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ハラスメントでメンタル休職した人のバイブルは、『精神障害の労災認定』です。

【ハラスメント自己防衛マニュアル(6)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。


1、「精神障害の労災認定」を読んだことがありますか?

 僕はこれまでに2百人以上の経営者と面談してきましたが、その際には、必ず、印刷した実物を手渡して「読んだことがありますが?」と質問してきました。 でも、「精神障害の労災認定」を「読んだ事がある」と答えた経営者は、たった3人しかいませんでした。

 1人目は、労働問題に詳しい人事担当役員さん。話をしていて、法律にも判例にもやたら詳しい人だなあ、この人はただ者ではないぞ…と思っていたら、名刺には書いていないが弁護士資格を持っているとのこと。社員のメンタル休職が増えているので勉強したそうですが、法律や判例を知っているからと言って、会社のメンタル休職者対策がうまく行っているわけではないと話していましたね。

 2人目は、「メンタルヘルスマネジメント検定1級」の資格を持つ社長さん。 この方も、社員がメンタル休職したことがきっかけで、大阪商工会議所が運営している「メンタルヘルスマネジメント検定」のテキストで勉強を始め、その後、検定試験にも合格したそうです。ちなみに、僕もこの資格を持っていますが、 この検定1級の学習内容に「精神障害の労災認定」が登場します。社長さん曰く、「テキストで勉強はしたが、実際に、厚生労働省のホームページから実物をダウンロードしたのは初めて…」と話していました。

 そして、3人目は、ちょうど労災認定を受けてしまった直後の社長さん。こうなる前に「精神障害の労災認定」を読んでおくべきだったと話していました。この会社のケースは、過重労働が問題となり労災認定されたものででしたが、まさに、この冊子で示されている認定事例と同じ状況が発生していました。社長さんは、研修などで、この内容を管理職に勉強させていたら。メンタル疾患で労災認定が発生するような事態を防げたんじゃないか…と思ったのでしょう。

 実際のところ、ぼくが経営者や管理職向けに「ハラスメント研修」を行うときには、必ず、現物を配布して、そこに記載されている事例を全部読んでもらいます。そうすることで、防げる労災事故があると考えているからです。

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 2、「精神障害の労災認定」には労災認定の基準が事例で示されている。

 この冊子の見所は、ずばり「(別表1)業務による心理的負荷評価表」で、ここに労災認定の基準となる事例が一覧で示されていることです。この事例を、ひと通り読むと、職場で発生したメンタル休職が労災認定を受ける可能性がどの程度あるのかが、大体わかります。今回の記事に、PDFのリンク先を記載してありますので、開いてみてください。

 この表は、縦には、労災認定される事例が36事例ならび、横には、人理的負荷の程度の判断基準が「弱」「中」「強」と並んでいます。基本的に、心理的負荷が「強」に該当する事例であれば、労災認定を受ける可能性が高くなります。 

 例えば、事例29番目の「パワハラで精神障害を発症した事例」を見てみましょう。この事例は「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」というものですが、心理的負荷が「強」の事例として「部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような限度が含まれ、かつ、これが執拗に行われた」と示されています。

 一方で、人理的負荷が「中」の事例では、「上司の叱責の過程で業務指導の範囲をいつ脱した発言があったが、これが継続していない。」とされています。 つまり、パワハラによる精神障害が労災認定を受ける際の判断根拠として、行為の「継続性」が、重要な判断基準になっていることがわかります。

 事例が、かなり具体的だと思いませんか?

 労災認定を行うかどうかは、役所が職権で判断しますので、実際に申請してみなければ、最終的に労災認定されるかどうかはかわかりません。それでも、「弱」の事例では労災認定の可能性が低く、「強」の事例では労災認定の可能性が高いことを、申請する前に予想することができるのです。

次回は、「精神障害の労災認定」に記載されてる、ハラスメントによる労災認定の事例を紹介したいと思います。

<精神障害の労災認定;リンク先>

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf