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【吃音】吃音になったのは、育て方が悪いわけじゃない、誰のせいでもない -歴史的大誤解を招いた『診断起因説』の真実-

皆さんは『診断起因説』というものをご存知でしょうか?
『診断起因説』とは、「吃音治療の父」とも呼ばれたアメリカの心理学者ウェンデル・ジョンソンが1942年に提唱したものです。

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実は、これが後世まで多くの誤解を招くことになるのです。

ウェンデル・ジョンソン本人は、5~6歳までは流暢だったと思っていました。ある日、先生から母親に「息子さんはどもり始めていますよ」と伝えられ、それ以降、吃音矯正をされたことをきっかけに彼は本当の吃音者となったと思い込み、吃音の発症原因が母親にあることを証明したかった。
後に『モンスター・スタディー』とよばれるその人体実験は、母親が吃音発症の原因だという仮説を実証するために、孤児院の子ども22名を対象に行われます。

吃音のある子 × 肯定的な反応をする 【A-1】群
吃音のある子 × 否定的な反応をする 【A-2】群
吃音のない子 × 肯定的な反応をする 【B-1】群
吃音のない子 × 否定的な反応をする 【B-2】群

22名の子どもを上記4つのグループに分け、マリー・テューダーとともに実験を行いました。2人が最も結果を重要視していたのが【B-2】群です。吃音のない子に対して、否定的な反応や言葉を与え続けることによって吃音になることを証明しようとしたのです。
それは、子どもたちに生涯にわたるトラウマを刻みつけるものでした。
そして、【B-2】群の6名中5名が吃音を発症したと報告し、吃音発症の原因が親にある(環境が100%原因)と提唱したのです。それが、『診断起因説』の正体です。

この実験は、2001年のカリフォルニアの新聞にて、元研究助手の証言で秘密の研究の詳細を暴露されるまでの62年もの間、隠蔽されます。
その後、大学は公開謝罪をし、6名には賠償金が支払われました。

映像で詳しく知りたい方は、フランケンシュタインの誘惑E+ 『モンスター・スタディー 史上最悪の心理学スキャンダル』をご覧になってみてください。

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現在は、『診断起因説(環境が100%原因)』は完全否定されています。
しかし、インターネットなどには未だにこのような古い情報が残っていて、それを信じてしまったり、昔の認識で話をしてしまう方がまだまだ多いのが現状です。
昔と最近とでは、考え方が大きく違います。その考え方の違いを知ることがとても大切です。

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たとえ、優しく育てたとしても、厳しく育てたとしても、
家族の誰かに吃音のある人がいても、家族の中には吃音のある人が全くいなくても、
どんな育て方をしても、どんな環境でも、吃音になるときはなるのです。
また、必ずなるものでもないのです。

最近は、元々吃音になりやすい体質を持っていたこと、そして、急激な言語発達の副産物とも言われています。
そこに、環境や遺伝の因子は含まれていないのです。

ですので、
「私の育て方が悪かったからでは…」と思わないでください。
「私に吃音があるから、子どもも吃音になったのでは…」と思わないでください。

吃音になったのは、決してあなたのせいではないのです。

正しい情報を多くの方に知っていただき、生きやすい世の中になってくれたらと思います。


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