今回は「チャーンドーギヤ・ウパニシャッド」や「ブリハドアーラニヤカ・ウパニシャッド」等に登場する「五火二道説」がテーマです。この思想の原点は、意外にもバラモン(司祭)階級ではなく、クシャトリア(武士王候)階級の思想です。
ここで、輪廻の主体となっている霊魂(アートマン)は、宿る個体の死後、生物圏を脱して、大気圏→宇宙(月)→大気圏→水圏・地圏→生物圏と循環しています。高等生物として生まれるだけの功徳を前世で積んだ魂は、生物圏において独立栄養生物→従属栄養生物という経路で、再びこの世へ戻って来れることになります。
「五火二道」の「二道」は「解脱の神々の道」と「輪廻の祖霊の道」を示します。一方の「五火」とは「世界・雨雲・大地・男・女」を祭火に例えたものです。
釈尊もクシャトリア(武士王候)階級出身なので、この思想を知っていたのではないかと考えられますが、原始仏典の中には未登場のようです。