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ZBrush:最近の作品を2つ紹介・解説

ミリタリーコンセプトアート「MG34チーム」

(2074文字)最近モデリングしたZBrush作品を2つ紹介・解説したいと思います。それぞれ、3Dプリント出力でミニチュア原型にもなる事を前提としたミリタリーミニチュア系のコンセプトアート作品です。

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この「MG34チーム」は、第二次大戦中ドイツ軍の最も有名な機関銃の一つであるMG34を三脚に載せた重機関銃チームを描きました。通常、機関銃チームは複数名の編成となり、指揮官(リーダー)、機関銃手、装填手の3人が最小構成です。このチームはその最小構成チームです。

MP40短機関銃を携帯し指示をしている指揮官は、戦果を上げた兵士に送られる鉄十字勲章を胸に着けており、修羅場を乗り越えてきた歴戦の勇士、というキャラです。右手には結婚指輪をしており、このチーム唯一の妻帯者、という設定です。

MG34の機関銃手は、この中では怖いもの知らずのイケイケの若き兵士という設定です。銃の腕は立つが戦場の移転先毎に彼女がいる女癖悪そうなチャラいキャラというイメージです。

地面に伏せて給弾をしている装填手はベテランとイケイケの間を取り持つ、弾数が常に頭にあり整備が得意そうな頑固な職人肌。故郷に残してきた幼馴染みの恋人一筋、という真面目キャラ設定です。

第二次大戦のドイツ軍というと「ナチス」「冷徹邪悪」というイメージがあります。どの国でもどの時代でも、そういう層の人達が存在するのは世の常です。当然、野望を企てる上層部やプロ軍人もいます。しかし、従軍した人達には無数の普通の人達がいます。彼らも自分たちの国や家族、色々なものを守るために戦ったひとりの人間です。

それは、ハリウッド映画で描かれるようなステレオタイプなドイツ兵とかではなく、ドイツ制作の3話TVドラマシリーズ「ジェネレーション・ウォー」を観ると強く感じる事が出来ます。(ドイツ語の原題は「私達の母、父」で、私としてはチープな題名ではなく原題をそのまま採用して欲しかった)私はこのドラマシリーズに出てくる、

「等身大の普通のドイツの若者たちが戦争に巻き込まれて数奇な人生を歩んでいく人間模様」

というものに強い影響を受けました。今でも一番好きな戦争ドラマです。このドラマを観て以来、

「ミリタリーミニチュアやジオラマでも、このドラマに出てくるような、どこにでもいる普通の人間であったドイツ兵を描きたい」

という思いを抱いています。そんな背景があり、その手始めとして

「守るべきものがいるベテランと、若い二人の兵士の組み合わせと人間模様を描けないものだろうか」

というインスピレーションが湧きました。

この「MG34チーム」は、そういうアイディアに基づいて造形しました。今後も、「歴史の中で埋もれて消えていったはずの、等身大の普通の人間であった兵士達を描けたら」、などと考えています。

ミニチュアコンセプトアート「Bitch Bomb!」

「コンテンポラリーノーズアート」というコンセプトでの作品です。ノーズアートはWW1頃から始まり、WW2時代のアメリカ軍が広げた、とても興味深いミリタリー文化と私は思っています。しかしこの文化も女性従軍兵士の増加やフェミニズム運動など時代の流れとともに廃れてしまいました。

この「Bitch Bomb!」は、「もしノーズアート文化が現代に蘇ったら?」「もし自分がノーズアートを描くならどんなノーズアートを描くのだろう?」と思って描いてみました。

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ノーズアートは軍用機にセクシーな女性や漫画キャラ、兵士の出身地などをネタにしたキャッチフレーズを描くという、アメリカ軍兵士の遊び心から発展しました。日本軍やドイツ軍なら上層部から厳しいお叱りを受けそうな文化です。しかしアメリカ軍は「兵士に娯楽を提供し、士気を高める」としてこれを許容していました。戦争に勝ったのはどっちでしょう?などと考えたら非常に興味深いと私なんかは思ったりします。

このタイトルの「Bitch Bomb!」とは、彼氏や元カレへの仕返し的にSNS上に悪口を書きまくる意味のネットスラングです(最近使われているかどうかは不明)。このお題の怖い悪女(Bitch)が、裸をチラ見した貴方の顔を写メって変態男としてSNSにばらまく(bombを落とす)>あなたは社会的に抹殺、という、ある意味冤罪にもなりえる「現代の爆弾」という意味を込めた風刺として描いてみました。

まとめ

以上、最近のZBrush造形作品の紹介と解説でした。本来は作品だけで全てを語れればベストなのですが、解説を加えることで観る方に対して作品に込めた本来のメッセージが伝わりやすくなるかなと思い、書いてみました。「ZBrush」とか「デジタル造形」とかいうと、つい「テクの紹介」「制作方法手順」とかの技術的な話ばかりになってしまいます。この記事ではそういう観点は一切省き、「私が作品に込めた意味」だけに焦点を当てて書いてみました。閲覧して頂き、ありがとうございました。

P.S. 作品はArtStationの私のページにも投稿しています。



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