遺留品1

大きな屋敷きれいな日本庭園池には鯉が優雅に泳いでいる。ここに来ると複雑な気持ちになる

「じじぃきたぞぉー勃起不全も治った頃かい?」

そうやって玄関に入り言葉を発する。少ししてから奥から着物を着た60過ぎの老人が歩いてきた

「朝から何かと思えばそうか、今日だったな、使い物にならん以前に妻に先立たれてから使ってないわ、お前こそ相手がいなくて扱いに困ってるじゃないのか?」

そう軽口を飛ばしながら笑顔で寄ってくる

「まぁ上がれ、」

そう促されスニーカーを脱ぎ下履に履き替え座敷に上がる、

「随分静かだな」

「人がいても変わらん、それに人が来る事自体少ないところだ」

確かにそうだここに人が来る事自体珍しい。そう考えているうちに一つの部屋に通された。部屋には大きな金魚鉢があった。その部屋にあった物に若い男が嫌悪感たっぷりに言う。

「おいじじぃ、わかってはいたけどこれはダメだろ、早すぎる」

一般の人には高価な金魚鉢に見えるのだろうがあいにく私には余計なものまで見えてしまう。金魚鉢はガラス製で綺麗な紋様が側面に彩られている

「私も早いとは思うが、これはもう手に負えない、早いうちに破壊しないといけない。見えているのだろう」

そうこちらを視線を送ってくるじじぃその目からはどことなく圧を感じる

「これってさ確か二年前に亡くなった坂井守の遺留品だろ?こんなもん持ってるだけで死んでもおかしくない、誰からこんなもん受け取ったんだ?」

苛立ちを隠せずにじじぃに視線を返す

「これを持ってきたのは坂井の内縁の妻だあれほどの事があって尚命を繋ぎ止めてそして未だあの男を思っている」

そう話すじじぃの顔は何処か悲しそうだ

「いつも言ってるだろう、お前もう長くないんだそんなにどこからともなくこんなもん受け取ってたら後が大変だ何よりお前の始末は基本私がすることになるんだぞ?」

「わかっているだが、こればっかりは見捨てる事ができなかったんだ何せあの坂井の事だしな」

そしてまた少し悲しそうな顔をする。

「とりあえずこれは私は何とかするじじぃは関わるな」

そう語る男の顔は真剣そのものだ

「すまないな、周」

老人は申し訳なさそうに呟くその背中は弱々しく覇気がない

「じじぃ?」

周が向き直ると身体から力が抜け倒れる、その体を周が受け止めるその体からは体重を感じないほど軽かった。

「まてじじぃ!お前!」

直後屋敷のいたるところから物音や悲鳴がこだまする

「はは、すまないな、時間がないのは見ての通りだ」

そう言う老体の体からは、汗がふきででいた。

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