幽幻狂鬼!⑤
ある妖気を感じる部屋の前についた。
腐っても道士の弟子、これだけ強い妖気ならば感じ取れる。
インは扉を開いた。
開けるなり何者かの大きい腕が掴みかかってきた!
インの腕を掴み、吸い込まれる様に中へと引き摺り込んでいく。
「ウワァああ、ああああーっ!!」
握力が強い。
「クォッ!!」
ドガンッ
レンガ状の壁に叩きつけられ倒れた。
棚が壊れ埃の煙が舞う。
掴んだ手は人のものより大きく毛むくじゃらだった。
自分を襲った大きな黒い影の正体が、薄暗がりの小さな灯りが灯るだけの部屋の中、晴れていく。
2mは優に越す怪猿だった。
怪猿は物言わず、黙って掴む箇所を手から離し、新たにインの片足を掴んでいく。
足を思い切り開かせられ、ズボンを剥ぎ取られた。
肌がすべて露となる。小さく項垂れた陰茎も、丸くて柔らかい睾丸も、後孔も、全て丸見えとなった。
「はぁーっ!?」
インは驚く。足首を掴まれた片足は宙に持ち上げられ、体は逆さになり身動きが出来ない。
茶色い毛の生えた人間の男の指より太い指は、インの足の頼りない陰茎を挟む。
人間がする様に人差し指、中指と、親指の三本で力を入れずスルスルと扱き始めた。
「あっそんなっ!」
猿の手のひら側には毛が生えておらず、ツルツルした厚めの皮の感触がする。萎びた陰茎を皮ごとズルンズルン擦り上げてくる。
「くわっ……!うんぉお!」
怪猿は怪光を野生の目に宿らせ、人間の陰茎を弄んでいる。
その内太い親指が後孔にまで突き刺された。
獣の指が肉の中を奥深く埋め込まれていく。
「あっ……ヅぅーーーーーーッ!?」
堪らずインは悲鳴をあげた。
一目見て高価と分かる絵画が壁にずらっと並ぶ廊下。
思聡もまた、ある一つの意味ありげな部屋を見つけた。立派な両面開きの扉だ。彫刻がなされ、芸術品の様に美しい。
だが、妙な気配がする。扉から発せられる空気に別異なる姿が被さる。
何かが、いる。
思聡は壁の影に隠れながら、片側の扉を開いた。ギィ……と開く。
すぐには顔を出さず、気配を確かめてから覗き見、部屋の風景には怪しい事柄が何も無いのを確かめてから七星剣を手にし足を踏み入れる。
しぃんとした室内。ゴージャスなインテリア。幾何学模様の壁紙。クリスタルのシャンデリアが見下ろす。寝室の様だ。
ひゅう……ひゅう……ひゅう……
呼吸の様な音がする。
部屋の隅に、薄透明な垂れ幕で隠れた更に奥のスペースがあることに気付いた。
慎重になり足を踏み入れる。
本棚が並ぶ書斎スペース。
そして、机の前に椅子。椅子に座る髪の毛のまばらな男の背中。
ひゅう……ひゅう……ひゅう……
デザイナーが作り出した線の芸術であるフォルム。美しい輝きを放つステンレス作りの椅子の背後に立つ。
思聡は七星剣を逆手に持ち変える。
腕を交差させ、剣先は背中を目掛ける!
…………打つかに思えた剣先はピタリと止まった。
回転する椅子をこちらに向けた。
ガウンを来た男の精魂枯れ果てたミイラが座っているだけだった。
富豪の夫だ。
「やはり、あの女は」
ひゅう……ひゅう……ひゅう……
天井の小窓が空いている。
「あっくぉ……!!」
人間の男より大きい猿の手のひらに、人差し指と中指でVの字に陰茎を挟まれ擦られながら、太い親指を後孔に抜き差しされているインの姿がそこにいた。
逆さまに釣り下げられ頭に血が昇る。
ぼってりした腹は、重力のおかげで地に向かって肉が逃げる。
陰茎は指に擦り転がされ、穴には無遠慮に硬い指が沈み抜かれる。
「はっぐぉっ……!」
猿は表情が無い。
野生の眼光を輝かせたまま三本の指を使い、インの秘められた肌を弄んでいた。
インは目だけを左右にギョロつかせ
(なんだ……?何をしたいんだ……!何が目的だ……!?)
と後孔の違和感に耐えながら必死に逆さにされ血が昇る頭を巡らせた。
バンッ
扉が開け放たれ、「(零リン)!!」と思聡の唱えが響いた!
人差し指と中指を立て、他の指で拳を作り、力を込めて立てた指の先を妖猿に向ける。
室内の気流が、いきなり屋外にいる様にブワッと舞いあがった。
妖猿の体が火花散って小爆発する。
妖猿は飛び上がり、インを離して、天井にヤモリの様にくっつき、そのまま天井を走って逃げた。
インが下半身丸裸のまま床に尻餅をつきポカンとする。
思聡同士がインの落ちてあるズボンを掴み取り、頭からブン投げる。
「気をつけろイン」
思聡は険しい顔をしてインに向かい頷き告げる。
「あの……逃げた妖猿。恐らく男色だ」
しばらく呆けていたインは師匠の思わぬ言葉に我に帰った。
「ゲェ────────────────!!!!」
空高い見張り台。広大な城が、八方見渡せる。
見張りの窓は狭く、一部しか見えないが、内部は天井高くかなり広い。
四阿と似た中央に向かってピラミッド状になっている奥行きある天井の作りだ。
そこでは透明の2mは優に越す霊が、職務を全うする男を襲っていた。
透明な巨軀の霊体が見張りの男の体を浮かせ背後から貫く。
女の膣より深くまで収納するはずの男の後孔でも、とてつもない超長竿は、その先端しか体内に収められないでいる。
首を締める様に掴まれ、超長竿に空中に持ち上げられる形で浮かされている。
下半身だけ衣服を脱がされた足はバタバタと空中をかく。
重力と体を揺らす少しの震動が、内臓に長竿をめり込ませ苦しめさせる。
超長竿を生やした腰が引かれ、直腸の入り口近くまで抜けていかれ、体に楽が訪れ見張りの男は安堵した。
首を俯き息を抜いたところを無慈悲にも思い切り抉り貫かれる。
「ぎィっ…………ぎあぁあああーーーーッ!!」
一体何が起こっているかわからない。
いきなり後ろから視えぬものに体を掴まれ、空中に持ち上げられ、後ろから勢いよく串刺しにされているのだ。
「や゛っ、やめてくれぇーーーーぇっ!!ああっ!!!」
引き抜く時は緩速でありながら、体内を割って迫り来る時は甚だ苛烈に襲い肉を裂いて進んでくる。生きていたら中々経験することはない、振り切った痛みの数値。
「ぁああっーー!!!!ぎぐっ」
首を更に押さえられて言葉も出せなくなる。
まるで銅鑼(ドラ)を叩く、素早い手数の連続の突き上げが来た。
「ぐっぐっぐっぐっぐっ」
足がピクピク引きつる。
後ろの者にとって言葉が出ないのは面白くないのか、首からふっと一つの腕が離されたのがわかった。
見張りの頭には依然疑問符が浮かぶ。
空を足掻く両脚を、膝を立て山型に折り曲げさせてくる。
空中にて開脚させられた左足の膝裏に太い腕を回され、姿の視えない巨躯は思い切り突き上げてくる!
一方。暖かな客間では。
「そんなとこ触られるのは……初めてなんです……、……うっ……っ!」
ソファーに寝かされたラウは、ズボンを剥ぎ取られ、下肢に指を差し込まれていた。
既に女の手によって、前の屹立する管からは一回白いのが飛び散っていて、全身が暖まり弛緩している。
「…………はぁ…………っ…………はうっ……はぁっ…………」
女の指に前立腺をがっちり握られている。
シワをより分けられ入られた指に、やわやわとした粘膜の中の、一点の感触の違う部分を優しく刺激されている。
蟻の戸渡りをまわし撫でられながらくちくちくちと。
「……はぅぅっ!!…………んぅぅうっ!!…………」
微笑しながら前立腺を二指で擦り上げる女。
イキはしないものの、ビクンビクンビクンッと、ラウの体がよじれた。
両脚が力無くグタリと更に開かれる。狭いソファーからはみ出る膝の屈折。
「私に身を任せて……ゆるまったこちらに欲しいのね?願いを叶えてあげますわ……」
女は赤く塗られた唇の間から舌舐めずりをジュルリとしながら、自分のチャイナドレスのスカートの中に手を入れ、足の間で何やら素早く前後に動かしている。
高級な絹の隙間から覗くものは。
見ると男根の様に見えるものを手で擦りしこっているではないか。それもかなり太い。
球状の先は肥大して大きく粘液に照りつけ光り、先端と軸を繋ぐはみ出した部分は立派に屋根を広げている。
入れられたら引っかかってたまらないだろう。
「特異体質でね。生まれつき男の皆さんが持つ持ち物と似たものが生えていますの」
そのままぐったりと目を瞑るラウは、自分が何をされるのかわかっているようないないような、わかってしまうと抵抗したい気持ちも生まれてしまうから必死で誤魔化しねじ伏せていた。
「なあに……おっきい陰核とでも思ってくれたらいいわ……」
そう囁いてスリスリスリスリと、ウェットな先端を、ラウのへこんだ部分に当てて擦り付けてきた。
大き過ぎる陰核は、ラウの足の間を突き破ってきた。
「……っ!!?」
三分の一も入っていないのに、ラウは痛みに片目を閉じ口を大きく開いた。
「はぁっ!!イッ!!いッ!!」
生えているものの根元を押さえ、止まった点から馴染ませる様にまた前後に女は動かす。
自分の中に確かに入っていく。ラウは息が止まり呻いた。
開いてはすぐ閉じゆく針の穴ほど小さい入り口をゴリッとした大きな先端と太いエラにこじ開けられ、火が灯るくらいの痛烈さに後穴が悲鳴をあげる。
潤滑をされていない箇所がメリメリと割り開かれ、腰が逃げるのを女の腰が追いかける。
「ふふふ……」
仰反るラウに女がまた顔を寄せて長い首を伸ばしキスをしてこようとする。
唇が唇にあたりその瞬間ズッ!!と極太の陰核が奥まで到着した。
「ーっっ!!!!」
呼吸が一瞬止まる。ハァハァハァ。
赤ん坊はスヤスヤと隣のソファーに眠っている。
痛みに目尻が潤みながらキスを受け入れようとしたその時。
「……ーーーーッ!!」
女が何かに気付いて突然大きな陰核は引き抜かれた。引き抜かれた穴と先端の間を淫らな涎が散る。
「ラウ!」
大きな音を立て扉がバタンと開く。
上半身をあげたラウが見たのは見知った二人の顔。
「何をやってるんだラウ!」
乗り込んだ師とインの姿に、慌てて丸裸になっていた下半身にズボンを履くラウ。
女がスカートを整えキッと睨む。
「邪魔をして。せっかくこの男からも精を吸い上げてやろうとしたのに」
女は妖しく笑い、スックと立ち上がると両腕を持ち上げ交差させた。
「先生!今までどこへ!」
ズボンを直しながら立ち上がるラウ。
「インが男色の妖猿にとっ捕まっていた」
思聡は女に視線と七星剣を向け、顔色変えずいつもの調子で説明する。
赤ん坊を抱きかかえながら、ラウは思わず吹き出す。
「ほら見ろ!おれを嘲笑った罰だ!」
男幽霊の件を根に持ち、片腕でインを指指して笑う。インはばつが悪そうだ。
急に室内に飾られていた観葉植物の鉢植えが二つ、思聡の方向へ襲い掛かってくる。
思聡が二指を立て、印を構える。
「零(リン)!!」
鉢植えがバカンと宙に爆発して、思聡らに辿り着けず割れた。
ホゥ……と、女が、やるじゃない、とでもいうように眉を吊り、顎を上げる。
「おまえも笑ってる場合ではないぞラウ」
「へ?」
思聡の目線の先にある女の額。
目を凝らしてよく見たらわかる。
額から皮が、ほんの数㎝程だが浮いて、少し剥がれかかっている。
「画皮(がび)の邪術だ。こいつが被っているのは恐らくあの縊鬼(いっき)の女の顔の皮だろう!」
そういうと思聡は七星剣を手から空中に投げ飛ばし、自分達を見て笑っている女の額を思い切り打つ!
「ァアーッ!!」
額を直撃され体が弾かれる。背後の壁に叩きつけられよろめく女。
顔の皮が半分、額から下がりめくれる。
片膝をつき転がる七星剣を拾い上げながら、ラウはその顔を見上げ確認する。
痛みにうめく声。
「ぅっう。……そうとも!!正体は俺様よ!!!」
女はいきなり男の声に変声する。
髪の毛をかき分けこめかみに指を突き刺し血に濡れた長い針を抜き取ると、皮をむしり掴み美しかった顔の女の皮は剥ぎ取られ、赤い髪を振り乱す。
その顔は、中国獅子舞とよく似た、四角い顔に目がギョロンとし舌を剥き出しにした、妖怪の大顔へと変貌を遂げた。
ラウは目が点となり叫んだ。
「 ゲ ェ
─────────────────ッっっっ!!!!」
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