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『職場での優越的地位』にも、構造的な弱点があるんです!

【ハラスメント自己防衛マニュアル(2)】

これまでに書いて来たハラスメント対策は、マガジンにまとめていますので、ハラスメント被害に遭っている方は参考にしてください。



1、 自己防衛は、自分自身の考え方や行動をコントロールすること


 法律でハラスメントの防止措置が義務化され、企業の経営者も防止したいと思っているにもかかわらず、ハラスメントが起こってしまう職場で、あなたができることは、自分の考え方と行動をコントロールすることだけです。

 あなたに対して、ハラスメントを行う相手の行動を変えさせるのは容易ではありません。なぜなら、ハラスメントの行為者は「職場での優越的地位」を利用するので、あなた自身に「NO」と言えない立場の弱さがあることが多いからです。そうでなければ、嫌なことは断ればいいし、嫌な相手なら合わなければいいのですが、それができない理由があるのです。

 今回、ご提案する自己防衛策は、大きく2つに分けられます。       

 1つ目は「ハラスメントが起こる構造を理解し、自分の行動を変えること」   

 2つ目は、「会社の安全配慮義務、労働者の権利と義務を正しく理解すること」

 この2つは、ハラスメント自己防衛の両輪で、どちらが欠けていてもハラスメントから自分自身を守ることはできません。

2、ハラスメントは「職場での優越的な地位」が利用される。

 「ハラスメントが起こる構造を理解する」ことは、自己防衛の手段を考える上で、最初に抑えておきたいポイントです。ハラスメントは多くの場合、「職場での優越的な地位」が利用されます。典型的な例は、上司と部下、発注者と派遣社員や契約社員、取引先と営業担当者と言った関係性の中で、仕事とは関係のない要求を求められたり、指導の範囲を逸脱した、人格否定を伴うような言動が取られます。

 ところで、この「職場での優越的な地位」は、当事者間でしか効力がありません。ですので、マスコミ報道などで明るみになると、客観的に見ればおかしな要求であることは誰の目にも一目瞭然で、社会的に許されない行為だと断罪されるのです。

 自己防衛策を考える上で、大事なことは、ハラスメントの予兆があったときには、できるだけ早く「職場での優越的な地位」の影響が及ばない人を、相手との関係性の中に巻き込むとことで、ハラスメントが深刻化する事を防げる可能性があります。

3、「上司からのパワハラが起こる構造」に対処するには?

 例えば、直属の上司からのパワハラがひどくなりそうだったら、その上司の影響の傘の外にいる人との関係を大事にすることです。上司の影響力の傘の外にいる人は、その上司の行動がおかしいと言える立場にあります。そうした人が、あなたと上司との関係に中に関わるだけで、上司は理不尽な言動をとることが難しくなります。

 逆に言えば、「職場での優越的な地位」の影響が及ばない人が介入しない限り、職場でのハラスメントの解決は難しいのです。ですので、日頃から、自分の組織以外の人との関係(組織上のナナメの関係)を大事にしておき、いざとなったら相談できる相手(隣の組織の上司や同僚)を複数持っておきましょう。

 行為者からみると、組織内に顔が広い人には、「職場での優越的な地位」を使った理不尽な要求がしにくいものです。なぜなら、自分の行為に後ろめたさがあるので、自分の「職場での優越的な地位」の外から目が気になるからです。

 最近、話題となっているカスタマーハラスメントの場合でも、そのお得意様との取引が、自分の成績に直接関係がない人ほど、理不尽なことは理不尽だと声を上げやすく、力になってくれる可能性が高いでしょう。

 また、そうしたカスタマーハラスメントは、公になると、行為者だけでなく、放置した会社側にも社会的な制裁が及びます。宴席での女性行員へのセクハラを容認したとして、銀行の頭取が辞任した事例が記憶に新しいところです。

 次回は、「会社の安全配慮義務、労働者の権利と義務を正しく理解すること」について、書きたいと思います。