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豚組しゃぶ庵の1年間の閉店延期と「豚組しゃぶ庵β」について

豚組オーナー/創業者の中村です。
閉店、そしてオンラインへの移転を発表した六本木の豚組しゃぶ庵ですが、おかげさまでクラウドファンディングも無事終了し、支援いただいた皆様への豚しゃぶの発送も始まりました。SNSでも到着報告がアップされ始めていますが、皆さんお楽しみいただいているようで、本当に何よりです。商品開発から配送までの苦闘と紆余曲折は、また改めて皆さんにご報告させていただくつもりです。
ただ、まだご購入いただきながら、配送日のご指定をされていない方が半数近く残っています!できるだけ品質を保った状態でお召し上がりいただきたく、配送日のご指定をいただいてからの商品のお届けとなりますので、何とぞご対応ください!詳細はこちらをご覧ください!

さて、本日は皆さんに一つ、大切なお知らせがあり筆を取りました。
六本木の豚組しゃぶ庵は2020年10月に一旦営業を終了したのち、新たに外部の方のご協力を得てリニューアル、1年間の期限付きで2021年12月まで新しい形=「豚組しゃぶ庵β」として営業を続けることとなりました。営業の形は大きく変わるものの、一時的な閉店を挟んで、実質的には閉店を1年延期することとなります。
具体的には、下記のような形で今後のロードマップが変更となります。(詳しくはこのあと本文でご説明します)

豚組オンライン新計画@2x (2)

これは非常に大きな方針変更となりますので、クラウドファンディングでご支援いただいた方に対しては、取り急ぎ本記事公開と同時にマクアケの活動レポートでもご案内させていただきました。
「豚組がなくなるから」と支援してくれた多くの方のなかには、実質的に1年間営業を延期するという決定に対して、肩透かしをくらった気持ちになったり、裏切られたような気分になる方もおられるかもしれません。
計画が変わったことで手のひらを返すようなことになってしまったことを、心より深くお詫び申し上げます。本当に申し訳ありません。

そこで、マクアケでご支援いただいた方の中で、「閉店が延期するなら応援購入をキャンセルしたい」と希望される方には、返金対応をさせていただきます。ご希望の方は、マクアケにログインの上、メッセージ機能を使ってご連絡ください。ご購入内容を確認の上、代金をお返しさせていただきます。

というわけで本日は、なぜ僕らはリニューアルの上で豚組しゃぶ庵の1年間の期間限定延長の決断をしたのかを皆さんにご説明したく、事の経緯と僕の率直な考えを綴らせていただきます。少し長くなりますが、どうかお付き合いください。

閉店を発表してから

豚組しゃぶ庵の閉店を発表したのは6月29日でした。コストカット、借り入れ、支払猶予など、考えうるありとあらゆる手を尽くし、交渉し、その上で未来について徹底的に議論した上で、最後の選択肢としての閉店でした。しかしその発表以降も、多くの方から閉店を惜しむ声を頂いていました。お店を続けてほしいというご意見もたくさんいただきました。続けるのは無理でも、早期の再出店を期待する声も多く頂戴しました。
僕ら自身にとっても思い入れの深いお店です。閉店を決めたとはいえ、最後の最後まで店舗を継続する可能性は排除せず、ありとあらゆる方法論について検討してきました。マクアケのプロジェクトのページでも、最後の「リスク&チャレンジ」欄に「お店を存続させる方法があるのなら最後まで諦めずにトライしたいと思っています」という注釈を入れていたのは、そういう事情からです。
色々な方と議論を重ねました。しかし、基本的には「短期的には乗り切れても、閉店判断を先送りにすることは、結果的に僕らの選択肢を狭めることにしかならない」という考えを覆すには至りませんでした。

店舗の存在感の大きさ

一方で、豚組オンラインの準備をすすめる中で僕らが痛感したことは、「お店がなくなること」の想像以上の難しさです。どんなに工夫をしても、リアル店舗の持つあの濃密な体験や情報量は、オンラインで再現することはできません。米国を中心に小売の世界で先行するD2Cサービスで成功しているプレイヤーたちがなぜリアル店舗という場を大切にしているのかを、身を持って理解できました。ですので、豚組オンラインに舵を切りつつも、プロジェクトメンバーとは「やはりできるだけ早いタイミングで(アフターコロナに完全準拠した新しい形での)リアル店舗を復活させたいね」と、まるで合言葉のように話していました。当初、再出店は2022年頃を目標にしていたのですが「可能なら2021年の後半あたりに10-20坪程度の小さい店舗で構わないから出店を目指したいね」「そうだねー、資金どうしようか」そんなことを議論してきました。
実際、マクアケのリターン品としてお届けしている豚しゃぶのパッケージでも、料理だけでなく外食の「楽しさ」もお届けしたいと考え、豚組しゃぶ庵の店内の空気感が伝わるような店舗の写真を多用しています。それひとつとっても、六本木の店舗という存在がなければ、こうした商品演出は不可能でした。オンラインの可能性を追求しようとすればするほど、店舗の持つ価値や可能性を改めて知る。不思議な感覚でした。

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新しい可能性

そんな中、ある方からご連絡をいただきました。お会いしてお話をしたところ「豚組しゃぶ庵を残すための決断とはいえ、やはりあの『場』が失われることはあまりに惜しい」「豚組のファンの一人としてもできる限りの応援をしたい」と、思い切ったご協力のご提案をいただいたのです。
その方が誰なのか、そして協力とは具体的にどんな内容なのかをここでお伝えすることはできないのですが、しかしメンバーも含めて議論を深める中で、全く新しい展開があり得るのではないかという可能性が見えてきました。
それは、「現店舗は予定通り一旦クローズした上で、豚組オンラインや新型コロナを前提に店舗のあり方を根本から再構築してリニューアル、一年間の期間限定で実験店舗として営業を再開する」というアイデアです。
僕ら自身、できることはやりきったと思っていましたが、応援してくれる方々の力があれば、新しい可能性が見いだせることに気づいたのです。そのお力添えに基づいた新しい計画なら、お客様はもちろん、従業員のみんなやお取引先、大家さんなど、豚組を応援してくれるさまざまな方にとってもメリットが大きいと直感しました。何より、事業面においても、短期だけでなく中長期的にも僕らのリスクを軽減し、同時に事業の可能性や成功確率を高めることができそうだとも思えました。

閉店詐欺という懸念

唯一心配だったのは、『閉店詐欺』のようになってお客様からの信用を失ってしまうことです。しかしこれは僕らが可能な限り誠実に説明し、マクアケで応援してくださった皆様や、閉店を惜しんで来店してくださる皆さんにきちんとご納得いただけるように向き合っていくしかないと考えました。マクアケで支援いただいた方の返金希望に対応するのも、本記事をこうして公開するのも、一人でも多くの方にできるだけ誠実に向き合いたいと思ったからです。

新たな選択

そこで、僕らは議論の結果、その方からのご提案をありがたく受け、計画を大幅に変更することとしました。変更したのは下記の図 (再掲) の通りです。
従来計画では、リアル店舗の存在しない1年程度の空白期間ののち新コンセプト店舗の再出店という予定でしたが、新計画では旧店舗を実験店舗として再利用することで新コンセプト店舗の成功確率を高めつつ、豚組オンラインの取り組みの幅も大きく広げることが可能となります。まさに豚組しゃぶ庵は「正式版」から「ベータ版」に戻り、新たな時代に適応するための実験の場となるのです。

豚組オンライン新計画@2x (2)

とはいえ、決意を持って閉店を発表し、それが思った以上に大きなニュースになり、たくさんの人の知るところになってしまった今、それを変更するということはそれなりに勇気のいることではあります。
しかし、社交辞令でなく本気で惜しんでくださる方たちがいるなら、そしてその方々のお力をお借りすることで不可能だった店舗継続が可能に転じるだけでなく、豚組オンラインの成功確率を高めることができるのなら、前言を撤回して再オープンを選択することも僕らの責務なのだと思うのです。
閉店することは決してグッドニュースではないし、正直、あまり積極的に発信したい情報ではありませんでしたが、それでも勇気を振り絞って発信してよかったと、改めて思います。まさかこんな展開があるとは、全く予想していませんでした。
お客様から「場」としての価値を認められた飲食店の強さはこういうところにあるのだなあと、僕は改めてお客様との絆のありがたさを痛感しています。

ただ、関係するほとんどの方にとってはメリットのある決定ではありますが、一方でご迷惑をおかけしてしまった方々もいます。それは、これまでに申し込みを入れていた「豚組工房」の候補物件の関係者の皆さんです。今回の期間限定延長に伴い、結果として賃貸借契約を辞退させていただくこととなってしまいました。その物件の関係者の皆様には多大なご迷惑をおかけしたことを、心より深くお詫び申し上げます。

以上のような経緯で豚組しゃぶ庵は2020年10月末に一旦閉店したのち、リニューアルを施して営業を再開、「豚組しゃぶ庵β (ベータ)」として2021年12月までの期間限定で営業を継続することとなりました。
僕らは与えられたこの機会を最大限に活かし、これまでの営業をそのまま継続するのではなく、新たな環境に最適化させた営業に挑戦します。これは従来のお店の継続ではなく、将来の挑戦として想定していた「新コンセプトの店舗」を前倒しで実現するという試みです。

ではどんな形で店舗のカタチを変えていくのか。いま考えているのは、こんな方向性です。

過去の延長ではない、実験店舗としての「豚組しゃぶ庵β」

1)店舗面積を半分に縮小します
これまで、豚組しゃぶ庵の店舗は大きく2つのエリアに分かれていました。個室エリアと大広間エリアです。今回の延長営業ではそのうち、個室エリアのみを残し、大広間エリアは閉鎖することとします。これですべての席が「個室」または「半個室」となり、万全なコロナ感染対策のもとで営業を継続できることになります。
同時に、大広間エリアは豚組オンラインの「工房」に改装して利用する予定です。先日ご支援いただいたマクアケのクラウドファンディングは、この工房改装の費用に充てさせていただきます!
あ、そうそう、「貸し切り権」を購入された方は、大広間の改装が始まる前に(10月末までに)必ずお使いください!

2)完全オンライン予約制とします
今後、豚組しゃぶ庵は完全予約制に移行します。また、予約はオンラインを主体として運用、電話予約についてもトレタで開発中の新しいサービスをいち早く導入して、予約やレセプションの無人化・自動化を実現します。ちなみに完全予約制ではあるものの、トレタnowによって「今から行きたい」というニーズにも対応できますので、お客様の利便性は損なわれないはずです。ご安心ください。
これによって、店舗スタッフとお客様の接触機会を減らして、感染リスクを低減させていきます。

3)テクノロジーを前提に、お店をゼロから再構築します
店内での商品やサービスの提供についても、従来のオペレーションやメニュー構成などをすべてゼロベースで見直し、テクノロジーを前提にした新しい店舗運営に挑戦します。これにより、新型コロナウィルス感染リスクを最小化して安心してお楽しみ頂ける環境を実現すると同時に、顧客体験をより豊かにできるような、全く新しい飲食店のあり方を模索してまいります。
豚組しゃぶ庵βは、豚組オンラインの世界観を体験していただく「ショールーム」のような役割を担うのと同時に、テクノロジーによる全く新しい飲食店のあり方を追求する「実験場」になるのです。

4)豚組オンラインは止まりません
豚組オンラインの方向性には飲食店の新しい可能性が眠っています。そして店舗が新しい形で存続するからこそ、豚組オンラインのポテンシャルは広がっているのです。だから、豚組オンラインとリアル店舗の連携企画もどんどん進めていきます。
たとえば、マクアケでご支援いただいた方にご提供している「ピンバッジを見せてくれたらいつでも10%割引」は来年の閉店まで延長します。この他にも、豚組オンラインの会員の方には特別な試食会を開催したり、会員の方専用の個室をご用意するなど、店舗利用における優先的な権利をご用意することも検討しています。(ただ、申し訳ありませんが、マクアケで販売した『無限豚しゃぶ』については大赤字状態になってしまいますので、今年10月末で予定通り終了させてください。汗)
特典や企画については、まさにこれから検討していきますので、「こんな特典が欲しい!」「こんな企画どうですか」などご意見やアイデアがありましたら、是非お寄せください。

5)リニューアルと再オープンの時期は未定です
目先のお話をすると、10月末までの営業を一区切りとして、その後一時的にクローズの時期を設けさせていただく予定です。大広間を工房に改装したり、個室エリアの仕組みやオペレーションを全面的に見直すためのリニューアル期間を設けるのが目的です。具体的なスケジュールは、また決まり次第皆さんにご案内させていただきます。

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2022年以降はどうするの?

リニューアルして展開する「豚組しゃぶ庵β」は、あくまでもR&Dの場という位置づけです。よってその目的は、豚組オンラインを前提にした新しい店舗のあり方を模索し、2022年以降の新コンセプトの店舗にむけた知見を積むことにあります。したがって実験店舗としての1年の役割を終えたら計画通り閉店し、そのDNAを新店舗に引き継いでいく予定です。
ただ、未来のことは誰にもわかりません。飲食店のオンライン化は成立するのか?成立するならそれはどんな形なのか?走りながら、時には転びながら、試行錯誤を繰り返し、方向を定めていくことになると思います。
実際、その時その時で最善かつフェアと思える選択肢を選んできたつもりでも、今回のような思いがけない方針変更もありえます。それを受け止めるお客様の気持としても微妙なところがあることも痛いほどわかっているつもりです。しかし、そんな気持ちまでも皆さんと共有していくのが豚組のあり方なのだとも思うのです。豚組の未来は、豚組を応援してくれる仲間の皆さんと議論しながら決めていけたらと願っています。

最後に、閉店というアナウンスを聞いて豚組しゃぶ庵に足を運んでいただいているすべてのお客様へ。
お別れを惜しんでご来店いただきながら、結局はお店がもう1年継続することとなり、皆さんのお気持ちを裏切るような形となってしまったことを、改めて深く深くお詫び申し上げます。
ただ、あと一年、全く新しい形で皆さんに楽しんでいただける期間が延長できることになりましたので、この延長を前向きに歓迎していただき、新しく生まれ変わる「豚組しゃぶ庵β」と、そして新しく生まれる豚組オンラインを一緒に育てていただけたらと願っております。

これからも、どうぞよろしくお願いします!


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