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同人誌デザインの同人誌を出した理由と制作で大変だったことなど

技術書典7合わせで「そのまま使える同人誌デザイン 技術同人誌編」という同人誌デザインの同人誌を作成しました。
今までずっと二次創作で同人活動してきたのですが、どうして急にデザイン本を出してみようと思い立ったのか?という点と、制作してみて大変だったことなどをまとめました。

なぜ出そうと思ったのか

(1)同人誌デザインがしたかったから

同人誌のデザインをするのが好きです。好きなんですが、本文(漫画やイラスト)を描いているとどうしてもデザインに時間がかけられない。特にここ数年はギリギリで原稿をやることが多く、入稿日当日の朝に適当に表紙を描いて終わらせる、ということが続き、なかなかじっくりとデザインができず……いっそのことデザインだけの本を出せば、たくさん同人誌デザインが出来て良いんじゃないか!?と思い立って作ってみました。

色々大変でしたが、好きなデザインをたっぷりとできて楽しかったです。

(2)技術同人誌における表紙について

同人誌デザインの本を出そうと決めたものの、テーマをどうするか悩んで、「技術同人誌」それも「デザインが苦手な方でも簡単に使えるようなもの」と定めました。

理由ですが、「既存の技術同人誌の表紙のレベルがかなり高かったから」です。色々見てみると、「そもそも本を出している人がデザイン職」だとか「デザイナーやイラストレーターに表紙を発注している」という方が結構いるようでした。これに入っていくのは正直敷居が高い。

頼めるようなデザイナーに心あたりがない、発注するお金がない、原稿をギリギリまで書くので事前に外注に出す余裕がない、など……(ちなみに自分はすべてに当てはまります)。

自分自身、同人誌を出しますが、出す以上に買って読む人間なので、表紙作成のハードルが下がればもっとたくさん本が出る可能性もあるのでは!?推しカプならぬ推し技術の本がいっぱい欲しい!!と思い、「誰でも簡単にサクっと表紙が作れるようになる本」を出そうと思ったのです。

あと、ざっと見ただけですが、「既存の商業技術誌に似せたデザイン」の同人誌が結構あるなと感じたのもほんの少しあります。ダメではないし、同人誌には良くあることだし、個人的にはパロディ大好きなんですけど、「デザインのパクリ」と「遊び心のあるパロディ」のラインって非常に難しいと思います。分かった上であえてやっているなら制作者がリスクを被ってやってるだけなので別にいいかなと思うんですが、「表紙のネタがなくて仕方がなく」だとしたらちょっと寂しいなと感じました。あと、商業誌も頒布可能な即売会でそういうものが並んでいると、誤認もありそうだなというのもお節介ながら心配になりました(たぶん過剰に心配しすぎだと思いますが……)。表紙のネタがないときに、既存の本のパロディをする以外の選択肢もあったら楽なのでは?という気持ちもあり、テーマを決定しました。

制作で大変だったこと

(1)「誰でも編集しやすい」のハードルの高さ

上記の理由で制作を始めたわけですが、思った以上に「人に編集してもらうことを前提としたデザイン」を作成するのが難しかったです。

まず、フォントは誰でも入手できるものであること+テンプレートに使用できるものであることが必須条件でした。フリーフォントの中にはテンプレート配布が不可能なものもありましたので、実質デフォルトに入っているフォント+google fontで入手できるもの縛りのような状態に……。

そして、編集しやすいよう、凝ったデザインはできません。タイトルもロゴデザインのように色々いじると編集しづらくなるので、「時間がない中でも編集可能で、テキストをベタ打ちするだけでも映えるもの」を意識しました。

この縛りプレイとも言える条件の中でのデザインはかなり難しかったですが、やりがいも高く、面白かったです。

(2)架空の同人誌を設定する大変さ

本文中に色々なデザインを掲載しましたが、それぞれの本のターゲットや内容・コンセプトなどをある程度考えた上でデザインしました。架空とは言え、すべて適当だとデザインのしようがないので……。デザインの数だけ同人誌のネタを用意しなくちゃいけないのは結構大変でした。誰かにネタ出しを助けてもらいたかったのですが、残念ながら周囲に技術同人誌を作る人がいなかったので、ひとりで考えました……。

(3)電子版(PDF)の制作の大変さ

今まで出してきた同人誌はすべて二次創作だったので、電子版は作ったことがありません(権利上の色々があって面倒なので)。今回はオリジナルなので電子版を作ってみたのですが、配慮すべき点が結構あって大変でした。

まず、どのくらいの制限をかけるか?という点。まったく制限かけずフリーにするとそれはそれで微妙かなと思い、「印刷だけできない」(コピペ等はできる)ものにしました。印刷できちゃうと紙版を量産できるのと実質同じになってしまうので……紙で欲しい方は紙版(物理本)を買ってね、ということで印刷だけ制限させていただきました。

そしてどうやって電子版をDLさせるか?(頒布するか?)という点。これはBOOTHを利用させていただきました。即売会での頒布用はシークレット公開のURLとパスワードを記入したカードを配布しました。PDFそのものにパスワードをかけると、毎回聞いてきて面倒なのでそれは避けたかったのです(たぶん購入者はたくさん購入するであろう電子同人誌のパスワードをそれぞれいちいち覚えていられないだろうし……)。
BOOTHのシークレット公開は月額500円のサービスなので、無期限に保持するのが厳しく、DLカードには一応年内いっぱいで記載させてもらいました(おそらく過ぎてもそのまま使えると思いますが、以降は利用がなくなってお金を払うのが面倒になったあたりでやめると思います)。

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そして電子版ならではの調整。これはPDFに「目次」を設定することと、本文中のURLにリンク設定をしました。あと、紙版では本文を外側に寄せるのですが(本のとじ込みの部分に内容がかぶって、思いっきり開かないと読めないという事態を防ぐため)電子版だとこの調整は不要なので、すべての本文を中央に揃えました。
このあたりの使い勝手は、電子書籍を良く買って読んでいる友人にチェックしてもらい、意見をもらいました。せっかくデジタルデータで購入してもらったので、紙版とは違った使い勝手の良さを盛り込みたかったのです。このあたりはもっと知識をつけていきたいです(例えば読み上げ対応など)。

今後について

そんな感じで作った本ですが、仕上がりは結構満足していますが、もう少しいろんなデザインを載せたかったなあとか、メイキング的な部分を盛り込んだ方が分かりやすかったかな?とか、本文中のイラストを描いている時間が厳しくてもう少しちゃんと描けば良かったな……など反省点もあります。

同人誌デザイン自体はやっぱりすごく楽しいので、またデザイン本を出したいなと思っています。技術書典7では残念ながら目標にしていた数は頒布できなかったんですが、通販で少し買ってもらえたので(ありがとうございます!BOOSTしてくれた方も多くて感激しました……)、なんとかあともう1回チャレンジできるくらいにはなりました。

今回とは別のコンセプトで「1つのイラストで複数のデザインを作成して、メイキングを載せる」本とか、またテンプレート本で技術同人誌編2か、グルメ同人誌編とかどうかな?と思ってます(グルメ同人誌も好きなので)。

出せても来年だと思うので少し先にはなりますが、その際はよろしくお願いします。また、次の本を出す前に、オンラインでデザインを掲載したりという活動はぼちぼちやっていけたらなと思っています。
(あと、技術書典7では準備号での頒布になってしまった、「ウェブの文字組の本」の完成版も作りたいです……)

本にまとめると、自分の中であやふやだった知識をもう一度調べ直して、確固たる知識にすることができるので、そういった意味でも非常に良いなと思いました。〆切が発生するので集中力も上がるし……。

この本の購入方法

以下のサイトで通販可能です。とらのあな店舗は秋葉原A店 or C店の技術書コーナーにあるそうです。

BOOTH(物理本と電子版)
https://hisana.booth.pm/items/1547497

とらのあな(物理本のみ)
https://ec.toranoana.shop/tora/ec/item/040030776664

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