城達也の思い出〜『ジェットストリーム』と私

未だに覚えていることがある。
テレビのCMで、「音楽の定期便、ジェットストリーム」というナレーションが流れると、両親が話をし出した。
「これ欲しい?」「うん」
滅多に会話をしない2人が、話をし出した。
「ジェットストリームって、なんだろう?」

今から10年以上前のことだが、今でもはっきりと覚えている。
そして、その日以来、私の脳裏から「ジェットストリーム」というラジオ番組と、あのセリフを言った「城達也」という名前が消えることはなくなった。

それは、とても素晴らしい出会いだった。

1967年7月4日に、当時の東海FM、現在のTOKYO FMで始まったラジオ番組。
イージーリスニングを特長とした音楽番組で、深夜午前0時から静かに始まる。
その番組の案内役を務めたのが、城達也であった。
グレゴリー・ペック(『ローマの休日』)、ロバート・ワグナー(『史上最大の作戦』)のフィックス声優としてファンからの支持を集めていた声優。元々舞台で活動する俳優であったが、美声を活かして声優へと転向した人物。
1967年7月より1994年12月31日まで、約27年に渡り、機長(パーソナリティ)を務めてきた。

城達也の声は、声帯を完璧に上手く使いこなした人物によるものだった。
純粋に声帯を震わせることで、音を発しているような、そんな声だった。
雑味が全くない、美しい響きを持たせた声だった。心落ち着かせる、深い眠りへと誘う力を秘めていた。

そんな声で語られるナレーションが、オーケストラによる美しいサウンドに乗せられると、この上なく素晴らしい芸術作品へと昇華されていた。
YouTubeでも、城達也時代のジェットストリームの、冒頭のナレーション部分だけを切り取った動画が投稿されているが、何百万回も再生されており、しかもコメントは全て好意的なもの。

今まで色んなラジオ番組を視聴してきたが、『城達也のジェットストリーム』を超える番組は無い。

いづれしっかりと分析をした上で、論文を書いてみたい。

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