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『ハラスメントで労災申請』って、アリですか?

 【ハラスメント自己防衛マニュアル(7)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。



1、労災認定される「精神障害」とはどんなものか?

 今回は「精神障害の労災認定」に記載されている、「パワハラ」「セクハラ」の事例を取り上げます。職場における「パワハラ」や「セクハラ」の結果、体調を崩してしまった時に、労災で補償してもらえるのだろうか?ということです。

 ところで、ここで取り上げている「精神障害」は「メンタル疾患」とは違うのかな? と気になった方もいらしゃると思いますが、労災認定の対象とされている「精神障害」についての解説が「精神障害の労災認定」に記載されています。

 それによると、労災認定される精神障害は、国際疾病分類第10回修正(「IDC-10」)第Ⅴ章の「精神および行動の障害」分類のうち、頭部外傷、認知症、アルコール依存症、薬物依存、を除いたものとなっています。つまり、労災認定の対象となる「精神障害」には、私たちが一般的に「メンタル疾患」と呼んでいるものは含まれています。

2、パワハラの事例

 パワハラに該当する事例は、事例29の「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」です。心理的負荷の強度が「強」になると労災認定される可能性が高くなりますので、「中」と「強」との違いが、認定されるかどうかの判断基準だと考えて良いと思います。

 事例29の「強」の事例は、「部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような限度が含まれ、かつ、これが執拗に行われた」「同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた」「治療を要する程度の暴行を受けた。」となっています。

 一方で、人理的負荷が「中」の事例では、「上司の叱責の過程で業務指導の範囲をいつ脱した発言があったが、これが継続していない」「同僚等が結託して嫌がらせを行なったが、これが継続していない」とされています。 つまり、パワハラによる精神障害が、労災認定を受ける際の判断根拠として、行為の「継続性」が、重要な判断基準になっていることがわかります。

3、セクハラの事例

 セクハラに該当する事例は、事例36の「セクシャルハラスメントを受けた」です。パワハラ同様に、心理的負荷の強度が「強」になると労災認定される可能性が高くなりますので、「中」と「強」との違いが、労災認定されるかどうかの判断基準と考えて良いと思います。

 セクハラの場合は、4つの判断基準があります。              

1つ目は「胸や腰への身体接触を含むものだったかどうか?」         

2つ目は「その行為が継続していたかどうか?」 

3つ目は「発言のみの場合、人格を否定するような言動が含まれていたか?」  

4つ目は「会社がセクハラがあると把握した以降、適切なかつ迅速な対応があり、改善されたかどうか?」

 例えば、「胸や腰への身体接触があった場合」でも、心理的負荷が「中」となるケースがありますが、それは、「①継続性がなく、②発病前までに、会社が適切かつ迅速に対応し解決した場合」となっています。

 また、「身体接触のない性的な発言のみのセクハラの場合」では、「①継続していない場合」、「②発言が複数回行われたとしても、発病前までに、会社が適切かつ迅速に対応し解決した場合」は「中」にとどまります。

 一方で、「発言が継続した場合」には、「①人格を否定する発言が含まれた場合」、あるいは、「②会社による適切かつ迅速な対応がなく、改善しなかった場合」は、「強」になるとされています。

 ところで、「強姦」や「本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラスメント」は、上記の事例よりも心理的負荷が重い「特別な出来事」とされていて、いずれの場合も、心理的負荷は「強」となります。

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<「精神障害の労災認定」リンク先>

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120215-01.pdf

次回は、ハラスメントと長時間労働の関係について、書きたいと思います。