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好奇心に従う。

前回からの続き。


キーワード、その2、『好奇心』。


「市民大学をやろう」

と、合意の上で『尾鷲ヒト大学』が始まったわけではなく、ヌルヌルと、いつのまにか始まった、感じがしている。

「市民大学の"ようなもの"があればいいね」

くらいの感じだったと思う。

市民大学の成立過程は少しずつ説明していくとして、まず最初にそれとなく友人に話したのは、

「イベント活動を運営の主にしない」
「町おこし・地域貢献を標榜しない」
「"会の存続"を目的とするのではなく、"場の設定"を目的とする」

こと。

それまでに尾鷲の市民活動グループに所属して活動したり、他の市民活動グループを観察していて、色々と学んだことがある。

主に、色んな意味での "色々学んだ" 、である。

市民活動グループの存続には資金がかかる。
町おこしを標榜するとイベントをしなくてはならなくなる。
イベントをして資金調達をする.....はずが、その前にイベントのための資金調達が必要となってくる。

イベントと資金調達の悪循環に陥り、結果、疲弊していく。

それは立派な"事業"である。

”事業”を興してお給料を得るならまだマシで、ただただ徒労に終わることの繰り返し。
それだと町おこしどころか、関わってるスタッフの心身が壊れてしまう。

・まず最初に『町おこし』『町づくり』を標榜しない。
・『会』を『”会を存続させるため”が目的になってしまった会』にしない。
・個々に存在するそれぞれの現場のプロフェッショナルを『一箇所に集めた最強集団』を作ろうとしない。

それらが市民活動グループに参加したり、観察したりして出てきた、自分なりの答えである。
(あくまで自分なりの答えで、上記に記したことはやり方として "自分の肌に合わなかった"、ということであり、これに該当するやり方を採用している人のことを悪く評価するものではありません)

その経験や考察を経て、『市民大学』を、『存続のために資金を調達する活動』にしてはいけないことを前提条件として友人(学長)と共有するところから始まった。

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私(この文章を書いている私=副学長)と友人(=学長)の間で共通して好きなアニメ作品がある。

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』というテレビアニメシリーズである。

このアニメに出てくる2つの"概念"を例として持ち出して、市民大学の"在り方"を共有していた。

1つめの概念はタイトルにもなっている『STAND ALONE COMPLEX』。

日本語に直訳すると『個別の集合体』。

『個別』と『集合体』という相反する2つの語の合成語であるこの言葉の意味は『個別に存在し、個別に思考し、個別に行動するが、あることをきっかけに同じ目的に向かってまるで示し合わせたかのように同じような行動をとる』ということ。

『個別』であり、『集合体』であるということ。
逆に、一見まとまった『集合体』のようにも見えるが、その実は『個別』である、ということ。

重要なのは『個別』がその意志を失い『集合体』に取り込まれて、個を消失してしまう危険性を認知し、それを回避すること。
(『個』を消失し、『集合体』に取り込まれてしまうと、『個』の存在が『集合体を維持するための個』になってしまうからだ)

そのアニメ作品内ではもう1つの概念が提示される。

それは『個が集合体に取り込まれず、個が個であるための唯一の方法』の疑問に対する回答である。

その回答が『好奇心』である。

個が個を消失せずに、そのアイデンティティを保持し続ける方法。
それは『好奇心』を持ち続けるということ。

好奇心を持ち続けることが、唯一、『個』を消失せずに存在していられる唯一の方法である。

個人がそれぞれ、何かを好きになり、何かに興味を持ち、何かに興奮し、そしてその結果その何かに対する情熱のまま突き進むこと。

つまり、『楽しむ』ということ。

目指す市民大学は、それぞれの、『本職』(本来のそのひとの仕事)や『専門領域』や『好奇心』のまま『個別』に活動すること。

その個別のプロの専門領域の活動を『まちおこし』の名目で収奪しないこと。

それぞれの分野でプロとして活動し続けること。

ややこしい話ではあるが、『尾鷲ヒト大学』としての『集合体』の中身は『まちおこしのプロ集団』などでは全くなく、『好奇心のまま好き勝手に行動する個体』が『緩やかに』繋がっているだけである。

『尾鷲ヒト大学』は、好奇心のまま個別(スタンドアローン)に活動する人のハブとして機能し、時として集合体(コンプレックス)としてその活動を広く伝える役割を果たすにとどめる。

あるいは行き場をなくした『個の好奇心』を受け止める器であることにとどめる。

好奇心のおもむくまま、個別に欲求や要求を追求する。

その『発表の場』としての『尾鷲ヒト大学』なのだと思っている。


文責:ハマノタカユキ (『尾鷲ヒト大学』副学長)

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