LILUM-リリウム-に救いはあるのか
ZDOの会場に偶然居合わせる
↓
小田さくらさんのことが気になりだす
↓
CDを買ったら演劇女子部のサントラ
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リリウム
というルートを辿って巡り合った人物の
『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』
初見の感想の備忘録です。
視聴前の前置き、前回の記事はこちらから↓
以降はネタバレしかないので
読む際はご注意ください。
感想
終わった後はもう、こんなものです。
何も考えられない。
ここからなんとか感情と思考を取り戻して、この文章を書き連ねていますが、全く頭が回っている気がしません(乱文ご容赦ください)。
序盤から彼女たちに当て書きされたとわかる脚本だったので、全て見終わった後に『この作品を10代のアイドルに演じさせた罪深さ』を感じました。
ファルスが
というセリフがあります。
もちろん、現実世界はサナトリウムであった事のように時は永遠に繰り返されませんし、人は等速に老いていきます。
アイドルはある種その方の人生を消費される職業のように感じています。アイドルとしての生き方を支持され、応援されることよって活動していて、その中魅力の一つとなる「若さ」を彼女らに説かれる。
こんな因果なことがあっていいんでしょうか。
シリアスとコメディ、主観とメタ認知が目まぐるしく変わって情緒が酔ってしまいそうになる影に残していくものが大きすぎて……。
視聴後に調べると、このリリウムはTRUMPシリーズの1つという位置付けで、物語の1ピースにすぎないようです。本編で様々な場面で伏線を張られているようなわだかまりが残っていました(し、今もそれが残っています)が、それを知ってなるほどそういうことかと腑に落ちました。
物語について
真相
大まかに表すと
起 シルベチカの存在を探す
承 真相を知っているスノウと接触
転 クランの秘密を知ってしまう
結 死をもって永遠の繭期に終止符を打つ
となるのでしょうが
体感としては起承転転転転転転結です。
・クランは800年前からあった
・ファルスが親方様でTRUMP
・飲んでた薬はウルと呼ばれる不老の秘薬
・全員イニシアチブで記憶を操られていた
・シルベチカはいた
・スノウとリリーはファルスと同一化
・リリーは不老不死となっていた
これが後半一気に畳みかけて明かされるわけです。色んな意味で重たい。
正しさの行使
本作では3つの立場があって
永遠の繭期を受け入れる
・ファルス
・スノウ
・紫蘭
・竜胆
永遠の繭期を拒絶する
・シルベチカ
・(スノウ)
・リリー
何も知らない
・他のヴァンプたち
それぞれの視点からクランを見たときに、誰かしら俗物的な欲に走りそうなところを、それがない。
カトレアなら『暇を潰したい』
スノウなら『死にたくない』
マリーゴールドは『リリーを守りたい』
1番の悪に思えるファルスだってあの所業に走ったのは『寂しい』からです。
どれも生存欲求で、悪意がないから誰も責められない。
救いがないように思えるのに、カトレアの暇は潰されたし、スノウは自らの意思で死を選び、マリーゴールドは永遠の繭期を終わらせてクランの自我を守る決意をリリーに固めさせ、ファルスはリリーが不老不死となったことによって願いは叶えられてしまった。
結果、ここで行われたことは全て正しくなってしまった。
この登場人物と、観ている私(観客)の「ハッピーエンドってそういうことじゃないんだよ……」というギャップが、えもいえない感情を残していきます。
うーん、辛い!
私を忘れないで
シルベチカの花言葉であり、劇中で何度も伝えられたメッセージです。
最愛の恋人であるキャメリアに、または神の視点からリリーに重大なメッセージを残すように。
よく『人は2度死ぬ。1回目は肉体的に死んだ時。2回目は人に忘れられた時。』なんて言葉がありますが、リリーがファルスに「そんなことをしてもあなたの孤独は永遠に埋まらないわ」と言ったように、ファルスがいくらイニシアチブでサナトリウムを保とうとしても、本当の意味でファルスを覚えている者はいません。
対してリリーは他者を噛むことなくシルベチカ、そしてスノウの今際の言葉を胸にこれから永遠の時を生き続けることになります。
ここでリリーの花言葉とタイトルにもある『純潔』に立ち返ります。
同じ不老不死でもファルスは純潔でなく、リリーが純潔であるのは、ファルスがダンピールであるということと(マーガレットが劇中でマリーゴールド、チェリー、ファルスをダンピールがドブネズミの匂いがすると言ったため)、噛むという自らの行為を介さず、力だけ得てしまったというところにあると思います。言ってしまえばリリーは自分の手をまだ汚していないのです。
この先、リリーの純潔はどこまで保たれるのでしょうね。悠久の時の中でいつまでかつての友の言葉『私を忘れないで』を心に残して無垢な存在であり続けることができるのか…………。
歌唱について
やはり1番センセーショナルだったのはマリーゴールドの独白『もう泣かないと決めた』でした。たぶん散々語り尽くされているとは思うのですが、改めてすごかった。劇中でも1人だけ演技の質が違うのを肌で感じましたし、声に乗る表情が見事で。もう圧巻の一言です。
『プリンセス・マーガレット』の音の跳ね方も聞いていて楽しかったですし、『葬送終曲「聖痕《スティグマ》」』は鬼気迫る素晴らしい歌唱でシーンの臨場感を演出していました。
そして、歌唱のトップバッターを務めたシルベチカ。セリフより歌っている時間の方が長いのではないかというくらい、歌声をたくさん聞かせていただけて大満足。個人的に小田さんのエの母音の愛好家なので、『あなたを愛した記憶』はもう、ありがとうございます!と全力で感謝しました。キャメリアの切にシルベチカを想う表情もいい……。
結論全部よかったです(身も蓋もない)。
まとめ
まだ10代半ばの女の子たちがこんな重いシリアスな題材を一心に演じ切ったことに心からの敬意を抱きました。そして、その重さを抱えた精神力にも拍手です。
全体で個人的にお気に入りのキャラクターはチェリーでした。彼女は私たちサイドから見たリリーの分身のようなんですよね。
物語の核になる人物の傍で普段の生活を共にしていたと思えば、コミカルチームに混ざってクランの秘密の第一発見者となり、声帯の心配をしてしまうほど全力で私たちの心の叫びの言葉通り代弁者となってくれる。
初めの予想でシルベチカと何か関係がありそうとか穿った見方をしていましたが、それは何もなかったけど笑
目で追っていて1番楽しい子でした!心の整理がやっとついてまとめられてよかったです。
感想はこれにて!
素敵な作品をありがとうございました!