好きな人に「好き」って伝えたい #テレ東ドラマシナリオ

■ 主な登場人物は

フウカ（中２）　気持ち重視派

スズナ（中２）　行動重視派

トモユキ（中２）　フウカが好きな相手

■ ざっくり言うと

人権団体の主張で「好き」という言葉が放送禁止用語になってしまった。
同級生の男の子に恋をしてしまったフウカは、どうしても自分の中の「好き」を伝えたい。
世間が「好き」にマイナスイメージを追加していく中で、必死で「好き」に代わる言葉を探すフウカ。
でも、自分の気持ちをストレートに表す言葉は「好き」しかなかった。

■ くわしく

朝の情報番組。
「好き嫌いの問題じゃ済まされないと思うんです」
発言するコメンテーター。すかさず、
「ただいま、不適切な発言がありました。訂正してお詫びいたします」
と頭を下げる番組MC。
エンドレスで繰り返されるそんなやり取り。

フウカはYouTubeをループ再生で見ていた。
「うわっ、差別用語」ユキの背後から声をかけてくる同級生のスズナ。
「うん……そうなんだけど……」歯切れ悪く応えるフウカ。
フウカの視線の先には、トモユキの姿。それに気づくスズナ。

「もしかしてフウカ、トモユキのこと……付き合いたいなの？」

そう、「好き」という言葉は放送禁止用語になって、それに伴って、世間的にも使うのがはばかられる言葉になってしまった。
人権団体がかつて、　「「好き」という言葉は好きになってもらえない人の心を傷つける」　と主張し、放送局が受け入れたからである。

だから今では告白の時には「好き」の代わりに「付き合いたい」を使う。

「付き合いたいって言うか……付き合えなくてもいいから、自分の気持を伝えたい」応えるフウカ。
「何が違うの？」不思議がるスズナ。
「「付き合いたい」は行動で、私が伝えたいのは「付き合いたい」の奥にある自分の思い」
一生懸命説明するが、スズナはピンと来ていない模様で。

そんなフウカの気持ちを知ってか知らずか、今まで以上に優しく接してくるトモユキ。
２人の距離は急接近して、フウカはもう、自分の気持ちを言わずにはいられない状態に。

一生懸命「好き」に代わる言葉を探すフウカ。「愛しています」とか「気になってます」とか「夜も眠れない状態なんです」とか。
でもどれもしっくりこなくてもやもやしている。

そしてもう「好き」って言っちゃえばいいじゃんか、という結論に達する。

そんな時、

「もしかして、トモユキに「好き」って言おうとしてるんじゃない？」

スズナがいち早く察知した。

「絶対にダメだからね」

釘を刺すスズナ。
実はフウカとトモユキを接近させていたのはスズナだったのだ。

スズナの気持ちを知って、再び悩むフウカ。
そんな時、自分の家の押し入れの奥深くで見つけたのが、TVでは絶対に放映されなくなった『耳をすませば』のDVDだった。
鑑賞を終えて、涙が止まらなくなっている自分に気づくフウカ。

そしてフウカはついにトモユキに気持ちを伝える決意を固める。
そのためにフウカは自宅にトモユキを招んで、『耳をすませば』の鑑賞会を開くことに。

心臓バクバクの時間を重ねたフウカ。

エンドロールに重ねて、フウカが
「だから私も、トモユキくんのことが……」まで言って、

「大好きだーっ！！」と言おうとした瞬間……。

「でも、言葉って移り変わるよね」と冷静なトモユキ。
「僕は使いたくないな「好き」って言葉は」とさらに追い打ちをかけられるフウカ。

なす術なく、ただ泣くことしかできないフウカ。

「でもね……」トモユキは静かに言葉を続ける。

「僕の気持ちは、『月がキレイだね』をフウカと共有したい」恥ずかしそうに言うトモユキ。
「うん……」ぽっと頬を赤らめるフウカ。

そしてトモユキは、優しくフウカの肩を抱く。
招んだのはお昼だったのに、すっかり暗くなっていた空。
そこにはきれいな満月が浮かんでいた。

                                                                                                           （おわり）

■ 今回使用したテーマは

大麦こむぎさん作の
月がきれいですね #100文字ドラマ

■ 最後に

こんにちは、ひとつもです。

6本投稿できることを目標にがんばってます。

これはそのうちの　２本目です。

ひとつでも、これ好き、って思ってもらえるストーリーがあったらいいなって思います。

台本の本文は書けたら書きます。