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人事制度は誰にお願いするのが良いの?


人事制度設計を支援するプレーヤーの分類

まず、どのようなプレーヤーがいるかを考えてみたいと思いますが、その前に検討する企業がエンタープライズ企業とスタートアップや中小企業なのかで変わってくるのでここではスタートアップや中小企業のお客様の前提で整理します。
お客様が人事制度を導入したいとお考えになった際、経営者の方々は経営者仲間やVCのキャピタリストにまずご相談されるケースが多いように思われます。最近はVCでも色々な支援を拡充しているので無償であればお願いしたいと思うケースは割と多いようです。とはいえ、全てのVCさんに人事のプロがいるわけではないため支援を受けられない場合、人事専門のブティック系コンサルティング会社や人事専門のフリーランス・複業者紹介サービスを利用されています(私自身、これらの企業を経由してお仕事を依頼いただくことも多いです)。あとは自力でスポットコンサルなどを活用しながら構築する方も見られます。整理すると以下の分類になります。

  1. VCのサポートがある場合

    • VCの支援を受ける

  2. VCのサポートがない場合

    • HRに特化したブティック系コンサルティング会社を探す

    • 人材紹介会社にフリーランス・複業のHRプロフェッショナルを紹介してもらう

    • スポットコンサルに聞いてみる

    • タレントマネジメントなどのSaaS事業者に問い合わせる

    • 本を読みながら自走してみる

VCの支援を受ける

無償でサポートしてくれるに越したことはないと思います。ただ、詳細設計、移行、運用までは支援してくれないのである程度自分たちで作りあげる必要が出てきます。なので最終的には自分たちで運用しきる覚悟があるのであれば良い選択肢になります。1点、リスクがあるとすればVCさんはそもそもリターンを期待しているわけなので、人事制度に関するディスカッションをする中でこの会社(経営者)だと成長させるのは難しいなと思わせてしまう可能性がある点でしょうか。と言うのも、人事制度に関するディスカッションは割と経営者の考えや人間性が如実に出てくるところもあり、キャピタリストからこの人はマネジメント向いていないなと見切られる恐れもゼロではないからです。

HR特化のブティック系コンサルティング会社

いわゆる総合コンサルティング会社はそもそも費用的にエンタープライズ企業でない限りは合わないので必然的にこの選択肢に落ち着いてきます。Googleで検索したり、人からの紹介など様々なルートからたどり着いているようです。規模は様々ですが、数人の優秀なコンサルタントを軸に展開している企業が多い印象です。お客様に合わせた形で設計する企業が多いと思いますので丁寧にプロジェクトを進めてくれるのではないかと思います。難点は費用がそれでも高い(3-5百万円ぐらいはかかる)点です。あと成果物を納品した後の運用はアドバイザリーがせいぜいなので運用そのものをお任せすることはほぼできないとお考えいただいた方が良いです。つまり、自分たちで運用するべくお金をかけてでも自社にフィットする人事制度を精度高く設計したい場合に向いています。

人材紹介会社経由のフリーランス・複業人事

人材紹介会社が介在する場合にはよっぽどのところではなければそこまでひどいHRプロフェッショナルを紹介されることはないと思われます。フリーランスであれば割と運用の面まで含めて柔軟に対応してくれます。複業人事の場合は工数に制約があったり、本業が突発的に多忙になった時の対応力はあまり期待できないです。またケイパビリティの面で言うと、コンサルティングプロジェクトの経験がある人とない人ではアウトプットの出てきやすさが変わってくる傾向があります。色々な経験も知識も豊富なものの、それを整理してわかりやすく示しながら議論をリードすることが苦手な方もいらっしゃるのでアウトプットをどの程度求めていくのかをよく見極めておいた方が良いです。

スポットコンサルの活用

ここに顧問サービスなども含めてしまっても良いかもしれません。ランダムにスポットで壁打ちなど行いながら相談に乗ってくれるような人たちの活用になります。この場合はアウトプットを準備しながらその内容を壁打ちしてもらいながら整理していくスキルが自分たちに求められてきます。なのである程度ご自身に人事制度に関する知識があり、ピンポイントで最新の状況や運用上のナレッジを得たいときには有効に機能します。最適なスポットコンサルを探し出す目利きが必要になる面からも上級者の方に向いたサービスと位置付けられると思います。

HR Tech 事業者

Googleで人事制度で検索をかけると多くのプロダクトの広告が出てくると思います。タレントマネジメントのクラウドサービスを提供している事業者が多いのですが、評価システムの機能が含まれていることから人事制度の導入をきっかけにタレントマネジメントシステムも導入することを見込んで広告を出しています。これらの事業者が人事制度を設計する場合、コンサルタントを自社で抱えているケースもあればコンサルティングファームとアライアンスを組んでいるケースもあります。いずれにしても人事制度設計はコンサルティングサービスとなり、結果的にはコンサルティング会社同様に数百万円がかかるようです。日本では、目標設定シートのExcelでの運用が難しかったのか、ワークフローとしての評価システムを導入するケースが多くみられたためなぜか評価システムの機能が充実することになりました。ただ、近年の人事制度の傾向で言うと評価自体はシンプルに行うケースが増えてきており、そこまで充実した機能はいらないとも言えます。運用が複雑な混み入った評価制度やその先のタレントマネジメントシステムのことまで見据えて検討するのであれば選択肢としてはあるのかもしれません。ただ、数百人規模になってからでも遅くはないです。

本などの公知情報で自走

最近はコンサルティングファームから独立されてご自身の会社で人事制度設計を行なっている企業も増えています。これらの会社がプロモーション的な面も含めて人事制度設計のノウハウを書籍で紹介しているケースも増えてきました。設計自体はおそらくこれらの書籍を参照していけばある程度はできるのではないかと思います。ただ、問題は運用のノウハウは書籍上だけだとなかなか体感しにくい点です。10人満たない会社であれば勿論、とりあえず試してみると言う手もあるように思いますが、20人を超えてくるとある程度運用がこなれた状態に持っていった方が良いかもしれません。実際に度々、20人を超えたタイミングで経営者の方が自分で設計してみたが運用できずにおり、見直したいとの相談を受けるのですが、経営者の方は当然お忙しいわけでご自身で運用することはかなり難しいです。またフリーランスの方などに運用だけを依頼しようと思っても独自性の高いロジックが読み取れないままだと結局は受けてもらえない可能性が高いです。テスト的にやってみるのは勿論ありだと思いますが、ある程度の従業員数になったタイミングでは外部あるいは自社のHRプロフェッショナルに依頼していくことになります。

結局、どうする?

経営者ご自身の人事制度に関する知見に関する自信と工数的な覚悟をお持ちであれば最新の動向を書籍やスポットコンサルティングを駆使して設計、運用していくことは難しくはないかもしれません。ただ、いずれにしても人事制度の運用はメンバーを抱えているMGRクラスが趣旨を理解した上で運用できているかどうかでうまくいくかどうかは決まってきます。MGRクラスに落とし込むところも含めてご自身でやれるかどうかは工数的な負荷を踏まえると難易度は高いです。その意味では、人材紹介会社経由のフリーランスを活用しながら人事制度の設計段階は経営陣全員でディスカッションしながら進め、移行・導入・運用のフェーズでは徐々にMGR陣を巻き込んでいく形でプロジェクトを運営できるとスムーズにMGRクラスに任せていくことができます。

フリーランスを見極める時のポイント

当然ながら人事制度に関する運用を含めた知識・経験が求められるのですが、それに加えて必要なのはベースとなるロジカルシンキング、ドキュメンテーション、ファシリテーションなどのコミュニケーションスキルになります。このスキルがあった方がお客様に合わせて柔軟に対応してくれると思います。+αであると良いのはHR Techを活用してきているかどうかです。1点、念のため確認しておいた方が良い要件としてはスタートアップやベンチャー企業の成長過程(数十名から数百名の規模)を人事として経験してきているかどうかでしょうか。この経験があると各種労務トラブルの経験もお持ちのはずなので人事制度から派生した諸問題の発生可能性を見極めてくれたりもします。ざっくり整理するとコンサルティングケイパビリティ×スタートアップ・ベンチャー企業での人事責任者経験×HR Techに関する導入経験がベストに思えます。