俺、仕事辞めたんだ
「これからどうするの?」
「これから・・・友だちが喫茶店やってるからそこでしばらく働かせてもらう」
「ふーん・・・で、それから?」
「それからってなに?」
「それからはそれからだよ。ずっとその友だちんとこで働くってわけじゃないんでしょ?なんか仕事他に探すんでしょ?」
「まあ・・・そのつもりではあるけど」
「業界は辞めないんでしょ?」
「え?」
「出版で仕事は探すんでしょ?」
「うーん・・・今のとこわかんないかな」
「違う業界ってどういうの?」
「ちょっと待ってよ。そういうこと今考える期間としてつくってるわけよ。そうやって焦って仕事探して今まで納得いかないまま就職して失敗してきたわけだからさ、今回はじっくり腰を据えて考えたいんだよ。将来のこととかも含め・・・」
「将来のことって結婚ってこと?」
「いや、そうは言ってないじゃん」
「そうじゃないんだ?」
「そうかもしれないけど・・・そうじゃないような・・・仕事のことだよ、今後のこと」
「それさ、前も辞めたとき言ってなかった?」
「・・・・・」
「何回繰り返すのさ・・・べつに働いて私と結婚して養えなんて言ってないよ?でもさ、こうやっていっしょにいる人がフラフラしてたらさ、こっちも不安だよ」
「次は大丈夫だよ」
「たぶん、今回だけじゃないな・・・このままだったらまた転職したい衝動が湧いてくると思う。地道な積み重ねだよ、なんでも。劇的に向上することもないもんだし、着実に地味~な作業の繰り返しだよ。それを安定してはじき出せる忍耐力がその人の本質を築き上げていくもんだと思う」
「もしかして仕事辞めようとしてたのに、俺に先に言われた感じ?」
「・・・・・ばれた?」