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落ちる

  先日、キングオブコントの会という番組を見た。ダウンタウンの松本さんをお目当てに。コント≪落ちる≫を見ていたとき、ああっと思った。チェッカーズの曲だ!!けれど曲名がどうしても思い出せない。スマホにチェッカーズと打ち込んだ。すぐに出た。『俺たちのロカビリーナイト』。

  いまの子は知らないかもしれないけど、昔、チェッカーズというバンドがいた。アイドルグループを名乗る本格的なバンド。バラードやミディアムテンポ、アップテンポの曲。涙のリクエスト、星屑のステージ、ギザギザハートの子守唄、ジュリアに傷心、夜明けのブレス、あの娘とスキャンダル。などなど。などなど。そのなかの『ギザギザハートの子守唄』という曲名を思い出したとき、あることが脳裏に浮かんだ。 今はヤンキーというけれど、昔は不良と言った。年の離れた従姉妹が中学校に通っていたころは、廊下を自転車が走るくらい荒れた時代だったらしい。近所には3つか4つ年上の男の子がいた。小学校に入学し集団登校をしていたころ、わたしは彼に手を引かれて通学した。その彼がいわゆる、不良になったのは中学校を出るか出ないかのころ。彼の最期はその歌詞に少し似ていて、不良仲間と乗っていた車で事故をおこして即死した。いまのように納棺師はいず、簡易的な処理しかしてなかったらしい。お通夜に同席し、ふとんに横たわる彼を見た父親はそのありさまに絶句したとか。

  チェッカーの曲がヒットチャートを騒がしていたときわたしは中学生だった。勉強をしたくないとか、バスケをやりたくないとか(ボールを使う競技が子供のころから苦手だった)、水泳をしたくないとか(同じく子供のころから金づちだった)、そもそも学校に行きたくないとか、そんなことを毎日のようにぐちっていた。でも今こんな風に自堕落でマンネリな生活をしているせいか、あの頃は充実していたなとつくづく思う。文句を言いながらも学校に毎日行き、クラスメイトとは付かず離れずの関係を築き、先生に怒られない程度の成績を取るとこに努めていたけど。

   期せずしてそんな風に最期を迎えた彼から目を背けている。

   ≪落ちる≫を何度も見た。そんなことを考えながら。