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【吃音】保護者の不安を取り除くには-分けて考えるべき2つの要因-

「気がついたら、急に吃音がみられるようになっていました。どうしたら良いかとインターネットで調べていたら、いろいろなことが書いてあって、心配になってきました。祖父母からは『あなたの育て方が悪かったんじゃない?』と言われて、私のせいかな…と不安になりました。何があっても叱らないように、優しく接したほうが良いでしょうか?叱ったほうが良い場面でも叱らないとなると、聞き分けのない子に育ってしまいそうで…」

上記のような、
○ 急に吃音がみられ始めたので、驚いた
○ インターネットで情報を調べていたら、さらに心配になった
○ 祖父母など周囲の方から『あなたのせいでは?』と言われて、落ち込んだ、辛くなった
○ どんな場面でも叱らないほうが良いか、でも社会性のない子に育ってしまわないか心配になる

という悩みは、実際の相談現場でも多く聞かれます。

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ここで大事なのは、吃音の発症原因として考えられていること(発症時)症状の悪化要因(発症後)分けて考えることです。

【吃音の発症原因として考えられていること】発症時

1.元々吃音になりやすい体質を持っていた
2.急激な言語発達の副産物

家族や親戚に吃音のある方がいても吃音にならない子もいれば、家族や親戚に吃音のある方がいなくても吃音になる子もいます。
これは、その子自身が持って生まれた体質によるものと考えられています。

2~5歳頃に発吃することが多いと言われていますが、ちょうどその時期に、言語能力が急激に発達する子がいます。「急にたくさんしゃべり出した」「今まで使わなかった難しい表現や単語を急に使うようになった」などがそれにあたります。
図のように、言語能力(脳)と発話能力(口)の差が大きくなるほど、吃音がみられやすくなります。つまり簡単に言うと、話そうとするスピード・タイミング・内容などに口がついていけていない状態です。
また、話す能力が低いのかと思われがちですが、話す能力は普通で、むしろ言語能力が高いからこそ、アンバランスになっているのだとも言えます。

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以上の要因からみると、そこに保護者の育て方の要素は全く入っていません。
吃音の発症に関しては、育て方は関係ないと言えます。

このような説明すると、保護者の心配や不安が軽くなるケースが多いように思います。

【症状の悪化要因】発症後

1.話し方に対する 指摘、否定、からかい、マネ、笑われる など
2.話している最中に さえぎる、割り込む、先取りをする、急かす
3.本人だけでなく周囲の人たちの 話すリズムや話すスピードが速い
4.本人や周囲の人たちの 無理解、不安、不要な心配をしすぎる
5.本人の キャパ(許容量)オーバー、本人や周囲の 要求が高い など

吃音がみられ始めて以降は、上記のことに注意していく必要があります。
発吃後においては、環境や接し方に正しい配慮をしていくことが重要です。
正しく適切に、が重要です)

1や2に関しては特に注意が必要で、これがあると症状が一気に悪化してしまうことが多いのです。そのため、幼稚園・保育園や学校の先生への情報提供をし、対処してもらうことがとても重要になってきます。
私の担当している吃音リハビリ外来では、幼稚園・保育園や学校の先生へ向けて、情報提供のお手紙を書くことも多くあります。
幼稚園・保育園や学校の先生にも、正しい知識や正しい対応方法を知ってもらうことが重要ですし、1や2がなくなれば「困り感」がなくなり、生活しやすくなります。

また、4に関わることとして、祖父母が心配しすぎたり、昔の感覚でものを言ってしまうということもあります。それも吃音のある子や保護者にとっては良くないことですので、やってはいけないこととして伝えると良いかと思います。

「どんな場面でも叱らないほうが良いか」について

叱ったほうが良い場面でも叱らないとなると、社会性の成長が確かに心配になります。
吃音のある子への接し方において重要なポイントは、話すことに関してだけは配慮する・叱らないということです。
その他のことは今まで通りで良いですし、例えば「友達を叩いてしまった」などは叱っても構わないのです。

これらの考え方を知るだけでも、保護者の方はだいぶ楽になるのではないでしょうか。

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