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鳥が巣立つとき

5月末、庭に鳥が増えたことがあった。
あとでわかったのだが、子どもの鳥が、親鳥の巣から出てきて大人の暮らしを勉強している最中だったのだ。

今まで木の上の巣におさまっていた子どもたちは、見事に成長して、親鳥さながらの体躯になった。

4羽ほどのムクドリが芝の上を歩く。最初はどの子が「つい最近まで子どもだった鳥」なのか見分けがつかない。しかし、しばらく観察すると、そのなかに含まれる元・子ども(新成人と呼ぼうか)が、ピョエと鳴いてまだまだ親鳥から口移しでエサをもらっている様子がうかがえる。せっかく芝生に降りてきたのに、ぼけっとしていて全く自分でエサを探す気がない元・子どものずぼらさには、少し笑ってしまった。

新成人のオナガは、慣れない格好で桑の実をついばむ。なかなか木から実をもぎとれず、細い脚をびよんと伸ばして精一杯背伸びする姿がまたなんともいたいけである。いつか親鳥のオナガのように、ばしばしと豪快に桑の実をもぎ取れるようになるのだろう。

親鳥たちは、巣立っていく我が子とのひとときを味わうかのように、最後かもしれないエサやりをしたり、遠くから見守ったりしている。せっせとエサを探し、敵に我が子が襲われないようにと緊張して見張っていた。その様子から、親心を感じとられずにはいられなかった。


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