見出し画像

無料から始める歌モノDTM(第9回)【作曲編④フレーズからの作曲・後編】

やたら長い「はじめに」

はじめましての方ははじめまして。ご存知の方はいらっしゃいませ。
ノートPCとフリー(無料)ツールで歌モノDTM曲を制作しております、

金田ひとみ

と申します。

大変お待たせして申し訳ない。
私事でちょっと間が空いてしまいました。

今回は前回に引き続き【フレーズからの作曲・後編】といたしまして、
みんな大好き
コード進行
について!

……は、今回の記事ではやりません。
ハーモニーに絡むので最低限のことは書きますが。

普通、作曲入門的な解説って基本的な説明のあとは、リズム、メロディー、ハーモニーの3要素のうち主にハーモニーの分野であるコードコード進行に多くのページを割いていることが多いと思います。確かに他2つに比べて覚えなければいけないことがたくさんあるんですよね。
でもちゃんと理論面から理解しようとすると、数字やらアルファベットやらがいっぱい出てくるコードやコード進行そのものだけを勉強するって結構大変。
英語を勉強するのに
"Hello! My name is Hitomi Kanada!"
のあとにいきなり
「SVCは第二文型で~」
みたいな勉強をする感じ。そして結局喋れるようにはならない。
得意不得意はあれど、こればっかりは理論だけでなく練習や経験がものを言う。
弾き語りコピーをオススメしてる解説が多いのは、習うより慣れろの部分が大きいからだと思います。英語だって聞くだけじゃなくて実際に使っていかないと生きた言葉として使えません。
(めっちゃ脱線ですが、言語は論理的な左脳、音楽は直感的な右脳で処理している思われがちですが、メロディーやハーモニーの認識時に活動している脳の部位は左右いずれかが優勢だったり両方同時だったりとまだ研究段階のことも多く、プロアーティストでは左脳が活発に活動しているとの報告もあるそうです。また言語の習得と音楽の習得は遺伝的素質と幼少期の環境が……って書き始めると終わらないのでまたいつか。)

義務教育でしか音楽に触れたことがない人が初めて作曲に取り組む順番として、コード理論やコード進行そのものにいきなり手を出すと、そこそこ使えるようになる前につまづいたり、最悪弊害になるかもしれないと個人的にはちょっと感じてます。避けては通れないのでノータッチは無理ですけど。

理解し始めたらし始めたで、コードの世界は沼です、沼。
全体の作曲自体が進まない。
こんな複雑な響きどこで使うんだ!?みたいな不思議なコードっていっぱいあって、それを組み替えたりすると思いもよらないメロディーが浮かんだりして面白くなってきちゃうことが……。
そういう意味ではプラグインや音作りの話と似ているかもしれません。基本的な楽器や機材のことは当然勉強しないといけないけれど、エフェクターのつまみをいくらいじっても、あれこれ音源を探してこだわりの音作りをしても、クオリティーは上がりますが曲そのものが完成するわけではないです。

知識や経験が増えてくればもちろん、どんな要素からでも作曲ができるようにはなります。
慣れればコード進行から作るのはとても作りやすい。理論的なパターンがある程度決まっているので、リズムやメロディーに比べればお決まり選択肢が用意されているようなものです。
私も音楽に関して義務教育以外で最初に覚えたのはギターコードだったと思います。もう20年以上前なので記憶もあやふやですが、コード譜が載った弾き語りヒット曲集みたいのを読みながらジャカジャカコード弾きから始めました。(コード譜とは、普通の楽譜のような五線譜や音符は無くて、ざっくりのリズム表記と歌詞の上にコードだけが書かれた簡易的な楽譜です。)
その時はリズム、メロディー、ハーモニーの概念もちゃんと知りませんでしたし、音楽の習い事に通ったこともありませんでしたので、ジャカジャカ弾くだけで歌を乗せて歌えるっていうのは結構面白く感じていたと思います。
ちなみに私の場合、コードからの作曲は2割程度かなと。他はドラムス、ベース、ギター、ピアノ、ストリングスなど楽器のフレーズからが3割程度、残りの5割程度がボーカルのフレーズからといったところです。その手前に詞先曲先やコンセプトという大カテゴリーがあります。

しかしいろいろ作曲してきて思うに、弾き語りやコピーから作曲というオリジナルを生み出す行為へは一本道じゃない何かしらの飛躍がある。

前回のカノン進行などの例で見たように、同じコード進行で全然違う曲を乗せられることはわかりましたし、「ずんだの歌」もとい『Paddle to the Town』は同じメロディーでコードだけ変えるなんてこともやっている。ハーモニーやらメロディーやらで同じ選択肢を選んでいるのに違うフレーズや曲を生み出している。不思議じゃないですか?

理論的な飛躍の一つは、鼻歌のコツで難しいのはベース音を掴むことと言ったように、メロディーとハーモニーをどうやってすり合わせていくのか。
多分、それが作曲に初めて取り組む人が最初につまづくところなのではないかなと私は思っています。
もう一つが編曲。
コード進行は編曲、アレンジにも大きく関わっていて、アレンジによっては大枠は同じでも微妙に違うコードやコード進行を乗せることもできます。それがロックのハードな曲調を支えたりシティポップのエモい雰囲気を醸し出すこともあります。
これもかなりの飛躍がある。
どちらもある程度の数を学習しないと到達できないと思います。
私も作曲をしている以上、最低限のコード理論やコード進行はいつの間にか染み付いてます。今まで感覚でやっていたのを最近は改めて勉強し直してもいますので、それなりの解説もできるかなとは思います。
でも、もし理論そのものを勉強したいなら有名ブロガーやプロの解説を読んだほうが間違いない。
理論なので誰が書いても教えてもそんな内容は変わらんです。ネットに無料でいくらでも転がってます。取っ付きやすさや相性はあるにしても。
というわけでコードやコード進行は別の回にまわします。というかやらないかも。
コードをまったく知らない方は、記事中に[A]とか[C#m]とかのアルファベットやCメジャーやハ長調なんかが出てきますが、そういうハーモニーの名前なんだ、程度の認識でとりあえず良いです。

あと、もう一つの飛躍があると思っていてそれは理論ではない部分。
「作曲したい」という想いとそれを表現する方法の擦り合わせ。
こっちもボリュームが大き過ぎる、というか個人個人で違ってくるので一つの記事でどうこうレベルではないです。
すでに第0回【自己紹介編】からじわじわは書いてきているのですが、これは私の個人的な作曲法でもあるので、合う合わないがどうしても出てくると思います。
長ったらしいですがこのnoteを継続して読んでいただくなり、作品をご視聴いただくしかない。役に立たないかもしれませんが、弊害にはならないと思います。興味が無ければ無視すれば良いだけなので。
理論のほうはそうは参りませんので有名ブロガーやプロの解説でしっかり勉強してください。

今回私が書くのは二つ。
一つ目は
印象的なフレーズを印象的たらしめるもの
についてです。
たぶんその仕組みがわからないと、いくらオサレなコード進行を真似て作曲しても、のっぺり退屈ソングか一貫性の無い音羅列ソングになると思います。
二つ目が、ハーモニーの最低限の基礎になる
キーとルート音
についてです。
こちらは理論をすでにある程度知っている方には退屈ですので読み飛ばしてもらって良いです。前回と逆に後半に理論を持ってきました。
が、二つ項目があるということは……今回もめっちゃ長い!てかまたしても最長更新。約20000字。
やっぱりもっと複数回に分けるべきだったわ。では始めますか……。

サビはなぜサビだと分かる?

以前、構成が大切というお話を書きました。
わかりやすいのがABサビ構成でしたね。
三幕構成で考えると作りやすく伝わりやすいという話でした。
そのなかで、Aメロ、Bメロ、サビをハッキリさせないと全体がボンヤリしちゃうよ、というような事も述べました。
じゃあどうやってハッキリさせるの?
というかむしろ
なんでその部分がメロorサビだと誰でもわかるの?
って疑問じゃないですか?

サビの一般的な解釈はあるけれど……

フレーズからの作曲のお話なので、歌モノ曲の2大主役・「フレーズ」と「歌詞」のうち、そのフレーズの中でも一番の魅せどころである「サビ」についてまずは考えていきたいと思います。
サビのフレーズが決まれば他のメロのフレーズも作りやすくなるはずです。物語のオチがわかっていれば、そこに向けてどういうパートを揃えていくかという構成の担当分野に落とし込めます。

感覚派の方でも大体最初に思い付くのは印象的なサビだと思います。今回はそれを活かしていくお話です。
理論派の方はすでに理解しているかもしれませんので駄文になるかもしれません。改めて言語化・視覚化できるかの一考察になればと思います。
初めて作曲する方やいつも途中で行き詰まってしまう方は「そういう風に考えているのか」というキッカケの一つとして知っていただければ幸いです。知っていれば使うべきリズムやメロディーの選択肢が絞られますし、のちのコードやコード進行も身に付きやすくなると思います。
またわざと理論からはみ出すアクロバティックなこともできるようになるかもしれません。
あと、あくまで私個人の作曲法の一考察ですので合わない方には合わない可能性もあります。こればっかりはどうしようもないので参考程度にされてください。好みを無理強いする気はありません。

さてさて、
サビの一般的な音としての特徴を調べてみたところ、
高音を使う、
ロングトーン(長い音)を使う、
リフレイン(繰り返し)を使う、
の3つが良いサビの基本的な要素だと、だいたいどのサイトや解説にも書いてありました。音楽プロデューサーの亀田誠二さんの分析だそうです。

そして、その曲中で一番印象的で盛り上がる部分であるとされています。
では、なぜ印象的で盛り上がるのか。
それは高音でロングトーンでリフレインの要素が入っているから……?
では高音でロングトーンでリフレインの要素が入っていないと印象的にならなくて盛り上がらなくて、つまり、サビとは感じられないのか……。

ふーむ、この曲↓、サビに高音もロングトーンも使ってねぇ。
むしろBメロ後半が最高音とロングトーン。なのにサビがサビだと分かる。良いかどうかは置いといても。

【コンセプト編】でも紹介した24曲目『なつメロわをん』(東北イタコ)。
キーはCメジャー(ハ長調)で、サビ頭のメロディーの音程は「ドレミファソラシド」の全部8分音符。つまりピアノの白い鍵盤を「ド」から同じリズムで並べただけ。リズムキープができれば誰でもできる。
(ついでに歌詞も「ドレミファソラシド」。あと遊び心でテンポをBPM=123(ワン・トゥー・スリー)にしてます。ふふっ。)
ここだけ聞くと高音もロングトーンも無い。ドレミファソラシドなんて今さら特別メロディアスでもないし、いったいどこにサビ要素があるのやら。
リフレインって定義も何をどの程度なのか。
メロも一部や全部を繰り返している曲はいくらでもありますよね。この曲もAメロ全体を2回とそれぞれ似たリズムを2小節ごとに繰り返しています。
一応サビも全体として見ると2回似た感じで繰り返してます。あとは「なんて今さら」「なんて思って」がメロディーは違いますがリズムが同じです。

あと補足的な定義で出てきたのは、
サビとAメロBメロとを差別化する、
サビで転調する、
サビは安定感のあるコードを使う、
サビ中のリフレインで少しだけ変化させたコードを使う、
とか。
転調も差別化ですし、サビが安定ならメロは不安定ってことで差別化に含めて良いかなと思います。で、安定で変化で……ん?どういうことだ?
うーん、しかもこれだけだと前回の「ずんだの歌」もとい『Paddle to the Town』みたいに(そろそろずん子に怒られそう)、サビから始まる頭サビ曲だとイントロかメロが始まるまではサビかメロか分からないということでは?


転調やコードの安定不安定に関しても一般的には転調しない曲のほうが多いし、メロとサビが同じコードの曲もザラにある。自作品でもコレとか。↓

こちらは【ツール編】のギタープラグインでも紹介した、20曲目『ギュゲス』(めろう&セブン)。
この曲、イントロ、Aメロ、サビ、ギターソロが全部同じコード進行。
[G#m E B F#]
をずーっと弾いてます。(厳密には最後にG音が一拍だけ入っていますが大枠は同じです。)
サビの最後ワンフレーズで[E F#]が追加されていますが、リフレインでの変化ではないです。
Bメロはまったく違うかというと、
[E B F# G#m E B F# D#7]。
よく見るとサビ直前1回だけの[D#7]までは、他のパートと同じ[G#m E B F#]のコード進行を[E]から始めて倍の長さで弾いているという違いしかない。頭のコードを入れ替えるだけでBメロだと分かる。どうも最後の[D#7]とやらもクセモノっぽい。この1個だけが不安定な響きです。
あと、メロよりサビのほうがリズミカルな早口で、特別高音でもロングでもない。その代わりリズムもメロディーも短いフレーズのリフレインがやたら多い。それだけでサビって判別できるものなのか?

上2つのサビの共通点がリフレインだったので、サビにはリフレインが絶対条件なのかなと思ったらコレとか。↓

17曲目『みずゆき』(めろう)。
サビ中に同じメロディーのリフレイン無し。短いリズムだけは何種類か似たものが繰り返しているかなぁ。
ただしBメロで転調してサビでAメロと同じ調に戻っているので、もう一回転調はしていることになる。
AメロBメロに比べればサビの方がゆっくりながら徐々に高音域に進んでいる。でも最高音を含む高音域が一番多いのはピアノソロ後のCメロ。Cメロを大サビとも呼ぶのでサビっちゃサビだけど、ラストサビに繋ぐ起承転結の「転」みたいなもので曲全体の中心ではない。

他も挙げられますが、
サビには絶対この要素がある!
と言える共通点は自分の作品ですら特定できないようでした。
さて、いよいよサビがなぜサビだと分かるのかが分からなくなってきた。

全部サビ曲?

さらに最近のボカロ曲には全部サビみたいなものも多いようです。あっちこっちに印象的な聞かせどころがある。
パートごとに拍子を変えたり転調したりと目まぐるしい。
へ~、とは思いますが私の作曲法的にはもやっとする。基本的にはABサビ構成曲が多いですので。
それぞれのフレーズを膨らませて別の曲が作れそうですし、折角のカッコ良かったり可愛かったりするフレーズがお互いを邪魔しているように感じることもあります。
登場人物全員が主役のアクション映画のダイジェストを見ているような……。
この辺は好みや流行りなので、どうこう言うつもりはありません。ABサビ構成だってここ数十年の歴史しかないです。
ただし、目新しいだけでなくある程度多くの人々に受け入れられて定着しないと使える理論として昇華しにくいとは思います。
マリトッツォじゃなくてティラミスくらいにならないと。

最初からサビを設けない物語風の曲もアリですが、作曲を始めたばかりの方には私はオススメしません。それぞれのフレーズを印象的に作れる力量がないと結局全体がボンヤリすると思います。
でもたまにめちゃくちゃストーリーや歌詞自体が面白い曲もあって、それが歌モノの良いところ。足りないところを補い合えるわけです。
この場合、歌詞からの作曲なのでフレーズからの作曲をテーマにした今回の記事とはまた別のお話になります。

フレーズと構成・コンセプトは切り離せない

サビとは何なのかいろいろ調べたり考えたりしてみましたが、サビの要素だけを取り出しても、コレ!と言えるだけの絶対的な定義は見つけられませんでした。
ただ共通点として見つけたのは、サビとそうでない部分とは、リズム、メロディー、ハーモニーのうち少なくともどれか一つくらいは明らかに変化している必要はありそうです。
当たり前っちゃ当たり前ですが。
全部サビ曲でも、テンポが変わる、リズムが変わる、音域が変わる、転調する、など変化はあります。
反対に、サビの全部の要素をメロとはまったく違うものにする必要も無いとも分かりました。明らかにどこかが変化したと分かれば良いレベル。同じコード進行なんてザラにあります。
その中でもサビについていくつか気づいた点をピックアップしてみます。

まず特別ロングトーンが無ければ短いリズムのリフレインがあることが多い。音程は変わってもリズムは同じとか、音程も同じ、つまりメロディーすら同じこともあります。
『ずんだの』……、
『ギュゲス』なんかはこのパターンですね。
AメロBメロもリフレインしていますが、リズム自体がゆっくりです。
さらにBメロはコードの変化もゆっくりになっている。
その分サビの短いリフレインが強調されて印象づけているようです。

それから前回リズムが重要だと書きましたが、リズム要素のうち、メロディーの最初の拍の入り方にもメロとサビで違いがあったりします。
コード進行(ハーモニー)は普通1小節目から次のコードに移っていくものですが、1~2拍手前や裏拍に当たる音符からサビのメロディーの1音目が始まっていたり、逆に遅れて入っていたりというのが非常に多い。
逆に1拍目と1小節目がピッタリのサビは安定感があるサビになるようです。『なつメロわをん』や『Paddle to the Town』!はサビ頭がピッタリ1小節目です。
サビで手前から入るパターンなら、反対にメロのほうで1小節目にぴったり合わせていたり遅れて入っていたりと、各パートのメロディーの1音目の入口にズレがあって、それプラス、音程の違いがあることでパートの区切りが分かりやすくなっているようです。
私の曲だとサビとメロの両方でメロディーの1音目が1小節目の頭にぴったり合っているものは、10曲目『あの頃君と見てた夢は』(NEUTRINOガールズ)しかありませんでした↓。しかもこれはABサビ構成ではないです。
メロとサビの明らかな違いと言えば高音域に上がっていく展開の速さ。
メロの「あの頃~」の上がり方と、サビの「Melody is like~」の上がり方に圧倒的な差があります。

もうひとつは22曲目『花のある部屋』(ナクモ)。メロとサビ両方とも共通で、ピッタリではなく1拍遅れで入っています。こちらもABサビ構成ではありません。
そして同じくメロの「君が隠した~」の上がり方と、サビの「大好きなメロディーと~」の音程の上がり方の差が大きいです。

上記2曲とも全体的な安定感と何となく懐かしいような感じがありますね。でもメロとサビのメロディーの音程の上がり方で大きな差を設けている。そしてサビの要素である最高音がちゃんと入っている。
フレーズの頭をパートごとにズラすか揃えるかも印象に影響を与えているようです。

そしてこれは後で書きますが、サビの最後のコードはキー(調)と同じものに戻っています。コード進行がわかってくると当たり前になってくるのですが、曲の最後はほぼ間違いなく最初のキーに戻ります。1音上がり等の転調であれば、キーが上がった後の最初のキーに戻っています。
つまりキーと同じコードが一番安定感のあるコードということです。
(色々調べてみると例外はあると言えばありました。民謡などでよく見られるようです。)
『ギュゲス』の場合、ワンフレーズだけ見た場合のコード進行は[G#m E B F#]の繰り返しでしたが、サビ最後の[E F#]の後ちゃんと頭の[G#m]に戻っています。反対にBメロの最後が[D#7]で不安定な感じである分、その後が一番盛り上がるサビになるんだな!と感じさせます。
補足の定義であったコードの安定不安定の差別化がこのことですね。

それから、これはアレンジに当たりますがサビが一番楽器数が多く、音が分厚く組まれていることも多いです。やっぱり各要素はどこか絡んでいます。
頭サビ曲だと逆にボーカルを際立たせるために楽器を極端に少なくしたりというのがよく見られます。
また落ちサビと呼ばれるボーカルとわずかな楽器だけで演奏されるサビも同じく、その後のラストサビを際立たせるための変化のひとつだと思われます。
そのラストサビ直前に1~2小節だけブレイクと呼ばれる、ドラムフィル(ドコドコドンみたいなやつ)やグリッサンド(タララララン!とピアノなどで一気に駆け上がったり駆け下りたりするやつ)などを挟んでタメを演出したりも散見されます。
私もちょいちょい使いがちなテクなので、封印してみるとラストサビの印象付けが難しく感じます。
最新曲はその落ちサビ+ブレイク1音上り転調の合わせ技です。

さらに8分の8拍子で数えた場合、Aメロ「た/とえば~」、Bメロ「ま/っかに~」は手前の小節の8拍目からメロディーが始まっていて、それに対してサビは手前の小節の7拍目から「あなた~」のメロディーが始まります。7~8拍目の2拍中に3音入れて前にのめり込んでいるのが、感情表現に繋がっているのかなと思います。楽譜上のサビ1小節目は「~を愛してる」の部分からです。

このへんまではテクニック的な要素なので、色々ブログ等を読み比べてみるとちゃんと解説されているものも多いようでした。
こののめり込みは「シンコペーション」等の用語で説明されていると思います。改めて分析してみると私の曲はやたらシンコペーションが多いので、いずれ改めて記事にするかもしれません。

そしてただのテクニックではない、私の作曲法的に一番重要だと思っているのは、
サビと呼ばれる部分は曲のコンセプトが前面に出ている、
ということです。
コンセプトをしっかり表現できるのであれば、必ずしも高音域ではなく低音域に下がることもある。ロングトーンではなく早口になることもある。前に進んでいく表現のためにリフレイン入れないこともある。
テクニックも知った上で、コンセプトを伝えるためにわざと使わないという選択肢を取ることもできるというのを頭の片隅に置いておいても良いかなと思います。

『なつメロわをん』のイタコ姉さまなんて、せっかくBメロの高音ロングトーンで盛り上がったのに、サビで恥ずかしくなって麦わら帽子深くかぶってしゃがんじゃってるかもしれません。
というかそのつもりで意図的にBメロに最高音とロングトーンを持ってくるというコンセプトに合わせた構成とそこから生まれたBメロのフレーズだったというネタバレ。
サビ1小節目1音目始まりですべて8分音符の「ドレミファソラシド」という単純なサビが先に決まっていたので、それに対比させる形であとから高音ロングBメロを作ったというわけでした。
その代わりBメロは不安定なコードを使い、最低音から入ることでBメロ頭からの盛り上がりを避けています。
作った順番としてサビ→Bメロ→Aメロと膨らませていっています。三幕構成のオチがわかっていれば他のフレーズも作りやすい。
ちなみにそのBメロの最低音周辺はサイコロ作曲、最高音は公式推奨音域から引っ張ってきていて、それを修正して最終形になっています。
それとAメロは元気なイメージの女性ボーカルが歌うヒットソング2曲を合体させてから膨らませています。パクリと言われないように伏せますが。
そしてサビはなんの変哲もない「ドレミファソラシド」。でもこの続きも元気なイメージの女性ボーカルが歌う別のヒットソング2曲からインスピレーションを得ています。
ってことは自力で作曲した部分ってほとんど無いってことでは……、ゲフンゲフン。
コツがわかっていればこんなことも出来るよ、という意地悪な例でした。

あと他にサビがサビだと分かりやすいのは、コンセプトを一番に体現しているタイトルキーワードをサビの歌詞に取り入れている曲ですね。2大主役はやっぱり切り離して考えにくい。
歌詞から作曲はまた別の回に書きますが軽く触れておきます。
前回までの「だるまさん~」で歌詞の文字数がフレーズと密接に関係していると分かりました。つまりタイトルやキーワードの文字数が決まっていればおのずとサビのフレーズも絞られてくるということです。その単語が自然に聞こえる音符やリズムは限られてくるので、そこに割り当てられている感じです。
「リンダリンダ~♪」が「りんだるまりんだるま~♪」だったら歌いにくいったりゃありゃしない。歌えなくはないけど。
サビの頭っからタイトルフレーズを連呼したり、音程差やリズム差が大きいメロディアスなフレーズを充てておく。またはサビの最後でタイトルやキーワードを高音ロングトーンにする。その効果で印象的になる。
このへんは心理学用語のザイオンス効果や、初頭効果/親近効果などと関係しているかもしれません。気になる方はお調べくださいませ。え?うっせぇわ?

そしてコレも当たり前でその分重要だと思うのですが、コンセプトを表現するためには極端に変化させ過ぎず曲全体としての一貫性が感じられる構成にしないと、折角の伝えたい部分がどこか分からず逆にもやっとする可能性があるということです。全部は変えない。
全部サビ曲や物語風曲が個人的にもやっとするのはそのせいだと思っています。
AメロはバラードでBメロはロックでサビはポップスで全部リズムも音域もキーも違う……みたいなことは、意図的な狙いが無い限りあまりやらないほうがいいんじゃないかなと思います。視聴者おいてけぼりになる。
リズムであればテンポや拍子、裏拍表拍、スウィングなどのノリを合わせる、
メロディーであれば音符長や音程の運びにメロとサビで同じパターンを登場させる、
ハーモニーであれば調やコード進行を合わせる、など。転調するにしても心地良く聞こえるお決まり選択肢があります。
どこかは統一感を残しておいたり基準となる元のフレーズやパートに戻ってくるようにしていないと一曲として成り立ちません。全部変えるということは違う曲ということです。

結論、私が考えるサビとは
コンセプトを伝えるために構成上で「対比」させたフレーズのまとまり
です。
なのでサビ要素だけを取り出しても見えてこない。対比ですので。
対比させるテクニックとして高音&ロングトーン&リフレインなどを理解しておく意味はもちろんあると思います。最低限の英単語を覚えるようなものです。
でも、伝えたい!という部分が無ければ英単語帳を丸暗記するようなもので、実際に使えるようにならないと思います。

部分を細かく分けてその基本的な要素から全体を分析する考え方を還元主義と言いますが、要素をいくら調べても全体の総和としての振る舞いが見えてこない場合があるという、ちょっと批判的な意味でも使われます。科学の発展は還元主義のおかげでもあるのですが、例えば人間の身体を細胞や原子にまで分解して一個一個調べても、その人個人の性格や考えていることまでわかるものではありませんね。
理論を勉強するには還元主義的な視点が必要ですが、作曲するためには曲全体を見る視点と、伝えたい事は何なのかを決めてそのための要素を選ぶ意志が必要だと思います。

と、ここまで書いてそれでも頭サビ曲の場合すぐにサビだと分かるには充分な説明にはなりませんが。
ひょっとしたら高低音差やリズミカルな要素の少ない曲の場合、最初はサビだと分かっていないのかもしれません。曲をある程度通して聞くことで初めて対比に気づいているだけなのかも。
ABサビ構成自体、日本国内での数十年の歴史しかありませんし、これからもっと研究されるんじゃないかなと思います。
先に挙げたWikipediaの「サビ」の項目から具体的な記事や論文等にも飛べます。その他音大以外でも音楽に関する心理学や脳科学を研究されている論文は(閲覧制限はありますが)ネットにゴロゴロ転がっていますので、よほど興味がある方はどうぞ。
(一個の記事を書くためにどれだけ調べモノしてるんだか。まぁ好きなので。)

私が回りくどくコンセプトやら構成やらの話を先にしてきたのは、フレーズだけを先に作ってそれを切り貼りする作曲法を避けるためです。曲全体の一貫性と流れを見失って木を見て森を見ず状態になります。
歌詞やアレンジでカバーできなくもないですが、一般に受け入れられるには時間がかかるか、そもそも広くは受け入れられないと思います。
例えるなら、RPGゲームのダンジョンで「曲」という森の中に「コンセプト」という宝物が詰まった「サビ」がある。そこへたどり着くための「構成」という道しるべが、初めてプレイする人でも分かるように用意されている。時には宝物の直前に「不安定コード」というボスモンスターがいる。そしてちゃんと最後には宝物そのものを見つけられるように、木々の根本に埋めておくのではなく、遺跡の高台(高音)や森のひらけた場所(ロングトーン)にドンを置いておく。そうでないと樹海に迷い込んだまま出られなくなる無理ゲーか、玄人好みの鬼畜ゲーになります。そういうのが好きな方もいらっしゃるのでそこは好みですね。
サビから始まる曲はその宝物の一部をチラ見せしてダンジョンに誘う上手いやり口かもです。
フレーズだけ切り貼り曲は脱出感・解決感が無いので、もやっとボンヤリした曲で終わってしまうと思います。

キーとルート音

さて、フレーズについての考え方の具体例は自作品でいくつか挙げましたが、その素となるハーモニーのさらに最低限の素については少し書いておきます。
どうやら自分自身リズム重視派なので、コードにそこまで興味無いのです。
コード作曲2割程度なので。
それでも小手先テクより先に覚えておかないといけない、基礎の基礎です。
知ってる方は「次回に向けて」の項目の後半まで飛ばしてください。退屈です。私も退屈ですが、自分の勉強がてらです。私自身も含め初心者向けも兼ねてますので。

キー(調)について

サビの最後は安定感のあるコードに戻ると述べましたが、それが
キー(調)
です。
ハ長調とかイ短調とかは義務教育でもチラッと聞いたことがあると思います。
長調明るいとかホップな感じの曲、短調暗いとかクールな感じの曲になるというのも義務教育レベルで知っていると思います。調べたところ小学校6年生の指導要綱?なのかな。
DTMの世界では調ではなくて英語のキーで呼ぶことのほうが一般的ですので、キーで統一していきます。
長調はメジャーキー、短調はマイナーキーと言います。

音階はイタリア語で「ドレミファソラシ」、日本語で「ハニホヘトイロハ」、英語で「CDEFGAB」に相当します。
なんで「イ」や「A」からやないねん、と言われましても、音楽の取り決めなのでこれは覚えてください。
そして音階には「♯(シャープ)」があります。(「♯」の打ち込みが面倒なので「#(イゲタ)」で代用させていただきます。よく見るとナナメ棒の縦横が違う。)
「#」はピアノの黒鍵の音です。
「C・D・E・F・G・A・B」と言っていますが、本当は黒鍵も含めた
「C・C#・D・D#・E・F・F#・G・G#・A・A#・B」の12音階あります。
#の反対の「♭」で書くと
「C・D♭・D・E♭・E・F・G♭・G・A♭・A・B♭・B」。
「C#」と「D♭」は同じ音です。
それぞれの音階の間1個が「半音」、2個が「全音」。
なので、キーもどの音階から始めるかで12種類あります。
「Cメジャーキー・C#メジャーキー・Dメジャーキー・D#メジャーキー……」ということです。
日本語なら「ハ長調・嬰ハ長調・ニ長調・嬰ニ長調……」。「嬰」が「#」、「変」が「♭」です。DTMじゃまず使わねぇ。
このあたりまではさすがにわかると思います。

で、この先の詳しい解説や入門書はいくらでもありますので、私の記事では書きません。
ただ、ここまでが理解できていないと、以降どんな解説にも出てくるスケールやコード・コード進行がすべて謎の呪文に見えてきます。英語のアルファベットや日本語の50音順みたいなものです。
識字率が低い国や中世のようにちゃんとした教育が無い時代だと、しゃべれても書けない・読めない人がいるように、音楽なら鼻歌は歌えても楽譜にしたりDAWに打ち込んだりできないということです。
習ったはずですが多分ほとんどの方は小学校の音楽の授業なんて忘れていると思いますので、さすがに自力で勉強し直すしかないです。

フレーズからの作曲の話なので、フレーズに関する話に戻しましょう。
メロディーを作る時はこのキーの音階の音を基本的に使います
メジャーキーならメジャーの音階、マイナーキーならマイナーの音階から音程を選びます。
音階以外の音を使うと音を外したような、いわゆる音痴っぽい感じになります。絶対に使ってはいけないというわけではなく、たま~にエモい感じを出したりするのには使えたりする音もありますが、基本はキーの音階上の音です。
フレーズを作る際はこのキーを掴めていないと、そこに一致する音階を選べません。DAWが音痴だと困ります。人間は音痴でも構いません。理論的に決まっている音階なのでそこから選ぶだけです。
逆に言うとキーの音階上に適当な音符を当てはめてやればそれだけでフレーズができます。

余談ですが、少々歌の上手い人でもカラオケで音が取れない時があります。
それはこのキーが掴めていない時です。
カラオケのリモコンで「原曲-3」とか表示されていたりするのは、元の曲からマイナス3音程、つまり♭3つ分音程を下げていますよ、という意味です。プロアーティストは声高い人多いですから。
女性ボーカル曲を男性が歌ったりするときなどもキーを上げ下げして歌いやすい音域に調整したりしますね。
歌の上手い人は最初はキーを掴めなくて戸惑っても、途中からでも歌えます。これができる人は鼻歌録音の時のベース音も自然と掴めます。
音痴の方はできないかというと、訓練でかなり掴めるようになるらしいのでどうやら後天的な能力のようです。
まずは自分の歌を録音して聞き比べてみると良いらしいです。音を聴き取れていないという入力の問題ではなく出力の問題らしいです。頭ではわかってんだけど身体が……という状態?
ボイトレの先生ではないのでこれ以上詳しくはないです。

で戻すと、私がサイコロ作曲する時は、このキーの音階上に適当に音符を当てはめています。さらにその中から特にピッタリのものを探していきますが、それが「スケール」という音階の並び方です。
感覚派の方は多分、これが自然と身に付いています。謎の呪文ままでも作曲できます。私もスケールを逐一確認しているわけではないですが、それでもしっくりこない時はやっぱりスケールと突き合わせたりします。
じゃあ感覚派でないとモノにできないか、というとそんなことは無くて、メジャーが明るくマイナーが暗く感じるといったことは生物学的に人間誰しも感じ取れるもののようです。ですので自然と身に付きます。ご心配なく。
要は周波数という振動を感じ取る能力ですので、耳が聞こえない上に触覚も一切無いとかでない限り身体で感じ取れるようです。あとは慣れですね。後天的な練習や学習でより鋭敏になっていくということのようです。
一応、絶対音感ではなく相対音感としてです。その話はまた別の機会に。

さて、コードにもメジャーとマイナーがあって、先に何度も出てきた
[C]とか[C#m]とかはメジャーコードとマイナーコードの違いです。
メジャーの方は省略されてます。たまに「major」と書かれてたり、大文字の「M」や「△(三角)」が登場するコードもあります。統一しろよ、とは思いますが慣習的にバラバラです。不親切。
当然、メジャーコードの方が明るい響きで、マイナーコードは暗い響きに感じます。
ほとんどの曲はこのわずかなメジャーコードとマイナーコードで構成されています。(たまに変態コードがあるけど、それが沼。)
少ない曲なら2~3種類のコード、大抵5~6種程度。どんなに多くても何十個もコードを使うことはまず無いです。エモくてキャッチ―でハードでしっとりで全部転調とかの音羅列ソングにしない限り。
世の楽曲の大半はこの5~6種程度のコードの順列組み合わせで出来ています。それがコード進行です。選択肢少なッ!(エモい雰囲気の曲だと増えがちなので注意。)
順列組み合わせなのでいくらでも増やせるっちゃ増やせますが、心地良く聞こえるお決まりパターンはある程度絞られます。「コード進行」で調べたら出てくるので解説しません、ハイ。
それがキーの12音階分あるということです。
この5~6種程度のコード進行を半音全音……と12音階分ズラしていくだけで大半の楽曲に対応できます。
つまり1個覚えたらいい。
いやいや、メジャーキーの場合とマイナーキーの場合の組み合わせの最低2種は覚えないといけないでしょ、と思うかもしれませんが、実はメジャーキーとマイナーキーは音階の最初の音程が違うだけです。
例えば
CメジャーキーとAマイナーキーは基本的に同じ音程と同じコード
が使えます。
Cメジャーの音階は「C・D・E・F・G・A・B」。要は誰でも知ってる「ドレミファソラシ」です。
対してAマイナーキーの音階は基本的に「A・B・C・D・E・F・G」です。
「C」から始まるか「A」から始まるかの違いです。
Aマイナーで数えた時、3番目の「C」が半音下がっていてそれがマイナーキーの暗い物悲しい感じを出しています。
そして大抵使うと言っていた主な5~6種のコードは、
CメジャーキーでもAマイナーキーでも[C][Dm][Em][F][G][Am]と、これの派生形のコードです。
(あと「Bm♭5」を含め7つありますが、使う機会は非常に少ないです。)
基本的にと書いているのには注意点があって、上に挙げた「A・B・C・D・E・F・G」というマイナーキーは「ナチュラルマイナー」というやつで、他に「ハーモニックマイナー」「メロディックマイナー」というちょっとだけ後半の音階に変化のあるパターンがあります。作りたい曲調によっては、特にエモい感じの曲だとこのへんも勉強していかないといけません。使うコードも変わってきます。[Em]が[E7]になったりします。
これも調べれば出てくるので解説は省きます。マジ沼に落ちかける。

始めて作曲する場合や音が取れなくて行き詰る場合は、Cメジャーキー曲からトライすることをオススメします。なぜならピアノの白鍵だけで作れるからです。
ピアノやギターの練習をする際も同様にCメジャーキーから始めるのが指が疲れなくて良いです。
(まぁギターコードの[F]でつまづく方が多いですが。それを乗り越えたら大抵のコードは弾けるようになります。)
DAW上で作曲する際も、Cメジャーが一番作りやすい。
なぜならノートを入力すべき場所が基本的にピアノロールの白鍵上だからです。あとで音域が合わないなぁという時にズラすのも、DAW上なら全選択してまとめて移動するだけです。
(これもギターだと運指が変わるのでちょっと面倒だったりしますが。)

背景を見ると、ちゃんと左側の白鍵/黒鍵と、
ピアノロールの白/黒(薄いグレー/濃いグレー)が一致しています。
今制作中の曲は黒鍵が入っています。キモイコード進行なので真似しないほうがいい……。

ルート音について

もう一つ覚えておかないといけないのが、
ルート音
です。
「ルート」=「根っこ」という意味ですが、今まで出てきたコード名の頭の大文字アルファベット、つまり音階部分のことです。
[C](Cメジャーコード)ならルート音は「C」、[C#m](Cシャープマイナーコード)ならルート音は「C#」。
で?、と思うかもしれませんが、このルート音がベースラインを作る時にヒジョーに重要になります。
つまりハーモニーを支える大前提です。

コードを勉強していくと色んな音程の組み合わせが出てきます。
[C](Cメジャーコード)なら「C・E・G」(ド・ミ・ソ)の組み合わせですが、おそらく現時点では読み方すら分からない方もいらっしゃる[CMm7]とか[Csus4]とか[Cadd9]とか今後いろんな[C〇〇]コードが登場しても、すべてルート音は[C]です。
そしてそのコードの構成音の中で一番低い音です。
コードの構成音からこのルート音を外してしまうと、他の音を揃えてもそのコードの響きに聞こえないくらい重要です。
つまりルート音が無いとコードが成り立ちません。コードが成り立たないということはハーモニーが成り立ちません。リズム、メロディー、ハーモニーのうち一つがすっぽり抜け落ちるということなので、めちゃ重要。鼻歌録音がうなり声に逆戻りです。
そして前回、リズムは主にドラムスが、ハーモニーは主にベースが重要な役割を果たしていて、そこにボーカルのメロディーが乗ることで曲の骨格がほぼ出来上がると述べたように、ベースがルート音を奏でることで曲の骨格がガチっと決まります
うねうねベースが動いたりする曲であっても、コード進行の頭の1音目はルート音であることがほとんどです。あとのうねうね動いている部分はそのコードの構成音だったりします。
ハードなロックソングなんかだと、このルート音のみを「ベンベンベンベン……」と弾き続けていたりします。ドラムスとこのベースのルート音のみでほぼ土台が決まるので、下手に動かすとハードロックのハードさが薄れてメロディアスなロックになったりします。

はじめにの所で書いた私の作曲の順番で、コード2割、楽器3割、ボーカル5割と言ったうちの楽器3割の内訳はベースギターからが多いです。
ふつうのギターが弾けるとベースギターも最低限弾けます。テクニック的な練習は別に必要ですが、オクターブ下の音が出て弦の数が基本的に4本という点を除けばふつうのギターもベースギターも構造はほぼ同じです。要はギターコードの一番低い音がルート音になります。
ちなみに私はベースギターの現物は持っていないので、運指の確認などはぶっ壊れたエレキギターで代用しています。ピックアップが壊れてて音が鳴らない&鳴っても近所迷惑なので十分。
すでにDAWが楽器なので、ホントに確認用って感じです。

次回に向けて

これは次回以降に繋がる話なのですが、ルート音をベース音として使わない場合があるという、上の話とは真逆の事例が出てきます。
たぶん、コードについてある程度理解してからでないと何のことやらさっぱりな可能性があります。なんとコードの構成音すら使わない場合もある。なのにハーモニーとして成り立つ。
オサレなコード進行だけを真似て作曲しても、なんだかエモい感じにならなかったり落ち着きの無い曲になる時は、このコードの最低音=ルート音=ベース音縛りが悪さをしている時があります。
コードを勉強する前に普通この話はしないと思うのですが、これを先に頭の片隅に置いておいたほうが最終的にワンランク上の作曲を目指す時に絶対に活きてくると私は思っています。
むしろリズムとベース音が揃わない限りメロディーも活きてこない。うなり鼻歌止まりです。
現物の楽器でピアニストであれば左手でベース音を学べるのですんなり身に付くと思いますが、ギタリストはバンドをやるなりしてベーシストと出逢わないと、その重要性に気づきにくような気がします。私も学生時代に軽音サークルに参加していなかったら、今に繋がっていないような気がします。

ルート音ではないベース音はすでに今まで例で挙げてきた自作品でも使っていますが、別に1つ例題曲を挙げておきます。この曲がシンプルなベースラインから作った曲だからです。↓

12曲目『Allegretta“アレグレッタ“』(めろう)。
2番のAメロのベースはうねうね動いていますが、それはあとから作ったものです。
ついで1番のコード譜も載せておきます。

パートごとに色分けしています。視覚化。

8分の8拍子、テンポはBPM=117です。
試しにDAWでベース音をルート音と同じものを打ち込んでみると、おそらく雰囲気が変わることに気づくと思います。
Aメロやサビ前半のコード進行
[E B C#m G#m]
のルート音と実際に聞こえるベース音が違うはずです。
そしてこのコード進行、Aメロとサビがまったく同じ上に、前回登場したあらゆるヒットソングの中でも超王道進行「カノン進行」が基本になっています。CメジャーではなくEメジャー曲なので一歩先の難易度ですが、楽器ソロ以外転調が無いのでベースギターだけでも弾き語りできる程度です。
(他の私の曲が転調や変則コードが多くて例に出しにくい(汗))

次回はこの曲の分析を試みてみようと思います。
【分析編】とでもしておきます。
今までの記事で【コンセプト】【構成】【フレーズ 】と進んできましたので、それがどういう風に繋がっているのか、それぞれがどのように活かされているのかを改めて自分の曲で確認してみたいと思います。
【歌詞】や【アレンジ】も切り離しにくい部分があるので少し触れながら進めます。
(実は今回やろうとしたけどボリュームが大き過ぎて断念しました。執筆は計画的に……。)
私自身感覚的に無意識にやっていた部分が、結構詰め込まれているなと分析してみて気づいた次第です。言語化するとめっちゃおもろい。

結び&次回予告

ということで【作曲編 フレーズからの作曲】を一旦ここで止めておきたいと思います。
本当はコードとコード進行、シンコペーションの他、経過音刺繍音、スケールなどなど、色々理論やテクニック的なものもあるのですが、そのへんは探せば出てくるし私も勉強しながらなので、誰しも作曲を続けていくならいずれぶち当たると思います。
コード理論だけでもトニック/ドミナント/サブドミナントやらカデンツやら代理コードやら転回形やらアホみたいにいっぱい理論があります。
でもぶち当たったらぶち当たった時に勉強すれば良いと思います。
少なくとも簡単な弾き語りなりDAWでのコピーなりをやってからですよ。一言も口を開かずに英語がペラペラになるわけないのと同じです。
AIシンガーだって何十曲何百曲も学習しているんですから、パートナーであるPが学習しない道理はありません。そんなPとはAIシンガーも組みたくないでしょうね。
それと目標は作曲して発表することであって、理論博士になることではないはずです。理論の勉強はほどほどに。私は作曲も理論もどっちも好きなので勉強もしてしまいますが。しかも音楽以外の分野の脇道にすぐ逸れる。道草と寄り道ばかりです。
それも含めて自分だなぁと。このnoteも自分の作品の一部になっています。

作曲!作曲!と、どんな解説や入門書もズラズラ~っと「かんたんなりろん」を紹介してくれますが、そこには「曲に乗せて伝えたいことがあるんだけど、そのためにどんな表現を選べばいいの?」が無いです。歌モノのもう一つの主役である歌詞との繋がりも無い。(あるかもしれないのであったらゴメンナサイ。)
そういうニーズの方が多いのでしょうね。料理レシピサイトのク○クパ○ドみたいな。もちろん参考にするのが悪いわけではないですが、そこには「彼氏の誕生日に喜んでもらうレシピ」なんてのがそのまま載ってるわけじゃない。でも「スタミナ料理」とか「サプライズケーキ」とかのレシピはあるわけで、どれを選んでいくのかは自分で考えないといけない。せめて傾向とか知りたいですよね。私の記事はそういうポジションであればいいなと思います。
コンセプト、構成、フレーズ、歌詞、アレンジ……そしてその歌を歌うシンガー、動画サイトに投稿するなら映像や動画まで含めて一つの作品であると考える私にとって「かんたんなりろん」じゃ全然足りないです。何も作っていないのと同じ。
(私の場合、広告宣伝が抜けてますがね。)
あ~!そして記事のボリュームがどんどん増えていく~!
『アレグレッタ』ではないですが冒険はどこまで続くのやら。

ということで、次回はすでに書いた通り『アレグレッタ』の分析をやってみます。
そこから私の作曲法の一端を感じていただければと思います。

それでは次回もお楽しみに。
Thank you for reading!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?