【ひつじがの自由研究vol.3】『匿名文通』

面白そうな匂いはするけどいきなり大々的に始めるのはちょっと……みたいな企画の種をひつじがではとりあえず自由研究として試験的に導入しています。そんな「ひつじがの自由研究」第三弾のご紹介です。

メールやLINEやSNSなど便利で簡単に繋がれてしまう世の中で、あらためて「手紙」のようなゆったりとした繋がる手段を大切にしたいと近頃強く思うようになりました。店内で手紙を書いてもらうためにポストカードの販売を始めたり、文学賞のテーマを「手紙」にしたり。いろんな角度から「手紙」というアナログな方法を楽しむための方法を思案し、実験しています。

日頃お店に来られるお客さんと手紙にまつわる話をする機会も増えたのですが、その中で「手紙を出す相手がいない」とのお声をちらほらといただきました。送るにも相手の住所がわからない、と。

よほど荷物を送ったり年賀状を出したりしない限り相手の住所は必要ないし、ただコミュニケーションを取るだけであればむしろそんな個人情報は伝えないほうが安全だったりします。自分だっていざ手紙を出そうにも住所を知らないから送れないなんて人は周りにたくさんいて、手紙を送るために住所を聞くLINEを送るなんてわけのわからない状態になることもしばしば。

そんなこんなで「興味はあるけど出す相手がいない」人が一定数来店してくれたので、ならいっそお店に来る人同士で匿名の文通をしたら(書いたものをお店経由で渡せば住所は必要ないし)良いのでは。そんな思いつきで『匿名文通』をはじめてみることにしました。

匿名文通の手引き

①.「最初の手紙」を書いて封筒に入れたものを店主にご提出ください。
手紙の内容については特に指定はありませんので、お好きなことを書かれてください。とはいえ最初なので返事をしやすい内容の方が好まれるのかもしれません。
名前などの個人情報は(書いていただいても構いませんが)ご記載いただかなくて大丈夫です。

②.店内にある「最初の手紙」の中から好きなものをお選びください。
この時に開封したお手紙には必ず返事を書いていただきます。どのお手紙にあたるかはわかりませんが、開封する際は返事を書く覚悟をお持ちください。
返事は封筒に入れて店主にご提出ください。

③.以降「お手紙」が届いてる場合のみ来店時にお渡しします。
①②でつながった人とやり取りを続けていただくことになります。ご来店の際に手紙が届いてたらお渡ししますが、最初の返事以降は義務ではないのでどうぞいつ来るかわからないお手紙を気長にお待ちください。

こちらは誰と誰が手紙のやり取りをしているのかは把握しているもののそれをお伝えすることはありません。かつ手紙の中身には目を通さず配達員に徹底しますので、こちらに気を使わずやり取りをお楽しみください。

複数人とやり取りをしたい方は①の手紙をたくさん出したり、②で手紙をたくさん開封いただいても構いません。ただしご自身が返事できる範囲内で楽しんでいただけますと幸いです。

文通の面白さ

最後に余談ですが、一時期遠方に住む人と文通をしていたことがありました。数ヶ月に一度忘れたころに手紙が届くようなやり取りで、届いてるかそわそわしながら毎日ポストを確認したり、ポストを確認するのをやめたら届いててそれに気づかずしばらく放置してたり。早い返事を求められるメールやLINEとは違う、ゆったりとしたやり取りがとても心地よかった記憶があります。

届いているかどうかソワソワしながらお店の扉を開けたり、匿名だから誰かわからないけどもしかしたらやり取りしている人が隣に座ってるかもしれないとドキドキしたり、手紙のやりとりを通してひつじがでの過ごし方を一段と楽しんでいただければ幸いです。

また、お店に来るお客さんを対象とした自由研究ではあるものの、当たり前ですが手紙は住所と切手があれば全国各地に届けることが可能なので、もし遠方からこの試みに参加されたいという方いらっしゃいましたらご連絡ください。

自由研究なので失敗する可能性もありますが、とりあえずしばらくやってみて、結果はあらためてご報告します。