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ハラスメントで、『うれしい』って感情を忘れてしまった人へ

【ハラスメント自己防衛マニュアル(10)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。


 前回は、「自分自身」「自分自身を見ている私」について書きましたが、今回も、この話の続きをしたいと思います。 (このnoteから読み始めた方は、是非、前回の「ハラスメント自己防衛マニュアル(9)」から先に読んで下さいね。)


1、喜びや悲しみを感じるは「自分自身」

 心の中で、「自分自身」と「自分自身を見ている私」を分けてみると、喜びや悲しみを感じているのは「自分自身」の方だと分かります。

 そして、「自分自身を見ている私」は「自分自身」を客観的に観察しながら、次に何をすべきなのかを考える役割を担っています。

 私達が、幸せな気持ちになるためには「自分自身」に喜びを感じさせなければなりませんし、 不幸な気持ちにならないためには「自分自身」を悲しみから守らなければなりません。

 そうした「自分自身」の置かれた状況を客観的に観察し、「喜び」を増やし「悲しみ」を減らす対策を講じているのが「自分自身を見ている私」です。

2、「自分自身を見ている私」は、無意識のうちに「自分自身」を守っている

 「自分自身を見ている私」は、普段、意識していなくても、「自分自身」を守るために「無意識」の世界で働いています。

 「自分自身」と「自分自身を見ている私」を分けて認識するということは、私たちの心が、無意識の世界で、どんな働きを持っているのかを知ることでもあります。

 ハラスメントを受けると、「自分自身を見ている私」は、外からの攻撃から「自分自身」を守るために、外からの刺激をできるだけ受けさせないように、予防策を講じます。

 例えば、「自分自身を見ている私」は、「自分自身」に「言葉の暴力」が届かないように耳を塞いだり、「自分自身」が悪意のある他者と関係を持たないように、人との距離を広げようとします。外からの刺激が少なくなれば、嫌な思いをすることも少なくなると考えるのです。  

 確かに、こうした予防策を講じれば、「自分自身」は外からの刺激を受けにくくなり、悲しい気持ちを感じなくて済むかもしれません。

 でも、外からの声に耳をふざき、人との接触を持たなければ、「悲しみ」だけでなく、「喜び」も感じられなくなってしまいます。

 「自分自身」が「喜び」を感じるためには、 傷つくかもしれないリスクを負ってでも、「自分自身」を外界に対して、心を開いていることが 必要なのです。

3、ハラスメントを受けると「喜び」が消失してしまう

 ハラスメントを受け続けると、どうなってしまうのでしょうか?

 常に外界から攻撃を受けているのですから、 手をこまねいて「自分自身」をその攻撃にさらし続けるわけにはいきません。

 「自分自身を見ている私」は無意識のうちに、「自分自身」守るため、外界からの攻撃(刺激)から「自分自身」を遠ざけようとします。

 残念ながら、私たちの心は「うれしい刺激は受け入れて、悲しい刺激だけを遠ざける」といった器用なことができないようです。

 両手で耳を塞げば、良い話も、悪い話も、一緒に聞こえなくなってしまいます。

 ハラスメントを受けると、人は耳を塞いで、人との距離を取ろうとするので、私たちは、他者との触れ合いから与えられるはずの「喜び」も、 同時に感じられなくなってしまうのです。

 そして、そうした「喜び」の喪失は、私たちから「生きる意味」をも奪ってしまいます。

4、「自分自身を見ている私」を意識して、コントロールするには?

 前回も書きましたが、「自分自身を見ている私」を意識するためには、心の中で「自分自身」の実況中継をすることが、訓練になります。 

 また、「自分自身」が感じていることを「自分自身を見ている私」に語らせて、それを紙に書き出すことも、無意識の世界で起こっている私達の心の動きを理解する上で、役に立つと思います。

 1日15分、静かに「自分自身」のことを「自分自身を見ている私」に語らせて、紙に書き出してみませんか。

 紙に書き出すことで、無意識の世界で起きている防衛反応を理解できます。理解は、コントロールをするための第一歩です。

5、無意識の防衛反応を、戦略的な自己防衛策に替えてゆくために

 無意識の防衛反応がどう働いているのかを理解できれば、それらの防衛反応に全てをまかせるのではなく、やり方を工夫して、法律やテクニックに基づく戦略的な自己防衛策に上書きしてゆくことができるハズです。

 たとえば、こんな感じです。

・言葉の暴力の対して、耳をふさいで耐えようとするだけでなく、iPhoneのアプリを起動させて証拠を録音しよう。

・他人が怖いと言って、他者のとの関係を避けるだけじゃなく、「優越的な地位」の影響力の及ばない同僚を仲間に引き入れよう。社外の第三者である、医師や外部の相談窓口を味方につけよう。

・ハラスメントが嫌だと嘆くだけじゃなく、具体的に、何が、どんな法律に違反しているのかを 指摘できるようになろう。

 とはいえ、今まさに、ハラスメントで苦しい想いをしている人にとっては、 恐怖や悲しみが強すぎて、直ぐには、気持ちや行動を変えることが難しい状況もあるでしょう。

 そんな時には、自分の心と身体の健康を守るために、ハラスメントから逃げることを、優先すべきです。

次回は、ハラスメントから「逃げる」ことについて、書きたいと思います。