さくらインターネット
デジタル庁は11月28日、日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」(政府クラウド)として、さくらインターネットの「さくらのクラウド」を新たに選定したと発表した。
仕様書通り、2025年度末までに条件を満たす条件で採択した。これまで、ガバメントクラウドには外資系のサービスしか選ばれていなかったので、国内サービスとしては初の選定となる。初回公募の2021年にAmazon Web ServicesとGoogle Cloud Platformの2つを期限付きで採用したのを皮切りに、2022年の公募でMicrosoft AzureとOracle Cloud Infrastructureの2つが追加された。その4社は説明不要の大手クラウドプロバイダーで、世界中の人々がどれかのサービスを一度は利用したことがあると言えるほど生活に浸透している。
ガバメントクラウドは政府やデジタル庁が主導するデジタル改革の一つで、自治体や政府が使うシステムの基盤を共通化し、データ移行や既存システムの機能拡張、サーバ導入コストの削減を見込むというものである。外部サービスを利用し、データ管理を内部サーバーに委ねない傾向は、多くの企業で推進されている。
物理的なサーバー設置・運用に加え、管理者の人件費など、自前で行うとコストが膨れ上がるデータ管理であるが、既存のサービスに委ねてしまう方が煩わしい面がなく、コストダウンにもなるので、今の時代には合っているのだろう。これは一企業に限ったことではなく、行政にも同じことがいえるため、デジタル庁発足からガバメントクラウドを強く推進している。
採択の基準は分からないが、Amazon、Google、Microsoft、Oracleと言われれば異論がある人はいないだろう。この4社の名前を見た時、「やはり国内サービスは信用がないのか」と少し残念な気持ちになったものだ。もともと、ガバメントクラウドは技術要件が厳しく、実質的に国内サービスは応募ができない状況であったので、仕方がないとも思っていた。
2021年当時でもネット上では「なぜ国産クラウドではないのか」「日本の産業を育成する気はないのか」といった意見が続出し、匿名掲示板「2ちゃんねる」の開設者・西村博之さんも「自分ならさくらインターネットやGMOなど日本の事業者のクラウドを標準にする」とABEMA TVの報道番組で発言するほどであった。
そんな状況の中、2023年にさくらインターネットが選定され、「やっと国内サービスも信頼されるサービスに成長したのか」と嬉しくなった。技術要件は350項目もあり、コンピューティングリソース、セキュリティ、マネージドサービスの数など、さまざまな面で海外サービスでないと達成できない現実が2021年にはあったが、選定要件を下げなかった結果、国内サービスも成長することができたのかもしれない。
今回の公募には、さくらインターネット以外に、IIJやソフトバンクも応募していたようだが、その中で選定を勝ち取れたのは、さくらインターネットの田中邦裕社長が2021年当時に話していた
「日本のIaaSベンダーはまだまだ。われわれが今後信頼性を高めていかなくていけないというだけの話」
という謙虚な姿勢があったからかもしれない。
しかし、現段階では満たしていない技術要件があるようで、河野太郎デジタル大臣はこの発表の中で「さくらインターネットが2025年度末までにすべての技術要件を満たすことを条件に対象事業者に選定した」と説明した上で、「今回初めて国産のガバメントクラウドが、可能性が出てきましたんで、ぜひ頑張っていただきたいと思います」とも発言された。
DFFTを提唱している日本ではあるが、行政がもつ個人情報のようなデータ管理は国内サービスで行なってほしいと思うは日本国民の本音ではないだろうか。今回のさくらインターネットの選定は大きな一歩であろう。