夜の駅の乗換口で号泣した話
桜はほとんどが葉っぱになって、昼間は暑いくらいだった4月の真ん中。
駅の乗換口で一人、声を出して泣いた。
その日は朝から病院にいた。
足の指が赤く腫れて、ついに皮膚の中に膿が溜まってきた。歩くのも辛いくらい痛くて、自然治癒は難しそうだったので観念して皮膚科を受診した。1時間ほど待って呼ばれたら、膿の溜まった部分に針を刺して排膿処置をされた。診察室を出るとき、ずいぶん痛みが軽減していて気持ちまで少し軽くなった気がした。医療ってすごい。
そういえば、待っている間に仕事の電話がかかってきて、調べればわかるようなことを聞かれた上になぜか電波が悪くて強い日差しのなか大声で話さなければならなかったのが辛かった。
病院が終わるとそのまま職場に向かう。夜に別件で仕事があったことを、夕方まで忘れていた。予定の20時に間に合うように職場を出た。帰路につく人々とすれ違いながら駅に向かった。道沿いにあった桜の木から大量の花びらが舞っていて妙に綺麗だった。そういえば今朝、医師に「あまり歩かないようにね」と言われたんだったなぁと思いながら早足で歩く。
その別件というのは面接で、レンタル会議室を借りていた。面接開始時間ちょうどに予約していたことに気づき、直前でレンタル開始時間を早める連絡をした。私はそういうところがダメなんだった。普通は20時開始なら19時30分から部屋を取っておくんだと思う。
電車を乗り換えるまであと2駅のところで届いたメッセージ。
―辞退します。(本当はもっと長文だった)
肩の力が抜けた。直前過ぎて会議室はキャンセルできないし、とんぼ返りってことのことか。面接に同席する上司にも連絡した。まぁ仕方ない。予定より早く帰れるからまぁいいか。
電車を降りると職場の人から電話がきた。また別件だ。一通り話が終わって、今さっき起きたことを話した。ちょっと聞いてくださいよ〜!と軽く愚痴を言うだけのつもりが、気付いたら喉の奥が熱くなって涙が堪えられなくなった。
もう、いっぱいいっぱいなこと。地元に帰りたいこと。引っ越して慣れない土地、慣れない暮らし、慣れない仕事。新しいだらけの毎日がつらいこと。
帰っておいで、心配だよと言われて、駅の乗換口で声を出して泣いてしまった。涙と鼻水でマスクの中はぐちゃぐちゃになった。
ひとしきり泣いて、少し落ち着いて、電話を切った。またいつでも電話しておいでと言われたことが救いだった。
折り返しの電車を待っているとき、このまま飛び込んだらと考えたりした。でも別に死にたくはなかった。こんなに早い塊が通過するのに何の柵もないなんて危なすぎるなぁとか考えながら、ボロボロの顔のままホームに立っていた。
電車に乗ってさっきのことを思い出しながら明日のことを考えていたらまた泣けてきた。潤んだ赤い目で電車に乗っている会社員風の女が泣いていたの、どう思われていたんだろう。
帰り道のスーパーに寄ったら、苺が半額になっていた。全部違う品種を3パック買った。・・・のだけど、翌日の夜に食べようとしたら1パックはカビが生えて無惨な姿になっていた。悲しい。農家の人ごめんなさい。
帰路でまた仕事の連絡が来た。
翌日は6時起きだった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?