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おれに善をなすなら、ベイビー(ひとに対して為せ)

今夜 Bob Dylan の詩


  イエスのとりこ

あいつのことを言いふらせ、
あんたに迷いをもたらすやつ
あんたが必要とするものを自ら断ってしまった男
みんなと一緒に彼のことを陰でくすくす笑えばいい
おまえ以前はどうだったと、通りすがりに野次ってやれ

あいつはイエスのとりこになった
骨の髄まで憎むといい
あんたの方が豊かだぜ
石のハートを持ってるからな

あいつが道を歩いてきたら話をやめて祈ってやろう
おまえなんかつぶれてしまえ、さぞかし胸がすっきりするぜ
迷信にはもう心を動かさないってさ

あいつはイエスのとりこになった
骨の髄まで憎むといい
あんたの方が豊かだぜ
石のハートを持ってるからな

あんたが恐がる鞭を見てビクともしないっていうんだから
きっと耳が遠いんだ、きっと頭がのろいんだ
検査してみりゃ分かるだろうが、
現実が見えてないんだ
あんたが仕える王様に何の敬意も持たないんだから


あいつは負け犬、常識知らず
他人の金で自分を利することも知らない
一途なことを恐れない、みんなに微笑みかけたりしない
冗談もおとぎ話もしない、カッコヨサなど微塵もない

救済などは笑い飛ばして、オリンピックの競技にいそしめ
人間死ねばもといたところに戻るだけと思えばいいさ
しかし人生いろいろあった、母胎を出てからあんたも変わった
本当の自分自身に何が起こった? 他ならぬ誰に捕らえられたんだ?

あいつはイエスのとりこになった
骨の髄まで憎むといい
あんたの方が豊かだぜ
石のハートを持ってるからな



   イン・ザ・サマータイム

きみの前にいられたのは一時間の間だったか
それとも一日だったのか、もう分からない
太陽の沈まぬところ、木々は低く垂れ込めて
光る海はやわらかかった
きみが感心してくれたのは、ぼくのしたこと?
しなかったこと? それとも秘密にしたことか?
きみが見ているすべてをうち捨てようとして
ぼくは頭が変になったか

イン・ザ・サマータイム、ああ、夏の日よ
イン・ザ・サマータイム、きみが一緒だった夏

ぼくの鼓動ときみの血潮
鉄をくぐり、泥を横切り、進んでいくと
警告が書いてあった、ノアに洪水を告げたそれが
みんなを解放したわけだ
馬鹿者たちは人の罪を笑いものにして
ぼくらの信を得ようとしたけど
ぼくの側にはきみがいた
関心のない身内の誰より近しいひと

イン・ザ・サマータイム、ああ、夏の日よ
イン・ザ・サマータイム、きみが一緒だった夏

わけのわからん連中に引っかき回されたんだ
貧しいやつらめ、恥を知れ
だが過去の暗い思い出も
未来のかがやきとは比べられない
きみから得た宝物はなくしていない
いまではぼくの一部だし、大切に守ってきたよ
墓の中へも持っていって
永遠に旅立つときにも持っていよう

イン・ザ・サマータイム、ああ、夏の日よ
イン・ザ・サマータイム、きみが一緒だった夏


詩 Bob Dylan / 訳 佐藤良明


心正しき者などいない、ひとりも


スロー・トレイン
人が動物すべてを名づけた







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