闇呼び

毒を唅む


いつからだろう こうして毒を宿すことを苦に思わなくなったのは

昔は毒を持つことすら忌避していたのに 今はもう 毒を生み出し刃を人に向けることすら厭わなくなった


そこに喜びすら感じるほどに


思えば幼い頃からこの気性だった

人を傷付けることに何の躊躇いもなかった

思う儘に刃を振るってそれを愉しんでいた 暗い悦びだ

それから少し成長して世界が広がった時、毒を持つこと、刃を振るうことはいけないことだと知った いけないことはしたくなかった

そこから暫くの間はキレイな儘で過ごせていたのだろう

毒を持つ傍から捨てた 刃は鞘ごとどこかへ置いてきた

穏やかな日々は今までにない景色を見せた 人々も私から去らなくなった

でも気付いてしまった 人から見えなければ、毒も刃も持っていないのと同じようなものだと

毒を持つ傍から呑み込んだ 刃は抜き身のまま懐に潜めた

景色は変わらなかった 毒も刃も捨てなくても人々は変わらずそこにいた

そこから先はあまり憶えてない

確かなのは私は毒を撒き刃を振るう悦びを思い出してしまったということ


なのにどうして私は心が安らぐ歌を聞いているんだろう

毒も刃も心を灼くものだからだろうか

望んで手にしている筈なのに 灼き切れないように抗うのはどうしてだろう

あなたの所為かな 光貴

光貴 私はあなた以外どうでもいいと思っている筈なのに 他に何を傷付けようが壊そうが構いやしないのに

あなたがいるから 私は闇に落ちきれない

私と対を成すあなたがいてくれるから 私は 闇呼びとしていられるのに

心のどこかで あなたと同じように 光を持つことを望んでいる


こうして書を残すことすら、私には闇への抗いの一つなのかも知れない

それでも 私は 闇呼びとしての自分を捨てることなど できないのでしょう

どうしようもなく醜い私を それでも 私は――


さあ今日もあなた以外のどうでもいい人間達に 毒を 刃を

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