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がんの骨転移について①

がんは「骨」にも転移することがあります。
「骨」に転移したことがわかると、すでに肝臓や肺に転移がある方でも改めてびっくりされたり、落ち込まれたりすることが往々にしてあります。
これは、新たな場所に転移してしまったということ以外にも別な理由がありそうです。
例えば、
●将来的にそこの部分がひどく痛んで苦しむのではないか?
●背骨の場合、神経を障害して、足がマヒしたり、寝たきりになってしまうのではないか?
●わき腹や肩が痛むと、また新たな場所に転移したのではないかと心配になる
●もう末期ということでしょうか?
などは患者さんからよく言われることです。
つまり、「骨」に転移することは、他の臓器に転移する場合に比べて、痛みがひどそうだったり、QoLが低くなりそうだったり、予後が悪そうだったりなどというイメージとつながっているということです。
実際のところはどうなのでしょうか?

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▼骨転移しやすい「がん」、しにくい「がん」
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「がん」の種類によって、「骨」に転移する頻度の高いものや低いものがあることが知られています。
日本臨床腫瘍学会が発行している「骨転移診療ガイドライン」によると
乳がん・前立腺がん 約75%
甲状腺がん・肺がん 約50%
胃がんや大腸がんなどの消化器がんは約20%
の方に骨転移が認められたとされています。
これらの結果から、乳がんや前立腺がんは怖いがんで、胃がんや大腸がんは怖くないということは決していえません。
進行がんの5年生存率では、骨転移の頻度が高い乳がんや前立腺がんよりも、胃がんや大腸がんの方が低値であり、そういう意味では消化器がんの方が怖いといえそうです。

また基本的には、すべての「がん」で骨転移が生じる可能性があると考えられていますので、「自分のはここに書いていない『がん』だから『骨転移』は大丈夫」ということも言えません。

例えば、世の中には「骨転移」が一番最初に発見される方がいらっしゃいます。
腰が痛むなどで整形外科を受診して、検査をしたら、普通の腰痛ではなく、がんの転移だろうとなったという経緯です。
その場合、女性であれば乳がん、男性であれば前立腺がんが確率的には一番高いわけですが、それ以外のがんも否定はできないので、胃カメラなどを含めていろいろな検査をする必要があります。

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▼骨転移の症状
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初期の骨転移は無症状のことが多いとされています。
骨転移が最初に診断された時点で症状のある方は、40~70%といわれています。
つまり、半分くらいの方は、特に症状がなく、検査でたまたま骨転移が見つかるということです。
たまたま見つかると言っても、全く関係がない検査で見つかるということではなく、がんの診断や治療方針を決定するための検査の過程で見つかるというものがほとんどと思います。
ですので、中には手術の方針で進んでいたけど、最後の検査で骨転移が見つかって、手術不能と判断される方もいらっしゃいます。
とはいえ、前項で述べたようにがんの初発症状になる可能性もあります。
初発症状として多いのは「痛み」ですが、「骨折」として表れる場合もそれなりの頻度であります。
がんが「骨」に転移すると、程度の差は多分にありますが、その部分の骨は脆くなってしまいます。そうして普段では骨折しない程度の力でも、脆くなっているために骨折してしまうことが起こってしまうわけです。
その他、骨転移部位から溶け出したりなどしたカルシウムのため、血液中のカルシウム濃度が上昇したりすることもあります。少し増えたくらいでは無症状のことが多いですが、過度に上昇してしまうと意識障害を起こしてしまうこともあります。

こうして症状を並べ立てられると「骨転移って怖い」「骨に転移したらやっぱりおしまいだ!」とか考えてしまいかねませんが、きちんと対処法がありますので、過度に心配したりや不安にならなくても大丈夫です!
実際、何年も骨転移とうまく付き合って過ごしている方は世の中にごまんといらっしゃいますので。

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▼骨転移の検査
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骨転移を発見するための検査としては、単純X線(いわゆるレントゲン写真)、CT、MRI、骨シンチなどがあります。
最近はPET/CTで見つかる方も増えてきています。

●単純X線(レントゲン):
日ごろから骨のレントゲン写真を見慣れている整形外科のドクターであればよいのでしょうが、少なくとも僕はレントゲンで骨転移を発見する自信はほぼありません。あると言われてみればこの影だねと言えますので、経過を見るために使用することは可能ですが、新しい骨転移を発見するには内科医にはハードルが高いのではないかなぁ~って思っています(精進が必要ですね!)。

●CT&MRI:
比較的すぐに撮影できますし、一度に広範囲を検査することが可能ですし、他の部位(肝臓や肺など)を一緒に見ることができるので利便性は高いです。
しかし、診断能としてはMRIに劣るので、詳しく骨転移の状態を検査する場合にはMRIが必要となることが多いです。

●骨シンチ:
一度の検査で頭のてっぺんからつま先までの骨を検査できるので、症状はないけど骨転移の有無を検査する必要がある時などのスクリーニング検査として重宝されていますが、関節炎などでも反応をしめしてしまうので、確定診断には別の検査が必要です。

●PET検査:
PET検査は、一昔前は実施施設が限定されるなど、特に地方都市からのアクセスも大変で敷居の高い検査でしたが、最近は検査可能施設もかなり増加し(当院にはありませんが・・・)、術前検査の一環として撮影されたり、腫瘍マーカーが上がっているけどCTで明らかな病変が見つからないときなどに実施されることが増えてきています。骨転移を疑った場合でも、骨しかみれない骨シンチではなくPET検査が計画されることが増えてきている印象です。

どの検査がいいとか悪いということはありませんが、骨転移を念頭に置いておかないと、そもそも検査が行われなかったりしてしまいますので、まずは骨転移があるかもなぁ~っていう意識が一番大切かもしれませんね。

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▼まとめ
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今回は、骨転移をおこしやすい「がん」、症状、検査についてお話させていただきました。
ここまでだと、やっぱり骨転移って怖い!ってなってしまいそうですね。
次回は骨転移の治療についてお話させていただきたいと思っておりますが、そちらでは最後には「骨転移があっても大丈夫!」って思ってもらえるようなお話になればいいなぁ~って思っています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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