見出し画像

『マタハラ』って、どうして起こるのですか?

【ハラスメント自己防衛マニュアル(18)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。


 今回は「職場でのマタハラ」を取り上たいと思います。


0、マタハラが起きる背景

 マタハラが発生する原因は、会社の管理者や同僚が、出産や育児をする女性労働者等の権利や義務を知らないことから起こります。

逆に言うと、その法律上の権利&義務が双方に認知されると、自然と解決してしまうことが多いのです。

ですので、被害者は側は、あまり深刻な事態にはなりません。

 むしろ、法律を理解していなかった管理者や経営者は、大きな代償を払うことになります。会社経営者は、「知らなかった」ではすまないことが多々ありますが、マタハラに関する法律も、そのひとつです。

 もしも、今あなたが被害者なら、まずは上司に法律を理解してもらい、組織として、制度利用が可能な状況を整えてもらうことが必要です。

 マタハラによる職場のいじめも、上司が毅然とした態度で「法律上の権利だから認める」と表明し、組織的に代替社員の確保等が進めば、少なくとも制度利用ができなくなる事態は防げるはずです。

 一方で、上司に相談しても何も対策がなされず、事態が解決しないとすれば、残念ながら、その職場が「法律違反のブラック企業」だということですので、対処は難しくなります。

 もちろん、争えば、労働者の権利は認められますが、組織的に法律違反をしようとしている会社は、常に権利を行使させないよう組織ぐるみでハラスメントをしますので、将来に渡って、悩みを抱える可能性があります。

 ハラスメントの問題が、直属の上司や、特定の同僚との間だけの問題なのか、それとも、組織として問題を解決しようとしないブラック企業なのかを見極める必要があります。

 なお、マタハラに関する法律上の防止義務は、実は、出産&育児に関するハラスメントだけでなく、介護休業等に関するハラスメントも含まれているので、その点は、注意が必要です。

1、マタハラの定義を確認しよう

 まず、マタハラの定義ですが、「妊娠・出産、産前・産後休業、育児休業等を理由とした解雇、不利益な異動、減給、降格などの取扱いを行うことは、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法で禁止されています。」となっています。

 なお、「妊娠・出産、産前・産後休業、育児休業等」の「等」には「介護」も対象に含まれています。

 もうひとつ、この定義で確認しておきたいことは、「理由として」と「契機として」と言う2つの言葉の意味です。

 男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の違反の要件となっている「理由として」とは妊娠・出産、 産前・産後休業、育児休業等の事由と不利益取扱いとの間に「因果関係」があることを指します。

 妊娠・出産、産前・産後休業、育児休業等の事由を「契機として」 不利益取扱いを行った場合は、原則として「理由として」いると解され、法違反と なります。(事由と不利益取扱いとの間に因果関係があるとううこと。)

 ここで使われている「契機として」というのは、『原則として、妊娠・出産、産前・産後休業、育児休業等の事由の終了から1年以内に不利益が なされた場合は「契機として」いると判断されます。

 ただし、事由の終了から1年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっている、 又は、ある程度定期的になされる措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については事由の終 了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断さ れます。

2、マタハラの具体的な事例は?

 職場における妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメントには、以下のような事例があります 。

(1)解雇その他不利益な取扱いを示唆するものや、   産前休業の取得を上司に相談したところ、「休むなら辞めてもらう」など解雇を示唆された。

 (2)制度等の利用の請求等、又は、制度等の利用を阻害するもの や、通勤の負担緩和のため時差出勤を申し出たところ、同僚から「自分なら時間通りに出勤する。あなたもそうすべき。」と繰り返し言われ、制度の利用をあきらめざるを得ない状況となった。

(3)妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの 妊娠したことを同僚に伝えたら、「自分なら今の時期に妊娠しない。あなたも妊娠すべきでなかった。」と繰り返し言われ、就業するうえで看過できない程度の支障が生じた。

 『事業主』は、これらのハラスメントが生じないように、また、もしもハラスメントが生じてしまった 場合には迅速に対応できるよう、雇用管理上の措置を講じなければなりません。

 ただし、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づ く言動によるものについては、ハラスメントではありません。  

3、マタハラはなぜ起こるのか?

 原因は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、妊娠&出産、育児を行う労働者に認められている法律上の権利を、上司や同僚が理解していないことです。マタハラのほとんどケースが、このことが原因で発生します。2つ目の問題がなく、経営上の問題がない職場なら、知識不足を補えばハラスメントは解消します。

2つ目は、人手不足で、制度を利用する労働者の同僚などに、制度利用で担い手がいなくなった業務のしわ寄せが起こるためです。1つ目の理由が解消されても、業務のしわ寄せが起これば、繁忙度が高くなった周りの同僚の不満はなくなりません。その不満が、ハラスメントにつながる負のエネルギーになります。

4、マタハラへの自己防衛

 ハラスメントは、「人と人との間」で起こります。

 ですので、明らかに悪意のあるマタハラを受けているケースでは、「行使者に対して影響力のある人」から、「行為者」に対して、「その行為は法律違反で、法律違反が公になれば、事業主が責任を取ることになる」と指導してもらうしかありません。

 まずは、上司が法律を理解しているかどうかを確認しましょう。知らないようなら、人事部門を巻き込んで、上司に法律を理解してもらう必要があります。

 添付している厚生労働省の資料は、とてもよくまとまっっているものなので、是非ダウンロードして読んでみましょう。

 そして、上司に時間を取ってもらい、あなたの勤めている会社にどんな制度があるのかを聞いてみましょう。

 もしもその段階で、上司から「制度が良く分からない」と言われたら、総務部門や人事部門を巻き込んで、上司とあなたが正しく制度内容を理解することから取り組みましょう。

<『働きながらお母さんになるあなたへ』のリンク先>

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000563060.pdf

画像1

 上司が制度をきちんと理解すれば、同僚との間で問題が起こったときに、その矛先を上司に向けることができます。

 マタハラが深刻化するのは、職場で適切な対応がなされず、「制度を利用する間のあなた仕事を代替する要員」が補充されないからです! 

 そして、その補充を手当できるのは、(あなたでも同僚でもはなく、)上司と事業主しかいないのです。

5、制度利用の際に、気をつけたいこと。

 最後に、制度利用する皆さんにも、心がけるべきことがあります。

 それは「周りへの配慮」です!

 あなたの職場には、子供が欲しくてもできない女性社員がいるかもしれません。あるいは、過去に制度利用が制限されて、とても苦労をした先輩社員がいるかもしれません。

 そういった同僚社員のことを考えずに、自らの権利ばかりを主張することは、あなたに悪気がなくても、相手に不快な思いをさせる可能性があります。そして、そこで生まれた周囲の同僚の負の感情(負のエネルギー)が、ハラスメントに繋がります。

 ですので、職場では極力妊娠の話題は避けるとともに、業務の負担が増えた同僚への感謝を忘れずに伝えることが必要です。このことは、産休、育児休暇後の職場での関係にも大きく影響してきます。

 出産&育児というイベントを乗り越えて、職業人としてのキャリアを積んでゆくために、今後とも長く付き合ってゆくこととなる職場の同僚と関係は、大切に育んで行きたいものです。。