近火

 先夜の火災には驚かされました。正確には未明の火事だったのですが、つごう三軒をなめる惨事になってしまい、危うく我が家にも(一軒おいて隣でしたから)及ぶところでした。もっとも、ぼくはそのとき仕事の都合で山形市に泊まっていたので、子供からの電話でそれを知ることになったのでしたが。

 出火元になった家では一人暮らしのお年寄りが焼死するし、その隣家はもらい火で全焼してしまったのですから、惨事には違いありません。明るい話なんてできないのだけれど、ただ、我が家の危機管理を考えると、子どもたちの成長を見たのは収穫だったかもしれません。

 「火事だー」の声に飛び起きるや長女は体の不自由な祖母の手を引き、また長男は末娘の手を取って、冷静に風向きを考えながら避難してくれたようです。

 むしろ大人たちの方が気が動転して右往左往。(預金通帳ならともかく)貧しい宝石箱を意味もなく漁ったり、側溝にはまって痛いめにあったりと、少々取り乱してしまったようです。

 あ、いや、もちろん、いちばん情けなかったのは、大事なときに現場にいなかった頼りにならないオヤジ、つまりぼく、なんですがね。……森クンのことは言えない。(2001.03.01)

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