TOZをクリアした感想まとめ

 ここ最近になってテイルズシリーズを遊び始め、今回は「テイルズオブゼスティリア」(以下TOZ)をプレイしました。先日クリアしましたので、その感想を書いていきたいと思います。

 この感想で主に書きたいことは

・インターネットで広まっているTOZに対する様々な評判の真偽

・ストーリーの良かった点と悪かった点

・その他システム等の良かった点と悪かった点

の3つです。言うまでもないですが、あくまでも個人的な感想であることを念頭に置いて読んでいただければと思います。


1.インターネットで広まっているTOZに対する様々な評判の真偽

 TOZをプレイする前に一番気になっていたのは「いろんな評判や噂を聞くけど、一体どこまで本当なんだろう?」ということでした。

 往々にして、インターネットでは作品に対して悪意のある情報の抽出が行われ、その情報が広まってしまうことが多いです。特に一度何かしらの形で炎上した作品は、炎上した内容がどんどん誇張されたり作品のことをよく知らない外野が便乗したりすることで、実態が分からなくなることがほとんどです。やたらと騒がれているからどんなものかと見てみれば、「何だそんなことか」と言いたくなるようなことで騒いでいる、というのはよくあることです。

 TOZを取り巻く評判がどこまで本当なのかを確かめるには、実際に作品をプレイしてみる他ありません。この項目では、そうして実際にプレイしてみた結果、様々な評判のどこまでが本当でどこまでが誇張表現だと感じたかを話します。


アリーシャとロゼのヒロイン問題

  TOZに関する評判の中で、特に有名なのがこの問題ではないでしょうか。有名故に各所で語りつくされた問題ではあると思いますが、自分が実際に遊んで感じたことを改めて書いていこうと思います。

 アリーシャとロゼ、どちらがヒロインなのか?という問題が起きた原因として考えられるのは「アリーシャが離脱しロゼが加入するまでのストーリー展開が突然すぎる」点だと思います。


 まず、アリーシャの離脱についてです。

 アリーシャはパーティーに加入する際に導師のスレイと従士契約を結びます。従士というのは、導師と契約を交わすことで普通の人間には見えない憑魔が見えたり特別な力を使って戦えるようになる、導師のサポートをする人間です。従士になったアリーシャはパーティーメンバーと共に戦うのですが、物語の中盤で従士契約を結んだ反動でスレイの片目が見えなくなっていることを知り、スレイの負担になりたくないと感じてパーティーを離脱する、というのがアリーシャ離脱の流れです。

 アリーシャ離脱時のシナリオの問題点は、それまでパーティーメンバーとして丁寧に描かれてきたアリーシャが充分な説明も無く突然離脱する点です。

 アリーシャはスレイが物語の序盤に出会う女の子です。それまで天族と共に暮らしており他の人間が住む世界を知らなかったスレイは、アリーシャと知り合うことで人間の世界が戦争や災害などで苦しんでおり、救いとなる導師という存在を求めていることを知ります。そしてアリーシャに「導師になるための試練を受けてみないか」と誘われ、人間の世界に旅立つことを決意します。

 アリーシャと他のパーティーメンバーが交流を深める過程も、中盤までに丁寧に描かれています。TOZの中盤までのパーティーメンバーはスレイとアリーシャ以外が天族という普通の人間には見えない種族で、アリーシャは初めスレイ以外のパーティーメンバーを見ることができないのですが、スレイが導師としての力を身に着けることで徐々に天族が見えるようになります。

 序盤にスレイの育ての親である天族が、スレイが他の人間と生きることを良しとしない理由を「同じものを見て、聞くことができなければ真の仲間とは呼べない」と語るのですが、その言葉をなぞってアリーシャがスレイと同じように天族の姿を見て天族の声を聞くことができるようになる過程は、見ていて心が温まります。

 このようにかなり丁寧に描かれてきたアリーシャとの交流は、先述した「従士契約の反動」という設定で突然ぶった切られます。問題なのは、この従士契約の反動という設定について作中で明確な説明が無いことです。

 パーティーメンバーの離脱というのは、RPGにおいてかなり衝撃的な出来事です。そのため、離脱の際には死亡や裏切りといった大きな理由が用意されているのが普通です。後述するデゼルも、そういった理由でパーティーを離脱した一人です。

 アリーシャが離脱するときに気になるのは、パーティーメンバーが離脱する程の問題である従士契約の反動とはどんな現象なんだろう?ということです。どういった理屈で起こる現象なのか、解決策は無いのか、歴代の導師と従士がこの問題に直面したことはないのか、様々な疑問が浮かびます。

 しかし、それらに関する説明はほとんど無いままアリーシャは申し訳なさそうにパーティーを離脱し、スレイたちもそれを受け入れます。初めてこの展開を見たときは驚きすぎて思わずデータロードしてもう一度この場面を見直しました。現時点では説明が無くても後々説明があるのかと思えばそれもありませんでした。

 従士契約の反動が納得のいく理屈で起こったものであり、解決策も無く、歴代の導師も避けられなかった問題だと本編で充分に語られていればアリーシャの離脱にも納得できます。しかし、そういったものが無い以上アリーシャの離脱はどうしても唐突かつ理不尽に感じてしまうイベントになっています。もしかしたら攻略本やDLCや外伝系の作品を見ればアリーシャ離脱回りの説明が書いてあるのかもしれませんが、それらはあくまでも補足であるべきで本編に必要な情報は本編で提示してほしいです。TOZのみならず様々な作品に言えることですが、本編以外のものを見ないと意味が分からない物語はそもそも物語として成立していません。

 アリーシャ離脱の違和感に追い打ちをかけるのが、彼女の厳しい境遇です。アリーシャは王族の末席に名を連ねているお姫様なのですが、両親を亡くし後ろ盾も無く停戦を唱え、戦争推進派が多い国の権力者に疎まれています。アリーシャが疎まれている光景をスレイたちも目にしています。そういったアリーシャをパーティーメンバーが特に心配することもなく国に帰ることを了承するというのが、アリーシャ離脱の理不尽さを強めます。

 アリーシャ離脱イベントの問題点は、アリーシャが離脱したことそのものではありません。大多数の人がアリーシャの離脱に納得できるようなしっかりしたフォローが理屈の面でも感情の面でもほとんど無いことが問題なのだと思います。


 次に、ロゼの加入についてです。

 アリーシャと別れた後、アリーシャを人質にとられたスレイは導師の力を利用しようとする権力者によって無理やり戦争に参加させられます。人々の負の感情が集まった戦場で、スレイは今作のラスボスであるヘルダルフに出会い、危機に陥ります。そんなピンチを表向きは商人でありながら裏で暗殺者として動いていたロゼに助けられたことを切欠に、ロゼがパーティーに加入します。

 ロゼ加入時のシナリオの問題点は、ロゼが加入する理由となる高い能力について充分な説明が無い点です。

 ロゼに助けられた後、ロゼを見た仲間の天族は「ロゼは高い能力を持っているから従士契約をしても反動が起こらないだろう。人間の世界でスレイが孤立しないためにも、仲間にした方が良いと思う」という話をします。そしてその後、ロゼは従士契約を結んでパーティーに加入します。

 ロゼ加入がアリーシャ離脱直後なこともあり、やはり気になるのは「何故ロゼがそれ程までに高い能力を持っているんだろう」という点です。スレイが導師になるほどの能力を持っていることには、幼い頃から天族と暮らしてきたからという理由があります。従士契約をしても全く問題が無いほどの能力を持っているなら、それ相応の理由があるんだろうと想像していました。

 しかし、ロゼが高い能力を持っていることについて明確な説明はやっぱりありません。全く説明が無いわけではなく、一応「暗殺者でありながら自分なりの意思を持って殺しをしているため穢れを生まないから」などの説明はあるのですが、肝心の「自分なりの意思を持って殺しをしている」という点について掘り下げがもう少し欲しかったように思います。ロゼが悪人を殺すことについては物語の中で何度か触れられるのですが、どの会話にもしっかり納得できるほどの説明は無かったと個人的には感じました。後述しますが、ロゼの「浄化できない悪は殺さなければならない」という思想に対して明確な対立意見があればもう少し説得力が増したのかな、と思います。ヒロイン問題と同時に語られがちな「ロゼが過剰に持ち上げられる」といった評価についても、偏にこの説明不足が起因しています。


 このように明確な説明が足りないアリーシャ離脱とロゼ加入ですが、シナリオでやりたかったこと自体は何となく理解できます。推測になりますが、「パーティーメンバーの中で唯一の人間だったアリーシャと別れた上、導師の強大な力を使って戦争に手を貸したことで他の人間から孤立してしまったスレイが、同程度の能力を持ったロゼと出会い独りではなくなる」というのが恐らくシナリオでやりたかったことだと思います。こういった展開自体は導師の孤独を表現する展開として良いと思います。

 しかし、この展開において重要なアリーシャ離脱とロゼ加入が上記の通り説明不足なために、「よくわからない従士契約の反動という設定で高い能力が無いアリーシャはパーティー離脱を余儀なくされ、理由はわからないが何故か高い能力を持ったロゼが代わりに加入する」という心象を抱いても仕方ない状態になっています。シナリオでやりたいことに対するキャラクターの動かし方と、それに関する描写の不足が良くなかったと思います。


 アリーシャ離脱とロゼ加入は物語中盤での出来事ですが、TOZを最後までプレイするとアリーシャとロゼのそれぞれが眠りについたスレイに思いを馳せ、前を向いて進む姿が見られます。他のシリーズ作品では主人公とヒロインの組み合わせになることが多い決戦前夜会話も、TOZでは主人公の親友であるミクリオが担当しています。明確な恋愛描写が比較的薄いことからも、シナリオとしてはアリーシャとロゼのどちらがヒロインと明確に定める意図は無いのかな、と個人的には感じました。(他の派生作品などを見ていないため現在公式がどういった姿勢なのかは分からないのですが、とりあえず本編を見て感じた感想です)

 TOZのヒロイン問題は、シナリオの説明不足とその他の外的要因(発売前のマーケティングのすり合わせ、発売後の公式の様々な対応など)が重なってヒロイン問題に発展したのではないかと思います。ざっくりまとめると、シナリオの展開や発売前後の公式の動きが多くの人にとって納得できるものではなかったというヒロイン問題以前の根本的な問題に立ち返るんじゃないかと思います。

パーティーメンバーがアリーシャの悪口を言う?

  「アリーシャが離脱した後、パーティーメンバーがアリーシャの悪口を言うらしい」というのもプレイ前に何度か耳にした噂です。結論を言えば、これに関しては流石に誇張表現だと思います。

 パーティーメンバーがアリーシャの悪口を言うといった評価に関してよく引き合いに出されるのが、「アリーシャは真の仲間ではない」という話です。この言葉の大元は、先述した通りスレイの育ての親である天族が言った「同じものを見て、聞くことができなければ真の仲間とは呼べない」という言葉です。外の世界を気にするスレイに、スレイと違って天族が見えない普通の人間と暮らすことはスレイにとって辛いだろうと諭す意図を持った台詞になっています。


 こういった言葉が何故「アリーシャは真の仲間ではない」という言説に繋がるのかというと、ロゼを仲間に誘う際にパーティーメンバーがこの言葉を口にするからです。

 ロゼを旅に誘うとき、スレイとパーティーメンバーは話し合いをします。その話し合いは以下のようなものです。

画像3

画像4


 この会話の直前に説明不足なアリーシャ離脱があったため、あたかもパーティーメンバーが「スレイと同じものを見て聞くことができないアリーシャは真の仲間ではない」と言っているかのように見えてしまう面があるのは否めません。しかし、パーティーメンバーの発言の意図はアリーシャを貶めることでは無いと思います。

 まず、「同じものを見て、聞くことができる真の仲間だよ」というミクリオの言葉についてです。物語の序盤、ミクリオはアリーシャがパーティーに加入した際に「アリーシャが仲間になってくれて良かった。僕たち天族は、どれだけ付き合いが長くてもスレイと同じものを見ているとは限らないから」と話します。そしてその言葉をなぞるようにアリーシャはスレイと同じものを見聞きできるようになっていく、というのが序盤のシナリオです。こういった同じものを見聞きできるようになっていく丁寧な過程を突然明確な説明も無くぶった切ったシナリオの意図は私にはよくわかりませんでしたが、少なくともミクリオは、同じものを見聞きできるアリーシャがスレイの隣にいる光景と、その後アリーシャと別れたことで孤立したスレイを見ていたからこそ、改めて「スレイの隣にはアリーシャのように同じものを見聞きできる人間が必要だ」という話をしているのだと思います。

 ライラの「アリーシャさんの時のように従士の代償でお互い苦しむこともないと思いますわ」という説明も、従士契約の反動に負い目を感じているアリーシャとアリーシャを導師の責務に巻き込んだことを心苦しく思うスレイを慮る気持ちがあるからこその言葉だと思います。

 ただ、初めに書いたように直前の説明不足と話し合いの中で使われている言葉の言い回しから、パーティーメンバーがアリーシャを貶しているんじゃないかと勘ぐってしまうような会話になってしまっている面も確かにあると思います。


戦闘のカメラワークが良くない

 戦闘システムについての不満でよく耳にしていたのが、カメラワークについてです。私はゲームにおいてあまり戦闘システムにこだわりが無いためそこまで気にならなかったのですが、確かに壁際に寄ったときや敵が密集しているときなどカメラワークが荒ぶるな、と感じました。

 そもそもこの「壁際に寄ったとき」「敵が密集しているとき」という事態が発生するのは、TOZの戦闘の特徴である敵とエンカウントしたらその場で戦闘が始まるというシステムによるものです。曲がり角でエンカウントしたら曲がり角で、坂道でエンカウントしたら坂道でそのまま戦闘することになります。スレイが見ている景色そのままを見られるという点では楽しかったのですが、複雑な地形だったり敵が複数体出てくるときは動きづらいと感じました。

 戦闘にこだわりがほぼ無い自分でも少し気になるな、と感じたので、戦闘を重視していたりカメラワークを普通に気にする人にとっては結構気になるかもしれないと思います。


 よく聞いていた評判や噂はこの辺りです。その他によく耳にしていたのは制作側の様々な媒体での発言に関してですが、これらについてはゲーム本編と異なり実際にその媒体を見ていないと正確に判断できないため割愛します。

 ただ、ゲームの発売直後に後日談をDLCで売るのは流石に良くないと思います。DLCはあくまでも好きだと思った作品のために購入するものであり、未完成の作品を完成させるために買うものではありません。



2.ストーリーの良かった点・悪かった点

 ここでは、上記で書いたもの以外のシナリオの良かった点や悪かった点を書いていきます。

良かった点

スレイとミクリオのすれ違いの仲を取り持つライラ

 物語の序盤に、穢れを浄化するため導師として旅立ったスレイは、穢れを浄化する力を持たないミクリオに「危険な目に遭ってほしくない」という思いから戦闘に参加しないよう声をかけます。それに対してミクリオは「僕は足手まといになるためについてきたんじゃない」と怒り、浄化の力を手に入れるためライラと陪神契約を結ぼうとし、それを止めるスレイと仲違いをします。スレイには導師の役目にミクリオを巻き込みたくないという思いがあり、ミクリオには導師になったスレイの隣で手助けをしたいという思いがある、相手を思いやるが故のすれ違いです。

 こういった二人の仲違いに対し、ライラは「歴代の導師と友人の天族が必ずぶつかる問題なんですよ」と言って、間に入り二人の仲を取り持ちます。導師や従士が天族の力を借りるときには天族の真名を呼ぶ必要があり、スレイは本編中でライラの真名を教えてもらいます。そしてミクリオがスレイに力を貸すとき、ライラがミクリオにスレイへ真名を教えるよう促すのですが、二人はライラに対して「そんなのとっくに!」「知ってるって!」と返します。

 導師と天族という間柄が無くとも真名を教えるくらいには仲の良い二人の付き合いの長さと、多くの導師を見守ってきたライラの優しさが3人の会話から伝わってくる、とても好きな場面です。


戦場でのスレイの孤独を表す表現

 先述したアリーシャ離脱とロゼ加入の合間に起こる戦争での出来事ですが、ここでのカメラを駆使したスレイの孤立を表す表現はとても好きです。

 スレイは戦争が起きる直前に知り合った傭兵団を助けるため、戦争で導師の力を使って兵士を退けます。このときスレイの視点からは天族と共に戦い神依で姿を変えて戦っているのですが、スレイと同じものが見えない傭兵団からはスレイが一人かつほぼ生身で多くの兵士を退けているように見えます。こうした見えるものの違いが、スレイの目に映っている景色と傭兵団の目に映っている景色を交互に映すことで表現されています。

 スレイは兵を退けたあと助けた傭兵団に声をかけるのですが、傭兵団の明らかに怯えている目を見て「無事で良かった」と寂しそうに笑いその場を後にします。その場を去るときもスレイは天族の仲間と一緒にいるのですが、傭兵団からはスレイがずっと一人でいるように見えています。「同じものを見て、聞くことができなければ真の仲間とは呼べない」という言葉を痛感する、とても良い表現だと思います。


地の神殿のエドナ

 地の神殿で加護天族から秘力を教えてもらうとき、あざとい幼女ムーヴで切り抜けようとした後、試練に関係のある怪物にメンチを切り、その後怪物の正体を知って「怖がらせてごめんね」と優しく語りかけるエドナのいろんな一面が見られて楽しかったです。こういった場面を見るたびに、声優さんが沢山喋ってキャラクターに命を吹き込んでくれるテイルズシリーズが好きだな、と感じます。


デゼル離脱とザビーダ加入

 デゼルとザビーダの戦い方が似ている、二人とも風の天族であるといった情報が出てきた辺りからデゼル離脱ザビーダ加入を何となく察し、アリーシャ離脱ロゼ加入回りの説明不足を思い出して相当身構えていたのですが、良い処理になっていたんじゃないかと思います。 かつて自分のせいでめちゃくちゃにしてしまった風の傭兵団を命を賭けて今度こそ守ったデゼルと、デゼルが友人から引き継いだ帽子をそのまま引き継いでパーティーに加入するザビーダが良かったです。ザビーダが加入した後のスキットも真面目な話と雑談が交互にあり、自然とザビーダを好きになれる会話が多かったです。

 また、ロゼの会話の端々から家族を大切に思っていることが伝わってくるところが好きだったので、今まで姿は見えなかったけれどデゼルもロゼの家族の一員だったんだな、と感じられる二人の最後のやりとりも好きです。

 ただ、デゼルの過去回想で天族の加護が不幸をもたらすこともあるといったそれまで出ていなかった設定が突然出てきたり5年前の話である筈なのにロゼの3Dモデルが現在の姿の使いまわしだったり全体的にどういう展開なのか一瞬分からず置いてけぼりになりかけたのでもう少しちゃんと説明があっても良かったと思います。


アリーシャの背を押すスレイ

 尊敬していた師匠を手にかけた後、普段の気丈な口調が崩れて子供のように泣いて弱音を吐くアリーシャと、そんなアリーシャの背を押すスレイの場面がとても好きです。

 どれだけ辛い目に遭っていいことが一つも無くても、師匠から教わった騎士の在り方を捨てられず「民を守るために戦争を止めたいと思ってしまう」と吐露するアリーシャを、「師匠の言葉が嘘だとしても、その言葉を受け止めたアリーシャの気持ちは本物だろ?」と励まし背を押すスレイが良かったです。物語の初めに何も知らないスレイの背をアリーシャが押したのと対照的に、世界を知りアリーシャと同じ目の前のものを救いたいのにうまくいかない苦しみを知ったスレイが今度はアリーシャの背中を押す構図が良いなと思いました。


悪かった点

パーティーメンバーの掘り下げが少ない

 他のテイルズ作品だと各キャラクターにそれぞれが中心となる本編でのイベントやサブイベントが用意されており、そこからキャラクターが掘り下げられることが多いのですが、TOZはそういったイベントが少ないように感じました。キャラクターのデザインや設定、声優さんの演技が全員良かっただけに、もっと色んな一面を見てみたかったと感じました。


敵の掘り下げが少ない

 アリーシャの師匠であるマルトランや何度か敵対することになるサイモンなどが、敵のボスであるヘルダルフの理想に共感し力を貸しているらしい発言をするのですが、何故ヘルダルフの理想に共感したのか?といった理由が詳細に語られなかったのが残念でした。サイモンがデゼルと同じく不幸を与えてしまう天族であるが故にヘルダルフに力を貸していたらしい、というところまでは何となく分かったのですが、何故そこまでヘルダルフに心酔しているのかの事情は分かりませんでした。

 敵側にも過去があり事情があり正義がある、というのがテイルズ作品の醍醐味の一つだと思っているので、彼女たちの最低限の事情を知りたかったです。


スレイの出した結論とロゼに対する対立意見の不足

 暗殺者であるロゼが仲間になったことで度々出てくる話題が「スレイの仕事は生かすこと、ロゼの仕事は殺すこと」という話です。スレイは導師として命を救いたいと考えており、ロゼは暗殺者として救いようのない悪は殺すしかないと考えています。また、ロゼは「そういった断罪のための殺しが必要ないのが一番良い」とも考えており、ロゼに人を殺してほしくないというスレイの考えに感謝しています。

 しかし、こういった流れから一転スレイは最終的に「浄化できない穢れは殺すことで救うしかない」という結論に行きついてしまいます。初めてそれを見たときはアリーシャ離脱時と同じく見間違いかと思ってデータロードして見直しました。そしてこの結論通り最後にはラスボスのヘルダルフを殺します。

 確かに現実的には自分が悪だという自覚がない悪人を救うのは難しいかもしれません。スレイのような結論に行きついてしまうことも現実にはあるかもしれません。しかし、TOZはファンタジーRPGであり、旅の始まりも世界を救う導師になるといった困難でありながら希望のある未来に向かう話だった筈です。テイルズシリーズという作品の原点回帰を謳ったファンタジー作品の世界でまで、現実的な諦めによる結論を出す主人公の姿を見たいとは少なくとも私は思いません。

 また、スレイの「命を救いたい」という考えはロゼやザビーダの「殺すことでしか救えないものもある」という考えに対立し、作品内の価値観のバランスをとる役割もあった筈です。そのスレイの考えがロゼやザビーダの考えに寄ってしまうとバランスが悪いと感じます。そしてスレイがこの結論を出してからの本編やサブイベントではとにかく人が死に、最終的にドラゴン2体(TOZ世界のドラゴンは天族が穢れによって姿を変えた存在です)とスレイの育ての親とラスボスまで殺さなければならないので心が死にかけました。

 人の死は作品のシリアスさや悲惨さ、感動を表現するために手っ取り早いものではありますが、とにかく乱発すれば良いものでもないと感じます。人の死が悲しいのは、その人が死んだからではありません。その人が生きたから死が悲しいのです。生の重みを充分に表現しないことには、死だけを描いても悲しさや辛さというよりただ陰惨なものを見せられている息苦しさが先行してしまうと思いました。


アイゼンのサブイベント

 スレイたちがエドナを旅に誘うとき、「ドラゴンになったお兄さんを助ける方法を探す」という約束をして仲間になるのですが、スレイたちがドラゴンを元に戻す方法を模索するイベントのようなものが無いのが気になりました。

 ティアマットと戦い、ドラゴンを救う方法は殺すしかないと悟り、アイゼン自身もそれを望んでいたという流れは理解できます。しかし、エドナと本編で約束を交わした以上は、たとえ救う方法が無かったとしても救う方法を探す描写が欲しかったです。本編で交わしたかなり重要な約束の結末がサブイベント扱いになるというのも個人的には気になりました。テイルズシリーズには本編、スキット、サブイベントと情報を出す場面が多くどこにどの情報を配置するのか選別するのが難しいのかな、と感じることはあるのですが、最低限必要な話や情報はどうにか本編に入れてほしいところです。


 その他にもデゼルが失明した理由は結局何だったのかとか導師は200年前から今まで出現しなかった筈なのにスレイとミクリオの親世代(約20年前)にスレイの先代にあたる導師がいるのは何故なのかとか風の骨は暗殺対象をちゃんと調べてから暗殺を請け負う筈なのによく知らないスレイを殺そうとしたのは何故なのかとか全ての穢れの大元である筈のヘルダルフが20年前に憑魔にされた元人間なのは何故かとか天族の力を利用した仕掛けでしか上れない筈の風の神殿に普通の人間が上っているのは何故かとか最終戦で使用したジークフリートの詳しい解説は無いのかとか色々気になるところはあるのですが流します。深読みしたり本編外のコンテンツを探せば分かるかもしれませんが、深読みは「深く読んだら更に面白いだろう」と思うからするものであり、よくわからないものを面白くするためにするものではありません。


3.その他システム等の良かった点と悪かった点

良かった点

BGM

 BGMに良い曲がとても多かったです。特に地水火風の神殿の曲は火は情熱的、水は清廉などそれぞれの属性のイメージに合わせた曲でありながら同じフレーズを使っているという非常に完成度の高いものだったと思います。BGMが良かったので探索も楽しく進めることができました。


初めて戦うモンスターと出会ったときのチャット

 初めて戦うモンスターとの戦闘に入ったとき、そのモンスターについてキャラクターが喋るチャットが発生します。モンスターの弱点に関係するものや単なる雑談など、聞いていて楽しかったです。キャラクターのことを更に好きになれる良いシステムだと思います。



悪かった点

スキットが宿屋やセーブポイントでしか発生しない

 プレイしたテイルズシリーズの中で、TOZの次に新しい作品がTOVなのでその間の作品がどうなっているかは分からないのですが、スキットが道中で発生するのではなく宿屋やセーブポイントに行かないと見られないのが気になりました。特に宿屋のスキットはタイミングを逃すと見られなくなるものが多く、他作品のように宿屋で発生するスキットが1個や2個ということもないため、お金を払って宿屋に連泊してスキットを回収しなければならないのが不便でした。また、スキットで本編に必要な情報を入れるのであれば道中でスキットが発生する方が見逃しにくくて良いんじゃないかと思います。


移動に所持金の割合を参照したお金を払わなければならない

 TOZには他のシリーズ作品のような空を飛ぶ移動手段が無く、代わりにセーブポイントとセーブポイントの間を自由に行き来できます。しかし、移動するためにはお金を払わなければいけません。それが決まった金額ならまだ良いのですが、所持金の何割かを払わなければならないためたくさんお金を持っていればいるほどお金をとられます。一応払うお金を少なくする方法もあるのですが、戦闘でGRADEを得るという結構面倒な方法になっています。他のシリーズ作品では無料でできたことが有料になると、どうしても不自由さを感じてしまいます。


称号衣装が少ない

 作中のサブイベントをこなして称号衣装を手に入れるのがテイルズシリーズの楽しみの一つだったのですが、本編で手に入れられる称号衣装がかなり少なかったです。一部のキャラクターは普段の服装の色違い衣装しかありません。称号衣装はそれにまつわるイベントも含めて好きという面があるので、あまりDLCでばかり売られると寂しいなと感じます。その分ソフトにお金は払うので、最低でも何着かは本編で入手できるようにしてほしいと個人的には思っています。


まとめ

 こうしてまとめてみるとかなり否定寄りになったと感じるTOZの評価ですが、総評としては、「広く騒がれているほど全面的に悪いばかりの作品ではないが、炎上騒動などを抜きにしても手放しに褒められる完成度でもない」といった感じです。私は特にシナリオを重視して評価しましたが、他のテイルズシリーズのシナリオがかなり面白いものや、とても完成度が高いわけではなくとも最低限シナリオがやりたいことに対するキャラクターの動かし方が真っ当でそれに関する説明もあったことから否定寄りの評価になっている面もあり、もっと広く見渡してみれば普通によくあるシナリオの完成度だと思います。

 繰り返しますが個人の意見なので、実態を知りたければ実際に遊んでみるのが一番良いと思いますし(ただ、私がこの作品を人に勧めるかというと勧めないと思います)、TOZを手放しに面白かったと感じる意見を否定する意図もありません。

 長くなりましたが、こうして色々考える切欠になったので結果としてTOZを遊んで良かったかな、と思います。TOZの魅力的なキャラクターに出会い彼らのことを知れたのも嬉しかったです。次はTOZと世界観が繋がっているらしいTOBを遊ぶ予定なので、とても楽しみです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?