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パティ・スミスの9年ぶり、8年ぶりの頃

前回の続き。
19、ハタチごろに聴いていたパティ・スミスは当時は過去の人で、まさか新譜が出るなんて思ってもいなかった。ネットなんてなかったので、もっぱら雑誌とかレコード屋の新譜情報で知るしかなかった頃だ。恐らく知ったのは「ロッキング・オン」だったと思う。

1988年にリリースされた"Dream Of Life"。輸入盤屋に並んだLPを買った。ついにリアルタイムで聴くパティ・スミス。

しかし・・・、悪くはないんだけど、期待していた音と違う。でもパティ・スミスなので良くない訳がない。そう思いながらそれなりに愛聴した。当時はそのモヤモヤがなんなのかよく分からなかったが、後年になってそれが何なのかは分かった。

Patti Smith / Dream Of Life (1988)
  1. People Have The Power

  2. Going Under

  3. Up There Down There

  4. Paths That Cross

  5. Dream Of Life

  6. Where Duty Calls

  7. Looking For You (I Was)

  8. The Jackson Song

いちどシーンから引退し、フレッド・ソニック・スミスと結婚をしたパティは出産をし、子育てと家事をしながら、絵を描き、本を読み、クラリネットを習うといった生活を送っていた。そこにはかつてのカミソリのような鋭さを持ったロッカーの姿は無い。

そしてこのアルバム、子を持つ母親となったパティによる、世界に向けた希望やポジティブな空気に終始している。音も力強く、暖かみを帯びている。恐らくそれが長らく俺が感じていたモヤモヤだったのだと思う。今回集中して聴いてようやく分かったという感じで、なんて俺は鈍感なのかと。そこはやはり子供を持たなかった者には感じづらいところなのかな。

アルバムが出たからといって、特にツアーなどは無く、人前で歌ったのも数えるほどだったようだ。このアルバムの制作中に2人目の子どもを産んでいる。また、1989年には元恋人でもあった写真家のロバート・メイプルソープが亡くなっている。

90年代最初のほうまでは、あくまでも家庭が中心で、きっととても幸せに過ごしていたのだろう。90年代半ばには夫フレッドとともに新しいアルバムの準備に取り掛かっていたが、1994年11月にフレッドは心不全で急死してしまう。そこから続くように、パティの弟のトッド、元パティ・スミス・グループのメンバーだったリチャード・ソウルと、近しい人たちが次々と亡くなってしまった。

とりわけフレッドの死はパティをどれだけ悲しませたことだろうか。想像しただけでも目頭が熱くなってくる。

そんな様々な死を経て、1996年にリリースされたのが"Gone Again"だった。

Patti Smith / Gone Again (1996)
  1. Gone Again

  2. Beneath The Southern Cross

  3. About A Boy

  4. My Madrigal

  5. Summer Cannibals

  6. Dead To The World

  7. Wing

  8. Ravens

  9. Wicked Messanger

  10. Fireflies

  11. Farewell Reel

もともとは環境問題などの地球規模のメッセージをテーマにしたアルバムになるはずだったが、死者への慈しみがメインとなったと、かつて雑誌等で読んだことがある。

しかしだからと言ってアルバムが暗くて悲しみに満ちたものかといったら、全然そうではないし、"Dream Of Life"とは違った力強さを感じる。愛する人たちがいなくなってしまったとはいえ、子供たちの未来のために生きていかないとならない、そんな決意を感じる。歌詞の内容はよくわかっていないけど。

1997年には初来日をしているが、俺はこの時は興味が別の方に向いていたので観に行ってなくて、いま思うとバカだろと思う。とはいえ、2001年、2002年とフジ・ロック・フェスティバルで2年続けて観ている。2001年のグリーン・ステージで観たパティは、俺がイメージしていた全盛期となんら変わらない姿で、"Frederick"を歌い終わったあとに空に向けて手を高く上げていたのがとても印象的だった。この時に、俺はこの人の音楽が好きで良かったと改めて思った。

以降、パティ・スミスは5枚のアルバムを出しているが、どれもクオリティが高く、当然ながら駄作なんて1枚も無い。

そして最近になって俺が聴いているのがこれ。

Patti Smith / Horses Legacy Edition (2005)

1stアルバム"Horses"のリリースから30年後の2005年に出たレガシー・エディション。ディスク1は通常のアルバムで("My Generation"がボートラ)、ディスク2は2005年にアルバムを再現したライヴバージョンでの収録というもの。

前は「いや、ライヴよりもスタジオ盤のほうが良いでしょ」なんて理由で入手するタイミングを逃していたが、このハマっているときに中古盤だけど入手。ライヴがすげえ良い・・・、何でもっと早く聴かなかったんだろう。

と、考えていたら、来年2025年は"Horses"リリースから50周年。2015年にも40周年を記念して全曲ライヴやっているんだから、来年も期待してしまう。しかしそうは言ってもパティもすでに77歳だからな・・・。

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