アン、再読

 心に疲労を感じると、ぼくはアン・シャーリーに会いたくなります。またいつでも傷付いたぼくたちを待っていてくれるのが、グリン・ゲーブルスのアンなんですね。

 快活でいつも前向きな夢想家・アンの話を聞くのは、マシュウでなくっても愉快でたまりません。それに彼女を取り巻く世界のなんと美しいこと。アンはマシュウやマリラ、彼女と出会う島の人びと、彼女の目に留まる木々や湖水のすべてに魔法をかけ、プリンスエドワード島を妖精の住む夢の国にしてしまうのです。

 『赤毛のアン』は読み直すたびに新しい発見、新しい感動があるけれど、今回はね、寡黙なマシュウがぽつんともらした一言にしびれました。マシュウの役に立つ男の子を頼んだつもりが、手違いから赤毛でソバカスだらけの女の子がやってきて頭を痛めるマリラに、彼はこう呟くのです。「わしらのほうであの子になにか役にたつかもしれんよ」。

 道は拓かれるものなんだなあ、と思います。心を開けば、道は拓かれるんだ。魔法をかけるというのは、そういうことです。(2002.08.23)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?