ネコ
【ほぼ毎日ほぼ即興ほぼ頭からっぽ台本】
お題:ネコ
執筆時間:25分
舞台上は公園。子どもたちが遊んでいる。花壇、小便小僧、ブランコ、ベンチなどがある。なお、ネコ役は言葉を発することはない。
ネコが舞台上に現れる。もちろん四足歩行だ。
ネコ (わたしはネコである。などとネコが思っていると思っているのだろうか人間は。ははは。)
夕焼けこやけ が流れ始める。遊んでいた子どもたちが帰っていく。
ネコ (それにしても、どうしてこの音が鳴ると、子供は帰っていくのだろうか。不思議で仕方がない。私たちネコはいちいちそんなものに反応したりはしないはずだ。……いや、どうだろうか。飼われているネコというのは、そうではないかもしれぬ。食料を与えてくれる絶対的な存在がいるが故に、その合図を覚え、その音が鳴るとひとおもいに駆け出して行くのかもしれぬ。わたしはそんなネコになりたくはない。しかし、どうだろうか。そうやって一生楽をして生きるのも、悪くはないのではないか。いや、いやいや……それはわたしのプライドが許さないというか、子どもをうめない体にされてしまったら困る。わたしがお母さんからうまれてきたように、わたしの子どもだってわたしからうまれてくるべきなのだ。交尾をしない選択肢はないし、子どもをうまない選択肢などない。それなのに、人間というのは……)
気づくと薄暗くなっていた。静かに、虫の音が聞こえる。
ネコは少し横になる。すると、中学生の男女が公園へ入ってくる。ベンチに座る。
ネコ (この時間になると、よく来るものだ、人間の男女が……)
男 なあ。
女 ん?
男 キスしていい?
ネコ (交尾をするにはやや早いと言ったところか。)
女 えー。
男 いい?
女 いい、けど……
男 じゃ、じゃあ……
男、女にキスをする。長いキス。少しずつ唇が動き、深くなる。
ネコ (ふむ……求愛行動と言ったところか……いつも来るもう少し年のとった人間は、いつもすぐ衣類を脱ぎ始めるものだが……)
女 んっ……。
男、女の肩を触り、その下へ伸ばそうとする。
女 それは、ちょっと……
男 ダメ……?
女 まだ、なんか、恥ずかしい、し……ここでは、なんていうか、ほら……
男 誰もいないじゃん。
女 そう、だけど……ほら、ネコちゃんも、いるし……
ネコ (そうだ、見てるぞ。だからなんだというのだ。)
男 ネコに見られて何になるんだよ。
ネコ (まったくだ。)
女 でも、なんか……ごめん。
男 ちぇ、わかったよ……
ネコ (おんな、わたしはお前を守ってやったと言ってもいい。飯をくれ。)
ネコ、女に近づく。
女 ネコちゃん。
男 なんだよこいつ。
女 可愛いじゃん。よーしよし。
ネコ (にゃーお、と言えば飯をくれるだろうか。)
女 うふふ、鳴いてる。
ネコ (早く飯をくれ。)
男 もう帰ろうぜ。
女 え、でも……
男 どうせ触らせてくれねぇんだろ。ちぇ。キスだけか。
女 え、そんな言い方……
ネコ (体目当てというやつじゃな。まあ体目当てじゃないオスネコはいないかもしれんが。)
男 はあ?
女 だって……
男 なんだよ?
女 いや、別に……
男 なんもねぇなら言うなよ!
ネコ (おう、うるさくてびっくりしたわい……)
女 ……そんな怒らなくても。ごめんねネコちゃん。びっくりさせちゃって。
男 はあ……もういいわ。俺ネコとセックスするわ。
女 え?
ネコ (な、なんじゃいこいつ……)
男 なあネコ、いいだろ?
ネコ (出来ないじゃろうに。)
男 はい、じゃあ、おちんちん、入れますねー。
男、ネコを倒し、押さえつける。女は笑いながらよだれが止まらなくなる。小便小僧は失禁する。ブランコがひとりでに揺れる。男は叫び、ネコを脱がせようとする。すると男の股間は破裂し、血が吹き出す。もうネコは何も考えていない。
溶暗。