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魔戒英妖 ソロモンの淫極③



「死後どうなるかを分かった上で、ソロモンは我々魔王達を従えた。彼は哀れだが、同情は無用」

首をふる悪魔。


ソロモンは限界まで悪魔の肉茎を引き抜かれ叩きつけられている。
口からは声にならない悲鳴を上げ続けながら、その身に悪魔の得物を長々と埋め込まれ、筋の張った肉体が噎(む)せ込んでいる。


「お主、名前は何と言う」

「保田 昇(やすだ しょう)」

悪魔に名前を教えて良いものだったっけと、遅れて疑問がやってきた。


「昇よ、何をしにここへ来た」


「人間界に戻りたいんだ……」


「戻り方を知りたいのか。ならばソロモンに聞くがよい。ソロモンは博識の王だ。何でも知っている」


当のソロモンは折り曲げられた腰を背後からズンズン穿たれている。
前の腕は身体全体を懸命に支えようとしているが、余りにも悪魔の力が強いようで、身体全体を揺さぶられている。
子供の身体を、大人が揺り動かす様にされている。
性的な揺り籠状態だ。


尻はガクガクと震え、色んな汗が吹き出ている。





促されるままに、恐る恐るソロモン王に近付いて見る。

ソロモンは首を項垂れて、ひどくボロボロの状態でいる。

歩み寄っている間もドチュドチュと突き倒され、背後の撃茎と撃針によって火花散る衝撃を受けているソロモンは、痛烈な一撃が体に食い込む度に背筋がいななきながらも、ゆっくりと歩み寄り影を伸ばす俺に、僅かながら顔を上げようとしていた。

髪に隠れた目の奥、口元から、掠れ切った声を呼吸の様に漏らす。
「おま……え……名はなんと……」

彼の口元に自分の耳を寄せ、近付かないと分からない声だ。

「保田昇、です」

ゼヒュー、ゼヒューとした喘ぐ呼吸とドライな中身の抜けた声で問われ、自分の名前を返した。

顔を完全に上げたソロモンは、意外だった。



てっきり正気の抜け落ちた朽ちた表情と、焦点の覚束ないぼんやりとした瞳をしているかに思えたソロモンだったが。
見上げた顔ははっきりとした意思を宿らせた強い目つきだった。

「ヤスダ……ショウ……」

ソロモンは一度俺の名前を反芻すると、何がしかの呪文を小さく聞こえにくい声量で唱え始めている。
これはやばい、と思った。
ソロモンの瞳は妖しげにらんらんと異彩を集光し輝き出す。




瞳の色によって、察した。

あのインターネットのWebページは、ソロモン王が渾身の魔術で作り出した、自分自身を救うための罠だったのだと。

堕ちても、数々の魔術を使いこなせる賢明の王だ。

そして「名前」をこの人に掴まれるのは、非常にやばいことなのだ。
呪術をかけられてしまう。慌てふためく。


だが時は既に遅かった──────。




…………何事も起こらない様なほんの数分の見つめあい後、いつの間にか目の前にいる俺の顔がスックと立ち上がった。

「成る程、帰り方は分かりました。ソロモン王よ感謝する」

待ってくれ!

どこに行くんだ!

声が出ない!

叫びたくても声が掠れて出ない!

ま、ま、ま、待ってくれ!


一度だけ俺を振り返って、ソロモン王は地べたに這う俺にこう声をふりかけた。
「汝に救済の幸いあらんことを────」



…………こうして魂を交換された俺は地獄に取り残され、ソロモンの姿で、ソロモンの身代わりに、毎日悪魔の大王達に変わるがわる肛穴を打たれている。







魔戒英妖 ソロモンの淫極
~完~

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