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底なし沼で捕まえられたい

熱しやすく冷めやすいわたし。
気づいたら沼に飛び込んでいる。それはもう躊躇いもなく。
けれど、そんな無鉄砲さも40歳を過ぎて落ち着いてきたのかと
思いきや違った。

それこそ昔は関連グッズを買い漁り、行けるイベントには所構わず、
身だけではなく心まで沼にハマり謳歌していたものなのだけれど
今は物欲よりも妄想の快楽を貪っている気がある。
厄介だ。

心の中はどこまでも自由。

そう、好きなだけ好きなように気の済むまで…全てはわたしの頭の中での物語。

実はこのnoteの下書きにも終わらない妄想日記が下書きされている。
時々、書き直してショートショートにしたり、詩にしたり、と世に放ったものもある。
久しぶりに真面目に小説を書こうかと構想を練っていたものもある。
創作の源なのかもしれないが
なんだろうか、この沼という愛は相当に深い。

もはやパラレルワールドよろしく、仮想空間で繰り広げられる群像劇。

推しというよりは連れ。
もはや一心同体。

そんな熱意と情熱はおそらく脳内のホルモン分泌を活性化させてくれる。
そして底があるかなど気にせずわたしは彼の胸に飛び込むのだ。

彼は決して拒まない。わたしたちはいつだって相思相愛なのだ。

そうやって物語は始まっていく。


午前10時。
日差しが暖かい。

「何も出かけなくても、いれば?」
「わたしもあの3人には会いたいけどね。今日は約束があるの」
「約束ねぇ。まっ、あんまり遅くなるなよ」
「それって心配してくれてるの?」
「心配?俺がか?」
「今日は女子会だから、大丈夫、じゃぁね」
「だから俺は心配など…」
「行ってきまーす」

少し捻くれているところがまた愛おしい。
振り向かなくても分かる。
困ったように頭をくしゃくしゃしているに違いない。
わたしが見えなくなるまで実はずっと見守っている。
そんな人だ。だから好き。

「兄ちゃん、あれってリカじゃない?」

「あぁ」

「ご一緒だったんですか?」

「あぁ」

「それって何?昨日からってことかよ」

「だったらどうしたんだ」

「なぁ、兄ちゃんはリカが好きなのか?」

「だったら?」

「よかった。俺もリカのこと好きだから」

「その好きとは違うんじゃないですか?」

「そうそう、お前の好きとは違うよな。こいつのは大人の好きだ」

「大人の?」

「ごちゃごちゃうるせーよ。行くぞ」

少し歳の離れた弟と学生の頃からの悪友らしい。
彼と愉快な仲間たち。
いつも一緒ではないし
なんでもそれぞれが事情っていうのを背負って生きているらしのだけれど
そんなことは微塵も感じさせない
爽やかで暑苦しい面々。

4人が揃っているのを遠くから眺めていると
憎らしいほどイケメン。
だけれど
近づくときっと幻滅してしまう。
いや、なんというかいつまでも子どものまま。
どこまでも騒がしい男子なのだ。

そんな中でも一番、手のかかりそうな彼にわたしは惚れてしまった。
もう、これはしょうがない。

大学構内のカフェテリアの決まった場所でいつも本を読んでいた姿がなんとも
神々しくわたしはその姿に息を呑んでしまった。
美しいというのはこうも罪作りなものだろうか。
そんなこんなを全て吹っ飛ばしてしまうくらいの威力で
ただ、そこにいた彼。
何をするわけでもなくただ、気がつくとわたしはひたすらに彼を眺めていた。

「おい。俺に用があるのか?」
「えっ、わたし?」
「お前以外に誰がいる。ここに座り続けて1週間。
何をしているわけでもなく、俺を見ているよな?」
「いやっ、それは、あの…」
「そんなに怖い顔で問い詰めたら、泣いてしまいますよ」
「お前の知り合いか?」
「知り合いというほどではないですが、僕たちみんな同じ大学の学生ですからね。
お名前は?」
「あっ、英語科のリカです」

そんな始まりだった。

愛想のかけらもなくぶっきらぼうに話す彼と
それをさりげなくフォローしているお友達。
そこにいつのまにか、もう一人、加わり、
そして最後に彼の歳の離れた弟がやってきて、4人とわたしは
居酒屋さんで明け方近くまで飲むことに。


こんな感じでパラレルワールドのわたしは若くてモテる。
いや、愛されるキャラクターになってみたりできるわけで、
ほんの刹那の蜜月を過ごして現実に戻ると
わたしは
儚い幸せの余韻を味わって、日々のあれこれに向き合っていく。

ずっと書いていられる気がする。

できれば、アニメにして好きな声優さんでお話を続けたい。
いや、一度でいいからその声で名前を呼んでほしい。

そんな欲望と願望が沸々と湧き出るわたしの沼はきっと底なしに違いない。

この込み上がってくる衝動的なものこそ
創作の根本な気がする。

誰かのためではない。
自分の欲求を満たすために。
あくまでも貪欲に。
そう、全力で自分を癒してあげたい。
これぞ沼セラピー。

そこにあるリアルはわたしのリアル。
無駄に想像力が豊かでよかった。
無駄に感受性があってよかった。

堕ちてみないとわからない世界。

きっとわたしは何度でも飛び込むのだろう。
そこに沼がある限り。

I Love You.

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