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【新作お知らせ】梅香

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2020年9月の記事一覧

【新作】可惜夜(あたらよ) 20200925

小さな森に、今日も彼女はひとり暮らしています。 時々、友達になった動物たちが会いに来たり。 時々、新しい景色を発見したり。 毎日は静かに、けれど彩り豊かに過ぎてゆきます。 ある日彼女は薪を集めて森の中を歩いていました。 陽が沈む頃には薪は沢山集められたけれど、何となくまだ外に居たくて鼻歌を歌いながら。 適当なメロディ、思いつくままの音を、思いつくままの高さで。 森が少し開けた場所に出ました。 そういえばこの辺りは春になると蝶が飛んでいたわ。 春の景色を思い出しながら星の光

【新作】フリュールの贈りもの 20200920

小さな森にひとり、小さな小屋で妖精が暮らしています。 彼女には友人が沢山います。 決して頻繁には会わないし言葉もあまり交わさないけれど、とても大切な、森の同居人が。 ある日、小さく小屋の扉がノックされました。 客人が訪ねてくるのはとても珍しいことです。 彼女の小さな友人たちは、普段は木の実やお花をこっそりと小屋の前に置いてゆくだけですから。 彼女がそれに気付いて扉を開けた時は、彼らは遠くからこちらをそっと見ているか、もう姿がないことも珍しくありません。 扉を開けると、川に

【新作】朝露と清爽 20200912

小さな森の奥、小さな小屋に妖精は住んでいます。 彼女は今日は何を見つけたのでしょうか。 * 雨上がりの朝、彼女はいつもより早く目を覚ましました。 今日は休日、のんびり二度寝をしようかと思ったのですが、窓の外がきらきらと煌めいている気がして、早朝散歩を思いつきました。 小さな小屋の扉を開けると、さぁっと少しひんやりした風が流れてきました。 一歩足を踏み出すと、朝露に濡れた芝生が音を立てます。 煌めていた窓の外は小屋の裏手でした。 頭上からの鳥のさえずりとともに、彼女はそち

【新作】灯点し頃 20200902

小さな森に、妖精が住んでいます。 彼女はひとり、小さな小屋で暮らしていました。 ある日、夕焼けを見ました。 森で暮らしていれば、毎日夕焼けは目にします。 けれどその日の色は、彼女の心を打つものでした。 太陽は森の向こうに沈んでいて、橙色がほんのり空に残っています。 真上の空は濃紺を濃くし始めていました。 その二色の間は、綺麗な紫色をしていました。 彼女は思いました。 自分はひとりで暮らしているけれど、今この瞬間はわたししかこの場所からこの景色を見ていないけれど、美しさを残