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なくて七癖

  かわいいですね、きれいですねって言葉を口癖のように言う。

   無意識に言っちゃうんだ。おはようやこんにちは、こんばんはと同じように。どうしてかなあ。昔、販売員をしていた名残かなあ。

   ある日、病院に行った。腰がいたくて注射を打ってもらうために。そこにいたのが、童顔のとにかくかわいい顔だちをした看護師さんだった。ああ、かわいいな。医師の話しなんて聞かずに、彼女の顔ばかり見ていた。ほんとに可愛いや。診察室には医師もいたけど、オレは彼女に声を向けた。「おねえさん、かわいいですね」時代が許せば年齢やどこに住んでるのとか彼氏がいるかどうか尋ねると思う。突然の告白に彼女はきょとんとしていた。「かわいいってほめられてるよ」医師はからかうように笑って言った。彼女は真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。

   翌月に来院したとき、今度は耳元で「やっぱりかわいいね」。彼女はやっぱり顔を真っ赤にした。

   けれど病院を出たころときには、そんなことは忘れてしまっていた。ある日、街中でこんにちはと女性に声をかけられた。看護師さんかな、カフェや服屋さんの店員さんか街中で声をかけた女性かな。思い出せないや。生粋の女好きではないけど、なんだろう、素直なだけ。子供みたいに、頭で思ったことを口から出ちゃうだけ。こんなだから本命の子に誤解されて、彼女ができないのかな。

  どうにかならんもんかな。ま、いっか。だって誰かを傷つけている訳じゃないから。


❇️読んでいただいてありがとうございます。前半は実体験です。かわいい子がいると、ついつい、かわいいですねと言ってしまいます。大昔からです、なくて七癖です。ありがとうという人もいれば、キョトンとする人もいますが。きっと思いを伝えたいのでしょうね。元接客員の弊害なのでしょう😢😥