面白い未来の作り方17「欠点という武器」

国民的人気マンガ『スラムダンク』の作者の井上雄彦さんは、
面白いマンガを描く秘訣を聞かれて、こう答えていました。

「登場人物すべてに、必ずひとつ欠点をつくること」

なんでもできるオールマイティな人間は絶対につくらないのだとか。例えば、主人公・桜木花道は才能はあるが経験がない。そのライバル・流川楓はテクニックはスペシャルで天才的ですが体力がなく、すぐに「はーはー」となってしまいます。

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宮城リョータは、すばしっこくて敏捷性はピカイチですが、身長が低くバスケでは圧倒的に不利。キャプテンの赤木剛憲は、センスもあり、リーダーシップもあり、情熱も、申し分ないんですが……

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いかんせん、顔がゴリラに似ています(笑)。
必ず登場人物に欠点をつくる。これが漫画を面白くするコツなのだとか。

そして、登場人物どころか、本人に大きな欠点があるのが、これまた国民的人気マンガ『俺の空』『サラリーマン金太郎』を描かれた本宮ひろ志さんです。
本宮さんは、漫画家にもかかわらず、なんと絵が下手なのだそうです。本人がそう言っているのですから間違いないです!(笑)。下手だからこそ、絵をアシスタントに思い切り任せられるのだとか。
「サラリーマン金太郎」(集英社)の1巻の前書きでこう書かれています。
「私は、幸いなことに、絵が下手である。マンガ家のくせに絵が下手なことが、なぜ幸いなのか。下手だから、絵を人にまかせられる。おそらく日本中でいちばん、机の前に座っていないマンガ家だろう。ブラブラする時間があることは、他のマンガ家にくらべ、私は有利だと思っている。何事もそうだ。自分の欠点を逆に活かせば、それは他人にない武器となる」

欠点も短所も考え方1つで、素晴らしい武器(個性)にできるんです。
小説家の森沢明夫さんも主人公には2つの武器を持たせると言っていまして、それは「長所」と「短所」だとか。やっぱり、欠点も武器なんです。

短所に見えるところも欠点も
演出次第で面白い未来を生み出せる起爆剤にできるってことなんです。

例えば、こんな料理店があります。

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http://www.mistakenorders.com

料理店で、注文を間違えることは、あってはならないミスです。腹を立てる人もいるし、不快に思う人もいます。
しかし、この料理店は「間違えますよ」ということを全面に打ち出しているのです。この料理店には、特別なルール、フツーじゃないルールがあるのです。 
  
  
それは、
 

「このお店では、注文した料理がきちんと届くかは、誰にもわかりません」 
   

しかし注文を間違っても、
このお店では、むしろ、お客さんは大満足して帰られています。
一体どうしてなのか?

その秘密は、このレストランで注文を取るスタッフは、みんな認知症の状態にあるからなんです。だから、頼んだ料理がきちんと届くかどうかは、誰にもわからない。
「間違えを受け入れて、間違えることをむしろ楽しみましょう」というのが、この「注文をまちがえる料理店」のコンセプトなのです。

 「そんなことやって大丈夫?」と思うかもしれませんが、この「注文をまちがえる料理店」は2017年2日間限定で、東京都内にあるレストランを借りて試験的にプレオープンしましたが大反響だったのです!

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注文した料理がちゃんと自分の元に届くかわからないのに、90%のお客さんは、「また是非来店したい!」とアンケートで答えるほどの大盛況!
しかも60%以上のお客さんのテーブルで間違いがあったにも関わらずです(笑)。

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この料理店の大盛況ぶりにテレビ各局、新聞、雑誌からの取材依頼が殺到し、中国、韓国、シンガポール、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、ノルウェー、ポーランド、アメリカなど世界20ヵ国を超えるメディアから取材依頼が入ったほどです。

この料理店を企画したのは、元NHKの番組制作ディレクター小国士朗さん。小国さんがNHKの番組制作ディレクターとして仕事をされていた2012年、取材で認知症介護のグループホームにお邪魔した際に、小国さんはある一つの「間違い」を経験しました。
 ロケの合間に入居者の認知症のおじいさんやおばあさんの作る料理をごちそうになっていた小国さんですが、ある日のお昼ごはん、献立はハンバーグなのに、どう見ても食卓に並んでいたのは、
餃子……。
「ええと、ひき肉しかあってない……けど、うーん……???」と困惑する小国さん。思わず「あれ?今日はハンバーグですよね?」という言葉がのど元までこみ上げてグッと飲み込みました。
というのは、「間違いですよね?」の一言で、おじいさんとおばあさんたちが築いている、このあたりまえの暮らしを否定してしまうと思ったからだとか。
考えてみれば、ハンバーグが餃子になったって別に誰も困らない。「こうじゃないといけない」という考えに自分自身がとらわれて、それこそが介護の現場を窮屈にしてしまっていることに気づいたのだとか。
 その瞬間、「注文をまちがえる料理店」というワードがパッと小国さんに浮かんだ。



間違えることを受け入れて、間違えることを一緒に楽しむ。


そんな新しい価値観を発信できたら……そう思うと、小国さんはワクワクしてきました。そして2016年、小国さんがずっとあたためてきたこの企画を話すと、あっという間に人が集まったのです。
この料理店を実現するにあたり、まず気を配ったのは、「料理店としてのクオリティにこだわること(オシャレであること、料理がおいしいこと)」。「注文をまちがえる料理店」というからには、料理店としての体裁がしっかりと整っていることが大事。例えばハンバーグを頼んだのに餃子が出てきて、それがおいしくなかったらガッカリしてしまいます。どの料理でもおいしいからこそ、間違えても笑って許せるのだと思い、プロの料理人に調理してもらうことにしました。

そして2017年2日間限定で、東京都内のレストランを借りて、「注文をまちがえる料理店」は試験的にプレオープンしました。
この2日間で、小国さんは驚きと発見の連続だったといいます。

まず、いちばんの発見は……
ものすごい数の間違いが起きるということ。
しかし、誰一人として怒ったり苛立ったりした人はいなかったそうです。
それは、お客様のアンケートにも表れていました。
「サラダが2回出てきたけど、スープはきませんでした。でもそれもまあいいかと思います。たいした問題ではない。それでいいんです」
  
「普通のお店なら怒るかもしれないけど、笑顔で受け止めることができました」
 
アンケートを読み進めていくと、予想すらしなかった、コメントが飛び出してきました。
「間違いに気づいたときの、おばあちゃんのてへぺろがかわいくてステキでした」
「注目を間違える様がなぜかかわいらしく、許せる気になりました」
「おばあちゃんたちの注文を間違えた時のてへぺろは、いろんなバリエーションがあってかわいらしかったです」
お客様が怒ったり、苛立ったりしないのは予想の範囲内でしたが、お客様からの、まさかの「かわいい」という反応に、小国さんさんもビックリしたとか。
 
 さらに!
 
「注文を間違われて、嬉しかったです!」
「メニューを間違われたとき、どれもおいしそうで迷っていたので、むしろ助かりました(笑)」
「もっと間違えてもいいと思いました」

「間違われて、嬉しかった」という言葉は日本語として確実におかしいんです。でも、みんなで間違いを楽しもうという優しい空気ができていたゆえの感想でしょう。さらに参加したスタッフからもうれしい感想があがりました。
ホールスタッフを務めた元美容師の認知症のおばあちゃんは、「呼ばれなくたって明日も来るよ!」と張り切り、かつては社員食堂の厨房で働いていた60代の若年性認知症の男性は、「間違えたら普通はクビ。でもここは間違えても誰も怒らない。やっぱり働くっていいよね」と。
認知症の方のご家族からも、「ここで働く前はふさぎ込みがちだったのに、次回もあるなら頑張るぞ!と、ものすごく前向きになった」という感想があり、なかには、「料理店から家に戻ってきてから、元気になりすぎて困る」という声も(笑)。

認知症になったことで自信をなくしていた人たちが、働くことで再び生きる喜びを取り戻す。「注文をまちがえる料理店」は、そんなきっかけにもなったようです。
その後、 注文をまちがえる料理店は2018年に、「一般社団法人注文をまちがえる料理店」となりました。「私の街でもやりたい!」との声に応えて、全国各地で注文をまちがえる料理店を開催。そして、その活動は世界に広がっていきました。

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    韓国で開催された「注文を間違える料理店」

小国さんは言います。
「あたりまえですが、この料理店で認知症のさまざま問題が解決するわけではありません。でも、間違えを受け入れて、間違えることを一緒に楽しむ。そんな、ほんのちょっとずつの “寛容さ”を社会の側が持つことができたら、きっとこれまでにない新しい価値観が生まれるのではないかと思ったのです」

料理店で注文を間違うこと大きなミスです。しかし、演出次第で、その間違いをエンターテイメントとして、みなが楽しむ空気感をつくることはできることをこの料理店が証明してくれました。

「注文を間違える料理店」は、間違いを受け入れ、認め、ゆるし、楽しむ、優しい空気で満たされています。この優しさを引き出したのは、認知症のおじいちゃん、おばあちゃんたちです。

演出次第で、世界をもっと優しい場所にできるんです!
赤ちゃんはなんの能力も持っていません。歩くこともできないし、足し算もできないし、料理もできないし、営業もできません。でも、できないだらけの赤ちゃんが僕らから「愛」と「優しさ」を引き出してくれます。

短所、欠点を楽しむ文化ができたら、この星はもっと優しい星になるなって思うんです。

僕の知り合いの社長さんは、社員一人ひとりの「欠点」に「あだ名」をつけています。例えば空気を読めない女性には「空気読めない子さん」(笑)。すると、彼女が空気を読めないことをしたときに、周りから反感を買わずに、むしろ楽しい空気になるのだそう。遅刻がちな男子社員には「遅刻坊や」(笑)。
みんなに欠点はある。だから欠点を楽しもうという文化があるんです。優しい会社だなって思います。

「注文をまちがえる料理店」は、
人の優しさを引き出し、そしてその優しさが、
働くおじいさんおばあさんのやる気や笑顔を作っています。
優しさが循環する社会のまさに雛形です。

欠点に見えるところ、短所に見えるところも個性の1つ。
演出次第で、人の優しさを引き出すことができるのです。

僕らはみんな長所と短所を持っている。
それを活かし、活かされる
優しさが循環する社会になるといいなって思います。


Hi Future !
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人は長所で尊敬され短所で愛される。
「欠点」それは君に「欠」かせない「点」

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さあ、あなたの欠点、短所という個性を
どう演出してこの世界に優しさを生み出そうか?

パズルには、ダメなピースなんてないんです。「この部分は欠点だから、いらない」って、ピースをひとつ捨ててしまったら、どうなるでしょう?
パズルは永遠に完成しなくなってしまいます。どんな小さな破片でも、それはなくてはならない、全体を構成するワンピースです。
凸という長所を活かしてくれるのは凹んでいる短所を持った人なんです。

「欠点」は欠けている点ではなく、あなたに「欠」かせない「点」なのです。

●THE WORK!
自分のできないところ、ダメなところ、欠点、短所だと感じてるところをノートに書き出そう。そしてその1つ1つに「だからこそどんないいことがあった?」「だからこそどんなことができそう?」「だから誰に助けてってお願いする?」と自分に問うてみよう。


●THE WORD!
「蓮根れんこんのうまいところは、どこかご存知ですか。
 穴があるからうまいんです」内田百聞(作家)

穴、すき、欠点、それこそあなたの持ち味です。


ひすいこたろうでした。
Play with LOVE
▲▲▲アリガ島▲▲▲

text special thanks あおしまカガヤキ
http://sekashiablog.livedoor.blog/archives/8293817.html


出典
「注文をまちがえる料理店」小国士朗(あさ出版)
○注文をまちがえる料理店 http://www.mistakenorders.com
○「注文をまちがえる料理店」のこれまでとこれから」
https://forbesjapan.com/articles/detail/16640
○注文をまちがえる料理店Facebookページ
https://www.facebook.com/ORDER.MISTAKES/
○韓国版注文をまちがえる料理の記事
https://m.insight.co.kr/news/180472

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「ひすいラボ シーズン4」開幕です。

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