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バーティカルSaaSとしてのトレタ

トレタの2019アドベントカレンダー、今年も大トリを務めさせていただきます。代表の中村です。

トレタは創業して6年半、外食産業の課題解決に取り組んできました。2019年12月には、改めて「食の未来を、アップデートする」というビジョンを定義し、これからの成長に向けて事業を加速していこうとしています。(コーポレートサイトなどは、これから更新します!汗)
トレタの描く世界観、そしてレストランの未来像は、今年上梓した「外食逆襲論」という書籍でもわかりやすく表現したつもりです。

しかし、その本には書ききれなかったことが一つだけあります。それは、トレタにはもう一つの別の「顔」があるということです。一言で言えば、「バーティカルSaaS」としてのトレタ。今日は、そのバーティカルSaaSという切り口から、トレタの事業や使命についてご説明します。

バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaS

皆さんは「バーティカルSaaS」という言葉を聞いたことがありますか?
いま、世界のソフトウェア産業はSaaS真っ盛りですが、SaaSには大別して2つのタイプが存在しています。ホリゾンタル(水平型)とバーティカル(垂直型)です。

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この違いは、そのサービスが世界をどう見ているのか、そして世界をどう変えようとしているかという思想やアプローチの違いから生まれるものです。

水平型(ホリゾンタル)は、「業務」に注目しています。営業、会計、あるいは名刺管理や人事など。どんな会社にもあまねく存在しているであろう、これらさまざまな業務を効率化していこうというのがホリゾンタルSaaSのアプローチです。代表例はSalesforceやマネーフォワード、Sansan、SmartHRなどがそれに当たります。

対して、垂直型(バーティカル)は「産業」に注目します。医療、外食、建設、美容などなど。特定の産業に特化し、その産業課題を解決していこうと考えるのがバーティカルSaaSです。トレタはまさにこのバーティカルSaaS陣営の一員です。

米国などSaaSの先進国で起きたことを振り返ると、まず最初に「普遍的な課題解決」としてのホリゾンタルSaaSが盛り上がり、その次に「個別の課題解決」であるバーティカルSaaSがやってきます。そういう視点で考えると、日本でも、バーティカルSaaSが盛り上がるのはまさにこれからと言えるでしょう。

バーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの違い

さて、このホリゾンタルとバーティカルの2つのSaaSは、何がどう異なるのでしょうか。
一見、これら2種類のSaaSにはさほど大きな違いはないように見えます。どちらもクラウドですし、どちらも月額課金の事業モデルです。しかし、実はこの2つはまるで別物なのです。
その違いを例えると、大学における「一般教養課程」と「専門課程」くらいに違います。どちらも同じように大学に行き、同じように勉強しているように見えますが、実は学び方も違うし、単位の取り方もまるで異なるのです。

この違いについて、特にバーティカルSaaSのプレイヤーは徹底的に自覚的でなければいけません。これまで業界で培われてきたさまざまなSaaSの成功事例や知見は、まだそのほとんどがホリゾンタルSaaSによるものです。ホリゾンタルに比べるとバーティカルの歴史はまだ浅く、知見もまだまだ不足しています。そんな現状で、もしバーティカルSaaSが無自覚にホリゾンタルの戦略を真似てしまうと、取り返しのつかない失敗を犯してしまうかもしれません。

ではホリゾンタルとバーティカル、何がそれほど違うのでしょうか。答えは単純で、「マーケットサイズの違い」に尽きます。
ホリゾンタルSaaSは汎用的・普遍的な課題解決を目指しますので、日本中、あるいは世界中のすべての企業がターゲットになり得ます(例えば会計をやらない会社はありませんし、人事のない会社も、名刺交換しない会社もありませんよね)。ですから優れたサービスが一つ作れたら、それに集中し、磨き込み、長期に亘って事業を伸ばしていくことが可能になります。日本には400万以上の企業があるわけですから、マーケットは巨大です。たとえばSansanという会社は名刺管理に取り組んで10年以上が経過していますが、まだまだ大きく伸びていくという事業計画を描いていますし、事実、成長は今日でも加速しています。
しかしバーティカルSaaSは、そのターゲットを特定の産業に絞り込んでいます。外食で言えば、日本には多く見積もっても50万軒のレストラン(法人数ではなく店舗数ですよ)しかありません。これでも産業の中では相当に大きいのではありますが、それでもホリゾンタルの400万企業に比べたら圧倒的に小さい。 つまり、外食向けに優れたサービスを1つ作り出せたとしても、そのサービスだけで永続的に事業を伸ばしていくことは、現実的に不可能なのです。

このように、ホリゾンタルとバーティカルでは、そもそもの前提となる市場規模に圧倒的な違いがあるため、自ずと戦略も大きく変わることになります。

バーティカルSaaSの面白さ

しかしこれは、必ずしも悪いことばかりではありません。

バーティカルSaaSは特定の産業にフォーカスするため市場が小さい代わりに、より深く大きな変化を起こすことができるという面白さがあります。
ホリゾンタルSaaSは、たしかに業務を効率化させます。数万社、数十万社という単位で特定の業務が効率化され標準化されるというのは、大きな社会的なインパクトがあるでしょう。しかし、個別の産業に対して及ぼす影響力を考えると、産業構造を一変させるほどの変化をもたらすことは難しいのではないでしょうか。いわば、ホリゾンタルは「広く浅く社会を変えていく」わけです。
一方バーティカルSaaSは、全く逆のアプローチを取ります。バーティカルは、そもそも産業課題を解決するために生まれたSaaSです。バーティカルSaaSが目指すのは、まさに各産業の「革命」。産業のメカニズムを一変させ、それによって社会や経済のあり方すらも変えてしまおうというのがバーティカルSaaSのミッションです。そして、その変化の大きさこそがバーティカルSaaSの醍醐味だとも言えるでしょう。いわば「狭く深く」、しかも決定的に社会を変えていくことがバーティカルSaaSのアプローチなのです。
ホリゾンタルは広く浅く、バーティカルは狭く深く。それぞれなりの面白さやチャレンジがあるわけですね。

バーティカルSaaSの成長戦略とは

では、そんなバーティカルSaaSはどのようにして事業成長を目指したらよいのでしょう。
トレタでのこれまでの経験(成功も失敗も)から、その戦略は大きく4つあると、僕は考えています。

1) 本質的な産業課題を解決する
表層的な問題に目を奪われず、いかに本質的な課題を発見できるか。僕らは業界に深く入り込み、誰よりも深くその産業を理解しなければなりません。
そして課題が発見できたら、それを可能な限り美しくエレガントに、そして根本的に解決していきます。
この課題発見能力と解決能力こそが、バーティカルSaaSの競争力の源泉となります。

2) サービス (課題解決) を積み重ねる
産業課題は一つではありません。産業の未来を作ろうと思ったら、解決すべき課題は無数に存在します。だからバーティカルSaaSは、サービスを次々に生み出して「多層化」していかねばなりません。そうでなければ、産業構造を変えるというバーティカルSaaSのミッションは永遠に達成できないでしょう。
そしてこれは、バーティカルSaaSが負っている「市場の小ささによる成長限界」を突破する唯一の方法でもあります。僕らバーティカルSaaSは「課題を発見し続け、新規事業を作り続け、課題を解決し続ける」ことが宿命づけられているというわけです。

3) 自分たちにしかできないことをやる
前項で、僕が「多角化」ではなく「多層化」と表現したのには理由があります。バーティカルSaaSは、ただ闇雲にいろんなことを試していても、本質的な意味で力強く成長できないと考えるからです。
多層化において必要なのは、「ある課題を解いたプレイヤーにしか挑戦権の与えられない、より本質的な課題を解きにいく」というアプローチです。
例えば僕らはこれまでの6年間、飲食店の予約の課題に挑戦してきました。それを徹底して突き詰めた時、僕らには、僕らにしか解決できない、より本質的な課題が見えてきたのです。
たとえば、僕らには「トレタCC」という新規事業があります。これは、飲食店に代わって予約の電話をすべて代行するというBPO事業です。僕らは最初に予約台帳をクラウド化しましたが、それに成功したからこそ挑戦できている新しい事業です。予約台帳では飲食店の皆さんに「電話予約の管理をもっと効率化しませんか」と提案していましたが、トレタCCの提案はそこからもう一段「深い」課題解決を提供します。それは「そもそも、電話のならないお店を作りませんか」「お店での電話対応をやめませんか」という、より本質的な提案です。これは、予約台帳・顧客台帳というものを作り上げ、一定の成果を上げてきた僕らにしか挑戦できない課題解決だと言えるでしょう。
このように、一つの課題を解決したからこそチャレンジできる次の事業機会が生まれることが、バーティカルSaaSの面白さです。トレタCCも、おそらく、これをやりきったらまた次のより本質的な課題が見えてくるに違いありません。
僕らが僕らにしか解決できない課題に挑戦し続ける限り、そのサービスは陳腐化しないし、むしろ価値を高め続けていくことができます。このサイクルを作り上げることこそが、バーティカルSaaSの成功の鍵になるはずです。

4) データが鍵
以上のように、課題発見から解決までのサイクルを有機的に組み合わせ、積み上げていくことこそがバーティカルSaaSの最も重要な戦略になると思うのですが、そこで鍵になるのが「データ」です。
データは正しく使うと課題発見のツールにもなるし、仮説検証のツールにもなりえます。またデータ自体が課題解決のドライバーになることもあるでしょう。バーティカルSaaSの成功は、データにかかっていると言っても過言ではありません。
たとえば、今年リリースして大変好評を頂いている「トレタnow」。これはまさにデータによって課題を発見した好例です。僕らは、トレタのデータを見ていて「世の中には、事前に予約をせずに、当日なんとかする(つまり当日予約をするか、または予約なしでお店に行く)人たちが全体の半分もいる」ということに初めて気づいたのです。
これは、僕らが予約台帳のサービスを展開しなければ永遠に気づくことのできなかった「見落とされていた真実」です。トレタnowは、予約台帳を極めてきたトレタだからこそ生まれた、「超直前予約」サービスなのです。

トレタのもう一つの使命

世界的に見ても、バーティカルSaaSには、まだまだ知見が足りていません。だからこそ僕らは、そのバーティカルSaaSの世界で圧倒的な成果を出し、その知見を広く発信できる存在になりたいと考えています。僕らがバーティカルSaaSの成功モデルを作り上げ、その知見が他の産業にまで波及し、外食以外のバーティカルSaaSの発展にも役立てるとしたら、その社会的意義は果てしなく大きいと言えるでしょう。
トレタが外食の課題を解決することが、結果としてさまざまな産業のアップデートを促していく。トレタには、ありとあらゆる産業が革新していく「震源地」にならねばならないという、もう一つの使命があると考えています。

トレタは、予約台帳の会社からレストランテックの会社へ

僕らがどのくらいの課題解決ができたのか。その課題解決の総和こそがトレタの成長であり、ミッションの達成度合いであり、外食産業への貢献量を測る指標そのものになります。
だからこそ、僕らはバーティカルSaaSのパイオニアとして、「予約台帳の会社」から「Restaurant Techの会社」へと脱皮していこうとしています。それは、僕らが単に予約のサービスだけで終わるのではなく、より多くの課題を解決できる組織になろうという決意の現れでもあります。
ということで、トレタの新しい挑戦に共感する方、そしてバーティカルSaaSの醍醐味を味わってみたい方は、是非ここから、または下記のWantedlyのリンクからコンタクトしてみてはいかがでしょうか!気軽に遊びに来てね!




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