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無料から始める歌モノDTM(第6回)【作曲編②構成の大切さ】

はじめに

はじめましての方ははじめまして。ご存知の方はいらっしゃいませ。
ノートPCとフリー(無料)ツールで歌モノDTM曲を制作しております、

金田ひとみ

と申します。

今回は前回予告の通り、曲の構成について書こうと思います。
作曲のマル秘ネタ教えろや的な声もいただいておりまして私としてもそっちのほうがウケるだろうなと思いつつも、
前提条件の無い小手先のアイデア集だけでは再現性が無いと考えておりますのでこうしてジワジワ書いております。
むしろこの積み重ねからしか良い曲は生まれないとも思っております。
何卒ご了承くださいませ。

作曲と作曲といいますが、ある一部分のフレーズを作るだけが作曲ではありません。
良いフレーズをたまたま思いついたとしても、曲全体の構成やアレンジと噛み合ってないと一曲として成立しません。
私も多少のストックフレーズはありますが、ほとんどは新規フレーズです。
ストックと言うとカッコいいですが、つまりは別の曲で噛み合わせられなかったボツメロディーやらボツコード進行やらのことです。

ですので今回は私の考える作曲の三要素
フレーズ、構成、アレンジ
の中から構成について書いていきたいと思います。
(このネタ自体、前回のボツネタです。)

構成からの作曲

なぜ構成から?

フレーズ、構成、アレンジの中からなぜ構成について先に書くのかお話しておきます。

まずフレーズは作曲の花形のようでいて、実は理論派の方も感覚派の方も案外すぐにできるものだからです。
なにせ有限の組合せでしかないので、極端な話サイコロを振ってもできます。
最近ではテキトーなコード進行を用意すれば、勝手にメロディーを生成してくれるソフトもあるようです。↓コレとかですね。

前々回にも少し触れましたが、私も思い付かないときはホントにサイコロを振っています。正確にはDAW上でテキトーな場所にテキトーな長さでノートを打ち込んで、その中から良さげなものを選んでいるだけだったりします。
何が良いかは理論的な正確さや流行曲の分析から得たパターンで決めても良いですし、感覚的な好き嫌いで決めても良いです。
それが作曲なのか?!と噛みつく方もいらっしゃるかもしれませんが、その中からどれに決めるか(同時にどれをあきらめるか)の選択をするには人間の判断が必要です。この選択に人それぞれのオリジナリティが出てきます。
サイコロではないちゃんとした作り方、フレーズの組み合わせ、使える音の並び(スケール)やコード進行などについては今回の記事とは別話題なのでまたいつか書くかもしれません。
(が、大抵入門書とかブログとか解説動画とかちょっと調べれば出てくる話なのでわざわざ深くまで触れないと思います。退屈ですし私も勉強中です。)

次にアレンジは編曲を含む別の能力や仕事で、技術や知識や経験が物を言う分野になると思います。
どの楽器をどんな演奏法でどんな音色で鳴らすのか、そもそも楽器や演奏法や音色の作り方を知らないと手の出しようがありません。
私がエレクトリック系が苦手だったり、ジャズが難しいと感じる理由の一つです。
新しい音源を使うときは当然その音源の使い方も勉強しますが、それより先に現物の楽器の構造や演奏法やそれを使った楽曲も調べます。
(一度カリンバを使った曲を作りたいと思って断念したことがあります。まだ活かせるだけの力量が足りなかったです。)


一方で構成は、曲の全体像を決める設計図みたいなものです。設計図が無いとチグハグな仕上がりになります。
設計図なら長年培われたパターンや今流行りのものがすでにあります。要はそのパターンが多くの人が気持ち良いと感じる構成なわけです。
そこを打破していくにも既存パターンを知らないと闇雲な挑戦になります。
新しい挑戦だーっ!と思って作ってみたらすでにあるものだったり、そもそも気持ち良いと感じられないものだったり。
設計図なので建築物で例えようかと思いましたが、建築物だと静的で動きのないものなので、流れのある料理の例えを使います。(いつもどおり。)

曲全体がコース料理だとすると、
フレーズは1品1品の料理そのもの、
構成がコース料理の全体の流れ
アレンジが各料理の食材や調理法や盛り付け方
と考えるとわかりやすいかと思います。
どれほど良い食材を揃えてそれぞれ美味しい料理を作っても、
最初にデザートから始まって、ぬるいメインディッシュが続き、最後に冷めたスープが出てきてはガッカリです。
メインディッシュを待っているのにずっと前菜続きでいきなりお会計と言われたらなんでや?!ってなります。
適切なタイミングで適切な一皿が出てくるように配置するのが構成です。
さらに言えばそのコース全体がフレンチなのか懐石なのか創作料理なのかとかを決めるのがコンセプトに当たります。

もちろん、良いフレーズが思いついたから、とか、新しい音源を手に入れたから、とかから始めても良いです。
それはスペシャルレシピやスペシャル食材だったりするわけですから。それ自体がコンセプトになります。
それを活かすも殺すも構成です。
というわけでこの記事は構成の話から始めます。

ABサビ構成の強さ

代表的な構成として、
ABサビ構成
があります。
言葉だけで何となくわかると思いますが曲の区切りが
Aメロ→Bメロ→サビ
となっているものです。

イントロ
→1番Aメロ→Bメロ→サビ
→2番Aメロ→Bメロ→サビ
→(楽器ソロやCメロ)→ラストサビ→
アウトロ
というパターンが定番です。

一応ABサビのそれぞれの役割を改めて簡単に述べると、
Aメロで曲のテーマやキー(調)、テンポなどを提示→
Bメロでリズムの変更や転調をしてテーマを変えたりサビに繋がる変化を与える→
サビで印象に残る高音やロングトーンを使って一番伝えたいことを歌う、
となります。
あくまで一般論ですが、曲の雰囲気が変わったよねと思わせる何かしらの変化はあります。

サビから始まるものやAメロで締めくくるもの、各メロやラストサビを繰り返すもの、別の位置に楽器ソロが入るものなどもありますか、基本的にはA→B→サビの順番の繰り返しです。

ご存知の方には当たり前の定義でつまらない話だと思われるでしょうが、
B→A→サビ→A→B、とかA→B→C→D→サビ、
とかの展開が一般的でない理由を説明できるでしょうか。
私も完璧に説明できる知識と自信はありません。音楽だけでなく脳科学とか心理学の分野もからんでくると思います。
おそらく人間の脳が
規則性を好むこと

その規則性から少しだけ外れることに驚きや刺激を感じ、快感を生じること
が原因ではないかと思います。
その規則性と逸脱性のバランスが良いのが、
A/B/サビ/A/B/サビ/ラストサビ
の7区分からCメロや楽器ソロを加えた9区分程度、
もしくは全体が
1番/2番/(その他)/ラストサビ
の3~4区分程度でその部分として
A/B/サビ
の3区分程度がちょうど良いのかもしれません。
順番が入れ替わったり、区分が多過ぎてあれこれ変化させてしまったりすると規則性を感じられませんから、逸脱性も薄くなります。
ただし科学的根拠は無いので与太話くらいにしておきます。

それとABサビ構成って日本特有のここ数十年の構成のようです。当たり前でもないんですね。
洋楽だと
Verse⇄Chorus
または
Verse→Bridge→Chorus
に区分され、日本のABサビとは若干概念的に違うそうです。
(下記リンク他、「AメロBメロサビ」などで検索すると参考になるブログ等がたくさん出てきます。)

作曲を始めるに当たってABサビ構成に倣うのはまずハズレが無く、個人的にもオススメします。
私も現時点で投稿している自作曲でABサビ構成とその派生形をカウントしてみました。(Youtubeに上げているものの内1曲はセルフカバーなので、25曲として数えました。)
なんと25曲中21曲
(Bメロが短くてAメロとサビの繋ぎ程度にしか感じないものも含めています。)
残り4曲はフォークソング風だったり民謡風だったりと、懐かしいというより古い雰囲気の曲です。

なぜABサビ構成が近年の日本でウケやすいかを、与太話ではない方向から私が思うところを考えてみます。

まず1つ目は、
聞き慣れた構成だから違和感なく受け入れられる
というのがあると思います。
構成の区切りが分かりやすくて順番も決まっているので、どこから盛り上がるのかとかがハッキリしていて安心して聴けるのですね。

2つ目が、カラオケで歌いやすい、つまり覚えやすいということです。
例えばアニソンの2番ってよほどそのアニメのファンじゃない限り知らないものです。でもなぜかそれとなく歌える。
子供向けアニメは尚更。覚えやすくないと子供が歌えません。

(アンパンマンマーチはむしろ1番知らねぇ。)
1番が歌えてしまえば2番以降もほぼ同じ繰り返しですからね。
欧米資本主義圏の曲ですので、資本主義=金になる曲でないと生き残りにくいです。身も蓋もない。金になるカラオケで選ばれる曲は強いです。

ボカロ系の曲なら「歌ってみた」で選ばれる曲はフレーズが少々難しくてもウケます。挑戦する面白さがあります。
それでも全体の構成はABサビが無難だと思います。歌ってもらう前に聞いてもらわないといけませんから。

安易なABサビ構成の弱点

さて、ABサビ構成はオススメと言っておきながらなんですが、馬鹿正直に
1番ABサビ→2番ABサビ→ラストサビ
と繰り返してしまいますとおそらく1番かそのちょっと先で視聴を切られます。

YouTubeに投稿してみると自分の曲の平均視聴時間などが確認できます。
大体のABサビ構成曲は真ん中かその少し手前までの時間が1番に当たりますので、この辺を越えられているかどうかが指標になります。
私の場合、曲によっては再生時間80%以上つまり多くの視聴者にほぼ最後までご視聴いただいているものが25曲中10曲ほどあります。
まあ、再生数が数百がいいとこなので統計学的には当てになりませんが。コアファンの方に支えられているのだと思います。ありがたいことです。
(もちろん歌詞やイラストや動画の効果もあると思います。というか私の場合それも含めて作品と考えていますので、歌詞構成、動画構成もコンセプトに沿って作っています。)
(あとあまり分析データで一喜一憂するのは精神衛生上良ろしくないです。特に他者との比較。むしろ視聴者が増えると何となく動画を開いちゃった人が増えて代わりにコアファンの割合が必然減るので、再生時間や再生数に対する高評価の平均値は落ちます。自分の曲同士を冷静に分析して、ニーズやウケや自分の得意なやり方を探るのは良いと思います。)

で、なぜ切られてしまうのかというと、皮肉なようですが上で書いた強みの弊害です。
1番を聴けば2番以降の流れが何となくわかっちゃうんですよね。
1番の時点で視聴者のハートを掴めないと
「あーね、こーゆー曲ね、わーったわーった」
と飽きられてしまう悲しい現実です。
もちろん1番そのもののフレーズや構成がいまいちな場合もあります。
ちゃんとAメロらしさ、Bメロらしさ、サビらしさを出せてなかったり、
自分ではA→B→サビのつもりが、下手に変化を加え過ぎてA→B→C→D→サビみたいに間延びして聞こえてしまっていたり。
それから歌いたいことが多すぎて一番伝えたいポイントになかなか到達しない、やっと到達したと思ったら盛り上がりがビミョーだったりすると、先の料理コースの例で挙げた全部前菜みたいことになってしまいます。
ダメというわけではありません。
物語風の曲だったりするとハマる場合もあります。
それでも物語に起承転結があるように曲にも起承転結が必要です。

三幕構成のおすすめ

起承転結と書きましたが、起承転結は言わば四部構成です。
小学校の作文の書き方みたいので習うと思いますが、実はかなり批判の多い論理性の無い構成だとされています。特に論文やビジネスの企画書など重要ポイントをはっきりさせないといけない長い文章には不向きです。
曲もサビが重要ポイントになるので、そこに行き着くまでの流れでハートを掴めないと何を伝えたいのかゴチャゴチャして飽きられます。
なにせ起承転結構成は元々は漢詩の中の絶句という詩のための構成です。ある程度長さのある散文詩や自由詩ではなく、漢字だけ数十文字から成る定型詩で比較的短いです。中学生くらいで習いますかね。
詩的な繰り返し中心の短い曲なら非常に使いやすいですが、ある程度の長さのある歌モノ曲に採用するには音数や文字数が足りないか逆に冗長になってしまうようです。

曲に当てはめるなら、
Aメロ→A’メロ→Bメロ→サビまたはCメロ
といったところでしょうか。
曲の1番にはよく見かけるパターンなのですが、2番以降もAメロが連続すると大抵ダレます。よほど良いフレーズでないと2番の途中で切られてしまうかもしれません。
さらに起承転結を曲全体に採用してしまうと
1番→2番→3番→4番
となるので長過ぎてあからさまにダレそうなのがわかります。
短い曲ならむしろ安心感があってハマります。こちらとか↓

財津和夫『切手のないおくりもの』です。
メロというよりフレーズ程度で区分することになりますが、一応分解するとA→A’→B→Cとなっていて、
曲全体では1番→2番→(間奏)→3番→4番→5番(+C)となっています。
間奏を挟んで3,4番が「転」、最後の5番がキーが上がってC部分を繰り返すことで印象付ける「結」になっていると考えることができます。
個人的には好きなタイプの構成です。

好き嫌いはとりあえず置いておいて、
最近の曲風にしようと思うと起承転結構成は帯に短し襷に長しで使いにくいです。
そこで私が採用している考え方は
三幕構成
です。
これは映画や劇の構成です。
能や舞など日本の伝統芸能で使われる序破急の構成もこれと似たような考え方です。(『エヴァンゲリオン』の映画を見たことのある人ならピンとくるかもですね。ちなみに私は旧劇までしか見てません。)

三幕構成は、重要ポイントをハッキリさせるだけでなく長さのある文章や物語に使いやすい考え方です。
簡単に説明すると、
 物語が始まってまずは登場人物や舞台が紹介される。
  主人公の日常やモノローグから始まり、時には友人や相棒が登場する。
 すると何かの事件や問題が起こる。
  あるいは敵が現れて物語が動き始める。
 やがて事件や問題を解決したり敵を倒したりする見せ場があって、
  最後は見事に大団円!
という①→②→③の流れです。

この①②③それぞれの中にも(1)(2)(3)があって、上の③であれば
 (1)主人公が敵を追い詰める
 (2)ところが敵が反撃してきて主人公ピンチ
 (3)行方不明だった相棒が現れ協力して敵を倒す
とかありがちなストーリーです。
ワクワクドキドキハラハラさせながら最後まで見せる手法の代表ですね。

三幕構成だと曲全体で
①1番→②2番→③ソロ等+ラストサビ
として活かせますし、
1番部分だけ取り出して見たときの
(1)Aメロ→(2)Bメロ→(3)サビ
としても採用できる考え方です。
映画や劇と同じく、音楽も芸術やエンタメ要素を持った時間的流れのある創作物なので相性が良いようです。
(映画や劇の三幕構成は①:②:③の時間比率が1:2:1が適当とされていますので考え方のみを借用します。
音楽はある程度の繰り返しで効果を高められますが、基本的に一本道の映画や劇だと何度も同じシーンのリピートはできないです。できて回想シーンを数回。
また数分しかない曲と数時間ある映画や劇とでは各パートの体感時間も違います。
曲であれば1〜2:1:2〜4くらいがありがちで作りやすいでしょうか。)

先に挙げた『切手のないおくりもの』も
各番のA→A'→B→Cをまとめて(1)A,A'→(2)B→(3)Cと考えてもいいですし、
全体を①1,2番→②3,4番→③5番∔Cと捉えることもできます。

起承転結で区分するにしろ三幕構成で区分するにしろ、各部分で何かしらの変化や盛り上がる流れを作るのが構成です。

三幕構成を活かす

構成から先に曲を作っていくとフレーズも作りやすいです。
どこに最高音最低音を配置するのか、
転調か必要なのか、
フレーズが長過ぎたり短すぎたりしないか、
とかを先に決められるからです。
私もよくあるのが、いいサビを思いついたけれどAメロBメロがいまいち決まらないとかいう時です。そんな時は使う予定の音域と曲全体の長さだけを決めた仮パートを作ってあとからAメロBメロを作り込んでいきます。
Twitterで「どん兵衛タイム」とか呟いている時はその調節中です。全体で5分程度になるように小節数やテンポ調節を優先していて、メロディーがほとんど無い時です。
私の場合大抵の曲は4~5分のものが多いですので、その長さになるように小節数とテンポを先に決めてしまいます。
最近の流行りの曲っぽくしたい場合は、
サビから始まって
ギターソロが無くて
サビのフレーズを多めに繰り返して
3~4分程度、
等のウケパターンがありますので、それに合う構成を用意してあとから各フレーズを作ることもできます。

全体で2分台とか逆に6分超になりそうなら、テンポは極端にいじりにくいので、過不足分の小節数を調節してから具体的な作曲作業に移ります。
短いほうはサビを繰り返すなりソロを足すなりしてゆけば良いのでそう問題ないのですが、
バラードだとゆっくりな分、気づけば6分超になっていることもあります。あと下手にイントロやギターソロにこだわったロックとかも6分超になることがあります。
コンセプトに照らし合わせた明確な理由なく長過ぎる時はバッサリどこかを切ります。ちょっと勇気がいる作業です。

2番以降の視聴が切られないようにするには、1番と2番で変化を付けるのが手っ取り早いです。①→②→③で印象を変えるということですね。
2番から楽器音を変えたり増やしたりする(エレキギターやドラムが入り始める)、
2番からメロディーにハモを入れる、
Aメロの繰り返しを1回だけにして早めにBメロ→サビに繋ぐ、
すぐに楽器ソロに繋いだり印象的な間奏を挟む、
キーを半音~1音上げる、
思い切ってAメロを削る、
などが挙げられます。
もちろん歌詞での変化も加わってきますが、曲の側でできることも色々あります。

Aメロ、Bメロ、サビそれぞれも変化させることで1番だけで印象付けることができます。(1)(2)(3)の変化です。そもそもこの変化が乏しいと単調でABサビ構成には感じられないです。
逆に極端に短時間であれこれ変化させると規則性が失われてサビがぼんやりします。いろいろ知ってくると技術的に詰め込みたくなっちゃうんですよね。
音数を増やすならBメロはアクセント的に使って期待させ、サビで思い切り早口にする、
リズムを変えるならBメロだけにして、サビはAメロを基準にしたリズムに戻す、
ABメロはリズムを変えても音域は変えず、サビで一気に高音域を使う、
など、ある程度のまとまり毎に一貫性が欲しいところです。
1番の途中で飽きられるようでは2番以降をどう変化させようとも徒労に終わります。
このお話は別の【作曲編】でフレーズ回等のタイトルで改めて取り上げようと思います。

一応考慮しておいたほうがよいのは、最近のウケる曲風にするなら伝えたいことを後半や2番以降にジらす作戦はほぼ通用しないだろうということです。
サビから始まってABも全部サビか?みたいなハイなボカロ曲が多いのはそれもあると思います。テンポ自体比較的速いです。
意識的作っているPもいらっしゃるでしょうが、リスナーもそちらに馴染んできますので自然とPもそちら側に淘汰されていきます。

可処分時間と言いますが、一人の人間が一日で自由に使える時間は限られています。
テレビやゲームやサブスク動画など音楽以外のエンターテインメントが溢れている現代は可処分時間の奪い合いです。昔は良かった、などと嘆いても仕方ありません。
ワクワクさせる要素がいくつも詰まった他のエンターテインメントと同じステージで殴り合いをするには、音楽はちょっと弱いです。基本的に聴覚頼りだからです。
これ以上の話は今回の本筋とはズレますのでこの辺で終わりにします。

ABサビ構成以外

最後にABサビ構成以外に少し触れます。
ABサビ構成以外だと、私の曲にもありますが
サビ⇄メロ
の二部構成が代表的です。フォークやロックなら全然違和感ないです。
第0回でうまくリンクできなかったこの曲↓とか、サビ直前に数小節変化を入れているので厳密には二部構成ではないのですが、ほぼ二部構成です。
(25曲中21曲のカウント上ではABサビ構成にしています。)

Aメロとサビを2回ずつ繰り返している分、下手にBメロを長く取るとスピード感が失われます。Bメロに相当する部分が短いのはそのためです。

それからこちらなどはもはやサビメロの区分も微妙な扱いです↓。4フレーズで構成された先に挙げた『切手のないおくりもの』とも似ています。

分けるとするなら
メロ1→メロ1'→メロ2→メロ1''
または起承転結構成です。
で2番から1音上げの転調。少しずつ楽器が増えていって3番からドラムが前面に出てきます。ここは三幕構成も組み合わせています。
民謡っぽい雰囲気はこの構成によるところが大きいです。
最近の流行りの曲とはまったく異質なジャンルです。

それ以外だと
Aメロ→Bメロ→Cメロ→Dメロ→Eメロ→……
みたいに続く曲もあります。
物語風の曲ならアリです。
私はまだ作ったことがありません。
でも物語にしてもどこが導入でどこがピークでどこがオチなのかの流れがあります。
QUEEN『ボヘミアン・ラプソディ』などはオペラ風に仕上げたアイデアと技術とカリスマ性の結晶ですね。


結び

今回、三幕構成を紹介しましたが、なんでこんな話を知っているかいうとアニメにハマっていた時期に脚本やら絵コンテやらについて調べまくっていたからです。
最近は音楽ばかりやってるので全然見ていませんが。
元々小説や物語が好きというのもあります。

アニメやドラマや映画を見るときって何を基準に選びますか?
出演している声優さんや俳優さん、監督さんや原作で選ぶ方が多いのではないでしょうか。
あとはマーケティングに釣られて見てしまうか。今期の覇権!とか言われたりしますね。

私は監督さんはもちろんチェックしますが、それと合わせて構成作家さんと脚本家さんで選ぶことも多いです。お話全体の流れを作る重要ポジションなので監督さんが兼任されている場合もあります。
アニメだと特にシリーズ構成作家さんの役割が大切で、シリーズ構成の出来不出来が視聴継続にかなり影響します。
大体今の大人向けアニメは12~13話(ワンクールと言います)で、長いと24~26話の2クール、年間は52週なので四半期単位で放送されています。
シリーズ構成でよくあるのは最終回付近の一番イイトコで次回は!みたいに話を切られるパターン。最後はどうなるんだろうと次週が待ち遠しくなります。
それから中だるみしやすいシリーズ中盤で、突然温泉に行ったり海に行ったりするいわゆるお色気回があったりします。原作に無いのに挿入されることすらあります。本能的にエロには勝てない。
原作が連載中だったりすると第1シリーズでどこまでやるのかとか、1話ごとあるいは各話の前半後半(CMを挟んでAパートとBパート)をどこで切るのかなどを決めるのが脚本家さんや構成作家さんのお仕事です。切りどころが悪いとCM中にチャンネルを変えられるかもしれません。曲の1番2番みたいな感じです。
10年ほど前に放送された『魔法少女まどか☆マギカ』だと、まさかの第3話が話題になったりしました。(一応ネタバレはしません。Wikipediaの「構成」の項目でモロネタバレしているのでリンクも貼りません。)
普通シリーズのそんな前半に持ってくる展開ではないので、度肝を抜かれた感じがウケたのだと思います。
脚本はこの方ですね↓。作品一覧を見ればヒット作が多いことがわかります。

(以前の記事の結びで、人とAIの関係の話で虚淵さんが構成・脚本の『翠星のガルガンティア』を取り上げようかなとも考えたのですが、ロボットの性格が人間に近過ぎるので止めました。杉田さん(銀魂の銀さん等の声優さん)の演技のせいというわけではありません(笑))

私は一曲を作るのも同じようなものだと考えています。
どんなに一話一話が面白くても、絵がキレイでも、好きな声優さんが出ていても、構成が悪いと飽きられたり印象に残らなかったりします。
もちろん日常系アニメのように淡々と進めることで安心感や癒しが生まれ、ウケる場合もあります。現代人は疲れているのです。

歌モノDTM曲を作るという話題になると、作曲技術や感性的なひらめきを得る方法に目が行きがちです。あとはひたすら練習しろ投稿しろという根性論。
確かにその一面もあると思います。投稿しないことには反応も得られないので踏ん張らなければならない場合もあるでしょう。
でも限られた時間やコスト(このnoteの場合無料から)で、あれもこれも一人でやるには限界があります。
だったら自分が好きで得意なこだわりポイントに力を注げるように、ある意味うまい手抜きをする必要があります。知らずにテキトーに作るのと、知っていて力を配分するのとはまったく違います。
ぱっと耳に残る印象的なフレーズや歌詞、目に見えるイラストや動画に比べると、構成は直接聞こえないし見えないしで華やかな要素ではないですが、その出来不出来で視聴時間やリピートにかなり影響を及ぼします。それほど重要でありながら、ひらめきではなくテクニックである程度カバーできる要素でもあります。
最近は可処分時間の奪い合いでそれこそ2~3分の全部サビみたいな曲が雨後の筍のように投稿されています。それが悪いとは思いません。
でも大抵4~5分と長めの私の曲を聞いていただいて、「あっという間の5分だった」とコメントをいただいたりするのが私にとってはとても励みになります。実際の再生時間にも如実に現れているな、と数値でもわかります。
構成の大切さを知った上で2~3分の全部サビみたいな曲を作るのであれば、長く活動を続けていくには良いのではないかと思います。

次回予告

次回は構成の流れから歌詞との同期について書こうかと思っていたのですが、概念的な話ばかりだとちょっと飽きるので【雑記編】としてコラムっぽい感じにすることにします。転ですね。

ずばりスピードアップ法です。
速ければ良いとは全然思っていないのですが、施行回数(と失敗数)が多いほど、
何ができていて何ができていないのか、
自分の得手不得手、
難なくできることと苦戦すること、
が徐々にわかってきます。
どれか一つで途端に作曲スピードや制作スピードが上がるわけではないですが、これは採用できるかも、と思っていただけるネタをいくつかピックアップしたいと思います。
ではまた次回。

Thank you for reading!


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