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【和楽器】箏(琴)の打ち込みでやってはいけないことTOP3【DTM】

※「箏」は「琴」の正式表記。皆さんが想像する通りの「お正月のアイツ」です。

箏奏者・作曲家の久です。

演奏の傍ら楽曲提供なども行なっており、日頃からDAWを使った音楽制作をしているDTMerでもあります。

そんな感じなので、箏をはじめとする和楽器を楽曲に入れることは非常に多いです。

箏パートがある場合は自らレコーディングをしますが、作曲段階やデモを作るときなどに、箏のサンプリング音源を使用しています。

そんな僕が、巷にある箏の打ち込みを聴いて「ありがちだけど、生っぽさを損ねているな」と感じたものをランキング形式で紹介していきます。

※あくまで『打ち込みで生っぽさを求める』ことを目的にした場合の話です。『箏っぽい音のシンセ』的な扱いをするのも全然ありだと思いますので、決して『生が正義』と言いたいわけではありません。


【3位】奏法・フレーズが単調

より具体的な特徴を述べると、

・単音のフレーズばかり
・最も基本的な「親指のピッキング」しか使っていない

という感じです。

こういったフレーズはどうしても打ち込み感・練習曲感が出てしまいます。

対策としては、長短2度、完全4度、完全5度、完全8度などの音程を、アクセント位置などで使う、というものがあります。

これらは古典でも結構出てくる音程なので、この辺の音程を使うと箏らしいフレーズになります。(完全8度 = オクターブユニゾンは、メロディをはっきり聴かせたいときに効果的です。D - G - A や D - G - D など、3つ組み合わせることもできます。)

奏法に関しては、どこまで出来るかは音源によります。

例えば、

・フレーズ終わりのロングトーンをトレモロに変える
・アルペジオの低音側2〜3音をピッチカートにする

こういった工夫をすることで、だいぶリアルな感じになると思います。

【2位】ベロシティが強すぎる & 平坦

まずはベロシティが強すぎる問題について。

これはめちゃくちゃ良く耳にします。

もちろん音源とシチュエーションによりますが、経験上ベロシティ100とかだと強すぎる場合が多いです。

明らかなフォルテの場合を除いて、ベロシティは抑えめにすると上手くいくことが多いと思います。

見極めるコツは、ボトムの音を聴くことです。(マイク収録の音源の場合に限る)

音源にもよりますが、だいたい200kz前後あたりにキックのような『ドスっ』という音が目立つ場合は、かなり強いと考えてOKです。

次にベロシティの平坦さについて。

これもたまに耳にしますが、これだと『基礎練習をしてる人』に聞こえます。

器楽曲でない、ポップスなどに使用する場合でも、多少のベロシティの差はつけるべきだと思います。

強弱の付け方は、他の楽器と同じイメージで問題ありません。

とにかく1音1音ベロシティに差をつける。これだけでだいぶ変わると思います。(MIDIキーボードで演奏して打ち込むと楽です)

特にこの『強すぎ&平坦ベロシティ』を速いパッセージでやると致命的で、マシンガンで弦を撃ってるようにしか聴こえません。

速いフレーズは1音1音ハッキリ演奏することは難しいので、速ければ速いほど、全体的にベロシティを下げ目にすると自然になります。

(※特にグリッサンドは注意!!!魅力的な奏法故に使用頻度が高いのですが、マシンガンになってしまっているのをよく聞きます)

以上の工夫をするだけでもかなり自然になりますが、更に自然にするにはタイミングをグリッドジャストから少し離してください。

寸分の狂いもなく一定のリズムで箏が鳴り続けていると、個人的には違和感を感じます。

【1位】音源がしょぼい

こればっかりは工夫でどうにかなる問題ではありません。予算もあると思いますが、少なくとも生楽器をサンプリングした音源を買いましょう。

どうしてもフリーor 安い音源を使う場合は『そういう音色のシンセ』と割り切って使うのがいいと思います(安い音源は特に不自然な金属音のような高音がめちゃくちゃ目立ちがちで、音のバランスもめちゃくちゃだったりします。どう頑張っても生っぽくするのは無理です。)

お金があるならSonica「KOTO 13」一択です。和楽器全般に言えることですが、Sonicaのクオリティはぶっちぎりです。

音質はもちろん、ほぼ全ての奏法をカバーしており、更にポップスにも使いやすい工夫がデフォルトでされています。

KOTO13をはじめとするSonica製品は、和楽器を使った本格的な譜面ベースの器楽曲を書いてみたい、と思っている方にもオススメです。(オケを書いていて、和楽器のオーケストレーションを学びたい方など)

器楽曲だと、そのまま音源としてリリースするのはちょっと厳しいかなと思いますが、マニュアルを見ながら打ち込んでいるだけで、奏法の勉強になります。

また、かなりリアルな音でシミュレーションができるので、発想を広げるのにも役立ちます。(ここでこの奏法を使ってみたら意外と面白いかも!とか、これとこれをレイヤーしたら面白い音になった!など、色々をアイデアを試すことができます。)

コスパ重視なら『箏姫かぐや』かNIの『EAST ASIA』辺りがオススメです。どちらも値段の割にそこそこいい感じになります。(EAST ASIAはKOMPLETE 14 ULTIMATEにも入っています。)

また、前者なら十七弦箏(ベース箏)、後者なら三味線、尺八、中国や韓国の伝統楽曲など、箏以外の音源も収録されているので、そういう意味でもコスパがいいです。

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以上、打ち込みにおける箏の扱いについて現役箏奏者が書き殴ってみました。

作曲家・DTMerの皆様方の参考になれば嬉しいです!

(Twitter、インスタで情報発信してます)


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