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<書評>戦後沖縄の政治と社会――「保守」と「革新」の歴史的位相

◆編著 平良好利/高江洲昌哉
    小濱武/秋山道宏/小松寛/川手摂/櫻澤誠
◆出版 吉田書店
◆価格 2,700円+税(2,970円)

 復帰50年を期して編まれた論考集。専門分野それぞれ異なり、政治学、経済学、社会学、行政学、歴史学など。共通しているのは、戦後沖縄のアメリカ統治時代を研究課題としていること。そうしたメンバーによって、新たな戦後沖縄史の研究と議論を深めるための、基礎的な研究成果を学ぶことができるのが、本書の魅力である。

《第1章 反共社会の形成と反米政党の活動――人民党への支持と活動を好例にして》

 まず冒頭から興味深いのは「沖縄人民党」研究である(高江洲氏)。
 人民党といえば、瀬長亀次郎。さらに復帰後は日本共産党に合流し、現在は日本共産党沖縄県委員会として活動している。
 この人民党が、戦後アメリカ統治の下で支配的思想となった「反共」意識のなかでどのように沖縄人・沖縄県民のなかで受容されていったのか、というかなり斬新な研究である。

 確かに沖縄の共産党は、県議会では与党に属し、現在7議席を有する(定員48人 議席占有率14.6%)、有力な勢力である。衆院小選挙区では那覇市を中心とする第1区において「オール沖縄」統一候補である、赤嶺政賢氏が現職の衆院議員として(そして共産党では唯一の小選挙区選出議員)存在している。

 同時に、人民党がアメリカ統治下において、厳しい弾圧にあったことや、保革のさまざまな政治勢力が混在する沖縄政治のなかで、どのような立ち位置、存在感を示していたのかなど、これまで私がほとんど触れることのなかった視点が提供される。

 私は「沖縄人民党の歴史(1985年刊行)」という書籍を持っている。これまで、読み始めるためのいわゆる「取っ掛かり」となる事象があまりなかったこともあり、完全に本棚のブロックと化しているが、これを機に読み始めようと考えている(続く…と思います…)

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