タイムマシーンに乗って、土鍋を取りに #テレ東ドラマシナリオ


■ 主な登場人物は

オータケ(20代前半・男)

ナガトモ(20代前半・男)

ウメヅ(20代前半・男)


■ ざっくり言うと

女の子を招いて鍋パーティーを開こうと目論んでいた下心丸出しの男3人。
意気込んで準備していたら土鍋を割ってしまった。
仕方がないから、たまたま部屋に転がっていたタイムマシンに乗って昨日の世界に鍋を取りに行くことに。
そしたら昨日の世界の俺たちも、「絶対に鍋は渡さねえ」とか言い出して……。
時空を超える壮大なタイムスリップ系鍋バトルコメディ! のはず……。


■ くわしく


「にーくーにーくー、にくにくにーくー♪」

エコバック片手にスキップしながら通りを歩いているオータケ。

一方シェアハウスの共同キッチン。
ナガトモとウメヅがエプロン姿で野菜を刻んでいる。

「バカ、ニンジンさんはハートの形に切るんだよ」とナガトモ。
「つうかさ、女の子たちと一緒にキッチンに立つ方が楽しくね?」とウメヅ。
「バカ、料理できるってとこ、アピールしたほうが好感度高いだろうが」反論するナガトモ。

すると……


ババーン! 
勢い良く開く勝手口のドア。


「お肉さま、とうちゃーく!」帰ってきたオータケ。

「じゃーん! 黒毛和牛なのです! タイムバーゲンしてたのです!」

「うぉぉっ! オータケさま、素敵!」
きゃっきゃ盛り上がる男3人。


ここは23区の外れにあるシェアハウス「スウハアシェ」。
住人は、オータケ(20代前半・男)、ナガトモ(20代前半・男)、ウメヅ(20代前半・男)、
と男ばかり3人の、むさ苦しい住人構成である。


ところがっ!

近所の女子オンリーのシェアハウスから女の子を招いて、鍋パーティーをすることに。そして、女の子たちがやってくるのは、


今日!

しかも30分後!


そんな事情もあって、男たち3人はテンションアゲアゲで、否が応でも浮かれポンチになってしまう状況にいた。


「三島ちゃーん、三島ちゃーん、出ておいでー♪ 出ないと頭をちょん切るぞー♪」
オータケがキッチン上の食器棚から土鍋を取り出そうとすると、

「痛てっ!」

ウメヅが包丁で指を切ってしまった……のはどうでもよくて、
そのはずみで、オータケにぶつかって、土鍋を落としてしまった。


バリーン!
明らかに土鍋が割れた音。

「バカ、どーすんだよ、後30分しかねーじゃん」
「ナガトモがニンジンをハート型にとか、くだんねーこと言ってるからだろ」
ナガトモとウメヅが責任をなすりつけていると、オータケが炊いた米を糊にしてくっつける方法を思い出す。

「とにかくやってみよう!」
土鍋がくっついたまでは良かったが、お湯を沸かしてみると再び割れてしまった。

「あぅ…あ、アロンアルファだ!」
今度はくっついて、お湯を沸かせたのだが、

「うひょ、アロンアルファ臭せぇ!」
瞬間接着剤を使ってしまったので、食器として、ましてや女の子を招いての鍋パ用の食器として使える代物ではなくなっていた。


「どうする……」


刻一刻と迫ってくる約束の時間。
鍋を買いに行く時間もないし、絶体絶命の大ピンチ。


「そういえば……、タイムマシンあったよね」


思い出したように言うオータケ。
タイムマシンがキッチンの隅っこで、ホームベーカリーと共にホコリをかぶって捨て置かれていた。


「使えんの、これ?」
スイッチを押してみると、なんと電源が入った。


うなずきあう3人の男。


「昨日に行って、土鍋を持ってこよう!」
「そして、1分後の未来に戻ってこよう!」
「で、無事に鍋パを成功させよう!」
男の団結も深まったところでタイムマシンに乗り込むが……。


タイムマシンは2人乗りだった。

「がんばれよー」
ナガトモは留守番することに。

「万が一のために持ってけよ」
目出し帽を渡してくれるナガトモ。


そして無事に昨日の世界にやってきたオータケとウメヅ。

「なんか、過去感なくね?」とウメヅ。
「過去っても昨日だから」答えるオータケ。


テレビとかスマホとかから、どうやら本当に昨日にタイムスリップできたらしい。
目出し帽を被るウメヅとオータケ。

「じゃ、さっさと仕事して、とっとと帰ろうぜ、こんな世界」

キッチン上の食器棚から土鍋を取り出すウメヅ。
どこから見ても泥棒である。


「うん、確かに割れてない」
土鍋をカンカン、指で弾いてみるオータケ。

「あばよ、昨日の世界。ただいま、今日の世界」
ウメヅとオータケが再びタイムマシンに乗り込もうとすると……。


「待てよ」


顔を上げると「昨日のナガトモ」が、金属バットを構えてこちらを睨んでいた。

「ナガトモー、留守番してたんじゃなかったのかよぉ」とウメヅ。
「あれは昨日のナガトモだって」とオータケ。


「なんだ、泥棒のくせに俺のこと、知ってんのか」
と昨日のナガトモ。


「俺だよ俺」
気を許してしまったウメヅ、目出し帽を脱いでしまう。
仕方なく、オータケも目出し帽を脱ぐ。


「なんでお前ら、土鍋持って行こうとしてんだ?」
訝しがる昨日のナガトモ。
「俺らの土鍋割れちゃってさ」とウメヅが説明不足の回答をしたものだから、
「バカか、どこが割れてんだよ」とさらに昨日のナガトモの不審と怒りを増大させることになった。
そしてついに昨日のナガトモは、
「お前ら2人で結託して、明日の鍋パ、台無しにするつもりだろ」

とかなんとか言い出して、仕方がないので、明日の世界からやってきたことを説明するが、
昨日のナガトモは信じず、


ついには、オータケとウメヅ裏切り者説、を妄想するまでに。


あの手この手を使ってわかりやすく説明するが、ちっとも理解しようとしない昨日のナガトモ。
そこに入ってきた、「昨日のオータケ」と「昨日のウメヅ」。


「うわっ、俺がいる!」

的な状況になり、オータケとウメヅが2人ずついる状況を目の当たりにして、
昨日のナガトモはやっと(それでも不審感は残ったまま)オータケとウメヅがタイムマシンでやってきたことを受け入れる。


「じゃあな!」
オータケとウメヅが土鍋を手に今日の世界に帰ろうとすると、


「待てよ!」

とまたしても昨日オータケ。

「明日のお前らはいいとして、今日の俺らは明日どうやって鍋パしたらいいんだよ。やっぱり置いて帰れ」
「嫌だ」
「置いて帰れ」
「嫌だ」
「置いて帰れ」
押し問答することに。
最終的に昨日の3人vs今日の2人での大乱闘に発展し……昨日のナガトモが鍋を取り返す。

「ぜってーお前らには渡さねえ!」
昨日のナガトモ。


「時間あるんだから買いに行ってきたらいーじゃん」
と、オータケ。
「お前らこそ買いに行けよ、好きな時間に帰れるんだったら」と昨日のナガトモ。
「今日の世界に金置いてきた」とウメヅ。
「じゃあやっぱり土鍋は渡せねえな、手ぶらで帰んな」と昨日のナガトモ。


膠着状態が続き、打つ手なし……と思われた時、オータケが何か思いついた。


「未来予測をしてあげよう」
と、宣言して

「はぁ?」
となる一同。

「あした、黒毛和牛のタイムバーゲンがあるよ。すっごく安くなるよ。きっと女の子たちすっごく喜ぶよ」
と未来の情報を教えてやるオータケ。

「そんなことでごまかされねーからな」

なおも反抗してくる昨日のナガトモをなだめたのは、昨日のオータケだった。
渋々受け入れる昨日のナガトモ。


やっとこれで土鍋を持って今日に帰れる。

昨日の3人と今日の2人が別れの挨拶をして、タイムマシンのスイッチをオンにした瞬間……。


「やっぱりなんか解せねーっ!!!!」


土鍋に襲いかかる昨日のナガトモ。
バリン!土鍋が割れるのと同時に、タイムスリップ!


「結局また割れちゃったね」
「帰ったらナガトモにひとこと言ってやる」
タイムマシンの中、割れた土鍋を抱えて意気消沈している2人。


そして、今日の世界に戻ってきたオータケとウメヅ。


「ナガトモって、ホント理解力無いのな!」


ナガトモに向かってブーたれるウメヅ。
きょとんとしているナガトモ。


「これ、お前が割ったんだぞ、金属バットで」
割れた土鍋を差し出すと、テーブルの上には新品の土鍋が。


「なんでこれ……」
2人が驚いていると、
「こんなメモがあってな」とナガトモ。


「ニクよりも鍋を買え。絶対にだ!」
とメモには書いてあった。


抱き合って喜ぶオータケとウメヅと、よくわからないけど喜んでいるナガトモ。
そしてはたと気づく。


「ってことはお肉は……」


「ない!」


過去が変わって、オータケがタイムバーゲンで黒毛和牛を買ってきた事実は、「無かったこと」にされて、時間の闇に葬り去られてしまっていたのだった。



「野菜だけのお鍋もヘルシーだから(えへへ)」
女の子たちを迎えて始まった鍋パーティー。
明らかにテンションだだ下がりの女子たち。

その後、一緒に鍋パをすることは二度とありませんでしたとさ。

                   (おわり)



■ 今回使用したテーマ

南葦 ミトさん作の
謎めく鍋パの七不思議



■ 最後に

こんにちは、ひとつもです。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。


6本投稿できることを目標にやってます。
これはそのうちの 5本目です。

ひとつでも、これ好き、って思ってもらえるストーリーがあったらいいなって思います。

台本の本文は書けたら書きます。


それはもう、とてもとても大切に使わせていただきます。