ジェネリック医薬品について思う事

ジェネリック医薬品の品質に、改めてクエスチョンがでるケースだった。

2020/12/10に小林化工が製造するイトラコナゾール錠 50「MEEK」を使用しや女性患者さんが亡くなったとのこと。睡眠成分の混入と死亡との因果関係は現在調査中。「死亡」という重大な転帰(結果)のインパクトも大きいけど、ジェネリック医薬品の品質に対して、新薬を開発している僕個人の感想は「使いたくない」ということ。

今回の事例は、出荷時の品質検査の結果で判明したのではなく、イトラコナゾール錠 50「MEEK」を服用した患者さんからの副作用報告だったとのこと。副作用が現れるということは、かなり高い濃度の成分が混ざっているということ。日経新聞には以下の記事があった(抜粋、全文はこちら)。

福井県によると、県に副作用として報告があった、意識消失や記憶喪失などの症状133件のうち、入院が確認された事例は、既に退院したケースも含め34件に上る。影響とみられる、車などの運転中の事故は計16件あったという。
同社によると、服用直後に意識がなくなり救急搬送されたり、運転中に意識消失して中央分離帯に接触したりしたケースが判明している。退院後に服薬を再開し、症状が繰り返した例もあったという。
一部ロットの原料を継ぎ足す作業で、担当者が主成分と睡眠導入剤成分「リルマザホン塩酸塩水和物」を取り違えた。継ぎ足し作業は厚生労働省の承認を得ていない製造工程だった。同社は継ぎ足し作業をしていたイトラコナゾール錠50、同100、同200で有効期限内の全ロット回収を進めている。
イトラコナゾール錠は医療用医薬品の経口抗真菌剤。同社によると、1錠当たりで最大投与量の2.5倍に当たる睡眠導入剤成分が混入した。

ただ、ジェネリック医薬品が公的皆保険制度の中で果たす財政上の役割は否定しないし、一定の価値を有していることも認める。政府は調剤薬局にジェネリックを推進するための圧力をかけているので、各調剤薬局は基本的にジェネリックを処方することになる。もちろん患者さんには選択できる余地があるけど、ジェネリックのリスクとベネフィットは患者さん個人だけではないということを理解した方が良さそうだ(ジェネリックを選択することで得られるベネフィットは患者さんと政府の金銭的な面があるけど、リスクは患者さんだけが受ける副作用(効果がないということも副作用の一つである)ことになる)。

個人的には、単発の事象(風邪とか一過性の頭痛など)などでジェネリックを使うことはあまりメリットを感じない。ジェネリックがその価値を最大化するのは、慢性疾患に対する治療(高血圧、高脂血漿、糖尿病など)と思われる。なので、患者さん自身も自分の状態をよくよく考えて、本当にジェネリックが適切なのか、先発品(ジェネリックではない新薬)が適切なのか考えた方が良さそう。

ちなみに、先発品はヒトでの有効性と安全性をきちんと評価しているけど、ジェネリックは生物学的同等性試験しか行わない。なので、本当に効果があるかどうかはわからない部分があるし、販売時点では副作用についても先発品での副作用情報しか分かっていない。まぁ、同じ量の有効成分が入っているなら効果も同じでしょ、ということなのだろうが、患者さんが知っている情報には非対称性があるように思う。自分の健康は自分で守るしかないということか。

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