シリーズ・うちとじいちゃん

うっとこのじいちゃんは、今年齢95とかになると思う多分。

先日の如月轟沈騒ぎで、俄然海軍史熱が発火したうち、90以上の爺さん達に、戦艦の話をすると、皆嬉々として聞き入ってくれる。「如月って早く沈んだんやなあ」というと「よくしっとるのう!」と嬉しそうに顔を綻ばす爺ちゃんたち。私達が生まれてくる要因であった彼らの歴史を知らなければ、と自分とこのじいちゃんに突撃取材した。

小倉で憲兵してた、っていうのは知ってた。けど、そのいきさつはよく知らない。だから聞く。

A。「なんで憲兵なったん?志願したん?

Q。「俺ァ、銃持って戦場走るってのァしたくなかったんじゃ。やれ、言われたらやるが、死んどったろうのぅ。憲兵は兵隊、国民を監視して守るまぁ、警察やったから、国内に居れば助かるとおもとった」

A。「戦争負けるとおもうとったん?」

Q.「おーぅ、絶対負けるとおもうとった。憲兵はの、情報が入ってくるんじゃ。東京の大本営から福岡の大本営にな。で、硫黄島っちあったろうが。大本営は、嘘んじょういいよったが、憲兵隊には玉砕っち伝えられとった。これは負けるな、と思った。で、次は沖縄じゃ。沖縄の後には宮崎が取られる。宮崎に上陸されたら負けたも当然じゃ。そんときにのう、憲兵隊ンヤツが、「宮崎上陸の際は、切り込み隊を結成、一矢報いて見事御国の為に玉砕せん」っち飯ン時に言い出したヤツがおった。けんど、俺ァ「俺ァ行かん!」っちいうちゃった。「命令なら行くけんど、鉄砲のある時代に刀抜いて何するんか。無駄死にじゃ、一人が一人殺したところでなんになるんか」っちいうた」

A・昔の将校さんにも会った?

Q。「凛々しい人もおったし、こげんやつはおらん、ちゅうほうど腹ン立つヤツもおった。おったけんど、皆いざっちゅう時の為に腹だけはくくっとったのう。広島に原爆が落ちたろうが。あんときも将校に集められて、「新型爆弾が落ちた」だけ伝えられた。まだ原爆っちゅう事はわからんかった。俺ァそんとき、小倉におったが、あん、九日かのう。小倉は曇っちょったんじゃ。やから助かった。はれとったら俺ァ死んじょったろうのう」

男性性を神聖化しすぎのきらいがあるうちですが、多分、このじいちゃんの所為。このクソ田舎で、新聞をすみからすみまで読み、テレビをみ、そして自分の中で仮説を立てて検証する、見識の深さ。この人の孫で在る事をうちは本当に誇りに思う。あの時代、憲兵隊でありながら「無駄死にじゃ」と言える豪胆さ、そして最期に、相撲に関してもこういいました。

「外国人力士んじょう勝っちょる、いうけんど、あたりまえじゃ。体力があって才能がある人間は、格闘技か、野球か、サッカーにいく。国技じゃのにな。そっちのほうが金になるき。日本人力士が勝てんのは当然じゃ」

アレかもしらん、おでの、「職人堅気」好き、「男気」好き、はじいちゃんの影響かもしらん。大好きちょうかっこいい。かっこいいよなあああ、男の背中憧れるよなぁあああ・・・。黙して考えて、黙々と実行して、偉ぶらない、だけど胸だけ張っている、そんな男。いいなあ、かっこいいなぁ

だけど、うちは女性だから、けっしてそれにはなれないのだ。黙して語らず黙々と自分の仕事にのみ打ち込む、という強さが欲しくて欲しくてあがいているけど、もてないのだ。悔しい。この見識を持ちたい。世の中を広くみたい。感情に流されて喚き散らしたくない、ぐっと奥歯を噛んで堪えられる人間でいたい。自分の中の女性性もまた大切な私の一部分だ。だから私は本質的に、憧れる男性へとはなりようがない。

この、絶望が、私の文章の根幹です。自分の性を嘆き、嘆きながら尊び、絶望して、ペシミストとなる。それでいい。それでいいのだ。

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