングでは付き合わずに少し前との距離を取っており、スタミナロスを抑えながら好位で立ち回った。一方でかかり気味に上がってくる馬の相手をしながらもハナをキープし、直線では荒れた内を避けて馬場の中ほどまで持ち出すロスを受け入れながら坂を上っているところまではボンドガールと競り合い、最後も差されずに馬券内に残したのは相当強い内容。
 トップスピードに限界があるタイプなので、未勝利戦の東京で苦戦するのは必然であり、今回のレースに向けて気にするポイントではない。今回がスプリンター入り乱れての乱ペース、上がりを要するタフな展開となった時に前走稍重でもタフなレースを逃げてこなしたこの馬が好位からじわじわと伸びて来て馬券内激走というのは無い話ではない。好位から34.5でまとめられれば十分馬券内に残せる可能性があるのがこのNHKマイル。
 血統的にも母父にタイキシャトルを持っているのは中々魅力的。自身も早い時期から活躍し、4歳時に同舞台である安田記念を制覇、スプリント~マイルで強烈な実績を残したスピード馬であり、産駒も複数NHKマイルで好走している相性のいい血統。ユキノロイヤル自身小柄な馬ということもあり現時点での完成度も高くこのNHKマイルという舞台とは非常に相性が良さそう。
 決め手がない分、展開に注文が付くとは思うが、そもそもが前走でボンドガールと着差なしの馬が2桁人気まで舐められるのであれば抑えておいて損は無いんじゃないだろうか。

【まとめ】

 ジャンタルマンタル、アスコリピチェーノの参戦により一気に豪華メンバー感が増した今年のNHKマイル。
 牝馬はクラシック初戦がマイル戦故にここに至るまでに牡馬と戦ってきていない馬が多く、牡馬相手に朝日杯で好走した実績を持っていたグランアレグリアですら馬券外になってしまうのがこのNHKマイルの恐ろしさ。果たしてアスコリピチェーノ、ボンドガールはここで力を見せられるのか。
 前哨戦で力を見せてきた馬たちもそれぞれに個性があり、今年も予想しがいのあるレースになりそうです……
 といいつつ、現状個人的には普通に能力を発揮できればジャンタルマンタル+ノーブルロジャー@1頭のパレスマリス馬券で行けるんじゃないかな……という気がしています。
 もちろん能力、枠順、馬場状態等でどんな結論になるかは変わってきますので、また一週間頭を悩ませたいと思います。

 最近は気持ちのいい的中にたどり着けておらず、こんな私の記事でも見てくれている方には申し訳ない気持ちもあったりするのですが、そもそも的中率度外視で穴狙いの多い予想ですので、長い目で見ながら、私の本命をちょろっと紐で抑えてみるなどで、上手くお付き合いいただければと思います。
 今週もがんばります!

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