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『自治体の法規担当になったら読む本 改訂版』(学陽書房/2024年)改訂版と初版との違い

千葉県佐倉市の塩浜財政課長・学陽書房の御担当者様からいただいてしまいました。既にネットで注文しているので、それは課に寄付することにします。少しばかり改訂版と初版との違いを。


【本書について】

・当方では、法規担当になった(総務課や行政課、文書課などで、条例等の審査や立案、法律相談などを担当する部署)方に、異動の内示が出た直後ぐらいに必ずこの本をあげて、事前に読んでもらうようにしています。
・法規担当の業務の流れなどを知る最初の1冊目として最適な本であると考えています。
・内容も広く(浅く)、痒いところにもしっかり手が届くようになっています。この本を最初に読んで、さらにこの本に記載のブックガイドや参考文献に挙げられた本に広げていくとよいと考えています。

*なお、『法律文章読本』(白石忠志著・弘文堂・2024年)25ページには、「この○○」という意味で「本○○」という表現について、古い言い回しであるとされています。気づいたのですが、「本書」なら何となくわかりますが、「この本」という意味で「本本」としたら意味不明ですね。

【全体として】

・「など」「等」といった記述を削除して、最初に知っておくべき原則論を書く形になっているようです。全体として、(無駄な)修飾語や回りくどい言い方、例外があることをにおわせるような法規担当独特の表現をやめて、シンプルで分かりやすい表現になっています。
*筆者の塩浜さんから「若書き」であった表現を改めた旨の御回答をいただきました。「若書き」、なるほどと思えます。法規担当独特の一種の「悪さ」のようなものが抜けて、大変シンプルで読みやすい(特に初めての法規担当には分かりやすい)ものになっていると思います。なお、2014年と2024年で若書きは直りましたが塩浜さんの髪型は変わっていないように思います。
・「普通地方公共団体」、「地方公共団体」(法令上の用語)と「自治体」(俗称)について、「自治体」の語に統一したようです。
・「地方公共団体の長」(法令上の用語)は、単に「長」と表すようになったようです。なお、「首長」は、法令上は内閣総理大臣のことです。

【旧版と改訂版との違いメモ】

以下、改訂版において、2014年3月20日に発刊された初版から変更等された部分についてメモをしましたので記録としてのことしておきます。

<改訂版の刊行にあたって>(p2-3)

ここでは、改訂版において追加された部分が書かれています。全体を確認したところ、大きく変わったのはここで述べられている行政不服審査法の改正部分や「題名」「改正方法の選択」などの追加部分ですので、初版をお持ちの方は、まずこの追加部分に目を通してみるとよいかもしれません。

ここに書かれているように、法規担当として得た知識は、行政のあらゆる仕事の基礎・土台となるものです。しっかりと勉強して身に付けた法務の知識は裏切りませんので、ぜひ頑張っていただきたいです(クレーマー対応にもとても役立ちます。というか役立っています。)。

なお、「おわりに」は削られて、この刊行にあたってに記述が統一されています。

「あたって」については、公用文の書き方からすると「当たって」ですが、「すべて」「あたり」などは、本書ではひらがなに統一しているようです(というか、そういう書籍がほとんどです。)。

<洋々亭に関する記載が削除>(14p)

その代わりにXが入っています。自分も昔は洋々亭を見ていましたが、最近ではあまり見ていません。明らかに間違っている(思い込みの強い)記述が平気で書かれていて訂正されていないなども多く、取捨選択する知識を得てからみたほうがよいということではないかなと勘ぐっています。

<郵政民営化→行政不服審査制度の見直し>(p15)

確かに、郵政民営化がピンと来ない年代の方も多いと思いますので、これでよかったように思います。

<4~6月の部分>(p17)

「4・5月に臨時会が”あれば”」となっています。179条専決処分については、「次の議会で承認」を求めればよいので、承認議案を出すために臨時会を開くことはしません。予算案や条例案、一般議案(単行議決)などがあって臨時会が開かれれば、承認をそこで出すという意味で書かれています。
なお、片山さんが言っていましたが、実際、年度末でも臨時会を開こうと思えば開けるので、無理やり臨時会を開いて税条例の改正議案を出す自治体もあります。

「12月定例会」「3月定例会」と書かれていますが、自治体によっては、令和○年第1回定例会、令和○年第2回定例会となっています(東京都議会など)。この場合、3月定例会=第1回定例会、6月定例会=第2回定例会です。

<政策的な条例の把握>(p20)

政策的な条例について、空家対策条例がパートナーシップ条例、ケアラー支援(たぶんヤングケアラーのこと?)に変わっています。最近の傾向を踏まえた変化だと思います。また、近時では、犯罪被害者支援条例も注目されていると思います。

<法規担当が備えたい3つの知識>(p21-p22)

法的思考力の記述が重複していたことから、今回はこのように3つの知識として追加されたように思います。
背景となる知識や知識の調べ方の部分には、参照とされるページや章が出てきませんが、後の記述で補完されていますのでここはざっと読み進めるだけでよいと思います。

<例規の種類 ②規則>(p30)

規則について「財務など自らの事務について定めることができる」とあります。例えば、地方自治法施行令第173条の6は、
「普通地方公共団体の財務に関し必要な事項は、当該普通地方公共団体の規則で定める。」
と定めており、財務に関しては規則で定めています。当方で言えば、財産管理規則、予算決算会計規則、契約規則などがこれに当たります。

要綱の部分で、「規程形式の内規の呼称」とされています。規程形式というのは、条文の形式と考えて間違いないと思います。国の要綱のように、条文の形式になっていないものもありますので注意が必要です。p50「国の要綱、自治体の要綱」参照。

<制定根拠が法令で定められていない場合>(p32-33)

「制度の安定性が保証される」の「保証」はこちらでよいと思いますが、「対象者にその権利が保証され」は「保障」ではないかと思われます。

<条>(p35)

条名の後に、(「条番号」とはいいません)が追加されました。こういうちょっとした気遣いよいですね。

<号>(p37)

「条ないし項」が「条や項」となっています。ないし(及至)については、法律文章読本でも取り上げられていますが、あまり使わないようになってきたのですね。

p19の「12月定例会ないし3月定例会」は、又はの意味と思います。p47の審査ないし関与は、「や」ですかね。

<条文の指定の仕方(図表)>(p39)

「条文の指定の仕方」は追加された部分だと思いますが、これは分かりやすくていいですね。

<題名>(p40)

「細則」についての記述が削除されています。p80で「題名」が追加されたので、ここで統一して記述することにしたようですが、あってもよかったかななんて思います。省令と長の規則の名称が同じ場合、こちらの例規を施行「規則」ではなく、施行「細則」とするのが通例です。

<たい焼き(本則と附則)>(p43)

本則と附則の説明で、魚(たい焼き)の絵が追加されました。分かりやすいかどうかは人それぞれですが、イメージとしてつかみやすいかもしれません。単に私があんこが嫌いだからピンとこないのかもしれません。

<別表と様式>(p44)

条例施行規則「など」のなどを削っています。確かに、法規では条例施行規則で様式が規定されるのがほとんどなので紛れのある表現を避けて断定したのではないかと思います。

採用の際の宣誓書など、条例で様式が規定される例や、規則ではなく要綱等で規定することもありますが、この本では原則をきちんと示した形ですね。

<会計管理者等の例規の制定権>(p46)

改定前からありますが、会計管理者の例規の制定について書かれているのは珍しいと思います。個人的には会計管理者が特別職だった時の名残ではないのかなと勘ぐっている会計部局の訓令ですが、どうなんですかね。

<地方分権改革と通達>(p56)

通達の検索方法として、第一法規の通知通達検索が紹介されています。50,000件以上の各省庁から発出された通知・通達が収録されていますので、フリーアカウントで契約して庁内で活用してもらうとよいと思います。

<条例の公布>(p58)

記述が変わった部分ではありませんが、自治体によっては、条例に1本1本署名するのではなく、次の条例を公布するとして、1か所のみの署名としているところもあります。

<形式の審査>(p67)

旧の法令データ提供サービスがe-Gov法令検索になっています。このほか、第一法規であればD1-Law現行法規(履歴検索)、ぎょうせいであれば法令webですね。

<チェックリスト(例)>(p68-69)

もともと分かりやすいチェックリストで活用できるものですが、整理条例と整備条例について記述が追加されています。

<整合性チェックの注意点>(p71)

上乗せ条例と横出し条例の例が追加されています。見た目で分かりやすいのでいいですね。

<検察協議と自治体>(p77-78)

記述は変わっていませんが、検察協議の部分で、最近当方では「警察」協議も求められるようになりました。ごみの持ち去り条例の改正の際に求められたものになります。地域によっては、実力行使部隊である警察との協議も必要になろうと思われます。

<題名>(p80-82)

題名の項目は追加されたものです。法制執務における題名の知識の最低限の部分は全て詰まっているように思います。3ページしかないですが、端的に重要な部分が記載されていて、とても分かりやすいと思います。

<趣旨規定の書き方>(p89)

趣旨規定の参考条文が、千葉市の個人情報保護法施行条例に変わっています。端的で分かりやすい例規を持ってきたなという印象です。

<コピーサービスの取扱い>(p106)

使用料の部分で、コピーサービスの項が追加されました。いいですね。私法上の契約に基づく実費としての整理がさらっとかかれています。

<特別職非常勤職員の任用>(p114)

附属機関の部分で、特別職非常勤職員の任用について項が追加されました。平成29年の地方公務員法の改正についての記述の追加部分になります。なるほど。確かにこの視点も重要でしたねという部分です。

<審査請求と条文の整備>(p122)

公の施設について、不服申立てだった記述が現在の審査請求に修正されています。議会の諮問に関しては、不適法却下の場合の例外が追記されています。

<指定管理者制度と条例>(p123)

大きく、指定管理者制度について、①基本的な例規整備と②管理移行の取扱いに分かれていた指定管理者制度と条例の部分が、最近では当たり前になっている部分の記述を削除した形になっています。

初版当時は、指定管理者制度をこれから導入する(直営から指定管理者制度に変える)という自治体も多かったことから、このような記述があったのだと思いますが、昨今では公の施設条例制定の段階で既に指定管理者制度を念頭において作られることが主流だと思われるため、がっつりと削られたのだと思います。

直営から指定管理者制度に移行するときの注意点は、初版p118-125を参照してください。とっかかりにとてもよいと思います。

<条例で定める事項 ②管理の基準>(p125)

「構成上」を「構成が」に直しているあたり、やはり読みやすさを考えてしっかり練られているなと感じます。

長を指定管理者に変えるなど、語句の修正については、上記の理由(指定管理者制度の条例が定着している)のためか削除されています。

一時的な直営の部分は、初版から同じですが、最近、指定管理者のなり手が少なくなってきていることから記述として残されていると思います。

<審査請求と行政訴訟>(p127)

指定管理者の行った利用不承認(不許可)処分について、審査請求先は長、訴訟は指定管理者が被告と丁寧に記述されています。また、それに伴って教示文も変えなさいとの指摘があります。いいですね。
審査請求と行政訴訟の絵も追加されていて分かりやすいです。

<罰則とは>(p128)

刑罰にこっそり没収が追加されています。

刑罰の部分で、2025年6月1日から施行される刑法の一部改正(2022年6月)により懲役と禁錮を一緒にした拘禁刑についても記載されています。今年度の法規担当は、この改正がありますね。法務省?だったかが説明会で検察協議が必要と言ってましたので、各自治体、検察協議も進める必要がありますね。

個人的には、行政不服審査法の改正の時もそうだったのですが、他の自治体がやった後だとすごく楽だったので、できるだけ遅くやろうと思っています。

<刑罰と秩序罰の違い>(p129)

過料について、長が賦課決定処分として科すという部分が削除されています。単純に、法律に基づく過料であれば非訟事件手続法に基づき裁判所が科すこと、条例に基づく過料であれば長が行政処分で科すこと…まで記述する必要は、本書の段階では不要かなという判断かと思われます。

参考として地方自治法第255条の3では、「普通地方公共団体の長が過料の処分をしようとする場合においては、過料の処分を受ける者に対し、あらかじめその旨を告知するとともに、弁明の機会を与えなければならない。」とされています。

<刑罰か過料か>(p130)

初版から変わっていない部分ですが、「③刑罰か過料か」について、検察協議が大変なので過料にしておくという自治体もあろうかと思います。とりあえず、宝塚パチンコがあるので、何らかの罰則は欲しいけれども時間がない(面倒くさい)から過料でというところも多いのではないでしょうか。あとは周知期間がそれほどとれないとか。さすがにここまで赤裸々には書けませんね。

<附則とは>(p132)

附則について、条建てではなく、項による構成が一般的であるとの記載が削除されています。

伊藤和之著『基礎から分かる!自治体の例規審査』p141にも記載がありますが、かつての法令は、本則と附則を区別するために原則として項建てとしていたが、現在では、法令が条建てとすることが多く、規定する事項が多くなる場合には条建てにしたほうがよいとされています。

<主なチェックポイント>(p135)

例として挙がっている鳥取県の条例が、横浜市市民協働条例に代わっています。たぶんですが、本書で例として挙げる条例は、全て神奈川県内の条例とするよう一本化したのかなと思います。

<表記基準が改正された場合の取扱い>(p141)

公用文については、法制執務上の大切な部分の記述に限定されているのでしょうがないと思いますが、念のため「公用文作成の考え方」について(建議)(令和4年1月7日)についても触れてあってもよかったかなと思います。なお、p161で「、」と「,」についての部分で建議には触れられています。

この建議については、白石忠志著『法律文章読本』にも記載がありますので、参考にしてみるとよいかもしれません。

なお、少なくとも当方ではこの建議は活用されていませんし、参考にされてはいません。建議があったことの周知はしましたが、研修等にも取り入れておりません。実際、例外も使いにくく、分かりにくいですしね。自治体の実務レベルで活用されているかは、まだまだ疑問ではないかと思われます。

<迷ったときは>(p152)

衆議院のホームページからの検索方法の紹介が少し修正されています。法律は、このページだと「法律第五十六号(平五・六・一〇)」のようにあらわされているので、「平成」ではなく「平」で調べてみましょうということでしょうか。なお、p215-216と記述が重なる部分があります。

<改正方法の選択>(p154-155)

「改正方法の選択」は今回追加された部分です。

一部改正、全部改正、廃止制定については、迷うことも多い部分です。本書に記載のありますように、明確な基準はありませんので、最終的には例規についての庁内の審査会・検討会議や政策判断によることになるかと思われます。

複数の例規の一括改正も結構あります。整理・整備だけでなく、内容としては及び条例や3つ以上の条例もカバーしているのかなと思います。そこまで細かい記述は本書では不要ですしね。

国について、同一の委員会の担当に属する法律を束ねるよう努力する旨の記載があります。自治体によっても、合同(連合)の委員会とならないように、そうした工夫をされているところもあると聞いています。

<ローカルルールとは>(p159)

「とりあえずは個別の事例に前例踏襲で対応する」旨の記載が削除されています。結構いい記載だと思ったのですが、さすがに書きすぎた感じですかね。

<縦書きと横書き>(p161)

「、」と「,」について記述が追加されています。前述の建議の内容を反映させたものです。

<今後の動向は?>(p162)

初版からの記述ですが、インターネットで各自治体の例規を比較できる現状というのは、各自治体のホームページ上の例規検索はもちろんのこと、鹿児島大学全国条例データベース「eLen」が挙げられると思います。https://elen.ls.kagoshima-u.ac.jp/

また、第一法規であれば「全国例規集」が、ぎょうせいであれば「政策法務支援システム」があります。前者は個別で契約可、後者は例規集構築の契約が必要です。

<「新旧対照表」方式の例規改正>(p163)

初版では新旧対照表方式の都道府県が9でしたが、改訂版では15に増えています。

<「新旧対照表」方式の問題点>(p165)

3点目については、初版から変わりないのですが、ちょっと疑義があります。実際、p165で紹介されている地方税法の一部を改正する法律の附則についてですが、仮に当方(平成23年から新旧対照表方式を採用しています。)が条例で同じような改正をする場合は、同じ附則の付け方をします。

当方では、ほぼ附則は改め文になっています(他の条例の改正など、新旧のときもありますが)。そのため、改め文の知識については、ある程度ないとそもそも新旧対照表方式の条例改正はできません。当方では、法制執務研修にも多く派遣しておりますし、読み込む能力の低下はそれほどないのかなと思っています。

<府省令における「新旧対照表」方式>(p166-167)

昨今の流れに合わせて、府省令における「新旧対照表」方式についての記述が追加されています。

<新旧対照表の書式>(p167)

府省令の内容の精緻さが法律や政令より劣ることについての注意的な記述がありがたいですね。さすがに大々的には書きづらいということでしょうか、2行だけに抑えられています。

<法律に見る過誤の例>(p171)

東京地判平成18年7月11日について追記されています。ローマの休日のDVDに関する件です。
同裁判例を引用すると、

「本件改正法は、平成16年1月1日から施行され(附則1条)、本件改正法附則2条は、「この法律の施行の際」と規定しているところ、「施行の際」とは、附則1条の施行期日を受けた平成16年1月1日を指すものである。そして、附則2条の規定は、この法律の施行期日である平成16年1月1日において、現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物か、又は、現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物かによって適用を分ける趣旨のものと解される。
本件映画の著作権は、改正前の著作権法によれば、上記のとおり、平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了するから、本件改正法が施行された平成16年1月1日においては、改正前の著作権法による著作権は既に消滅している。よって、本件改正法附則2条により、本件改正法の適用はなく、なお従前の例によることになり、本件映画の著作権は、既に存続期間の満了により消滅したものといわざるを得ない。」

とされています。
過誤の部分で、執筆者も何度も冷や汗をかいたという部分が削除されています。せっかく共感できる部分だったのに笑

<議案の準備>(p175)

近年の電子データでの議案配布(議会の電子化)について追記されています。当方でも、現在は、原則として議案データは電子で配布しています。ただし、予算に関する説明書(地方自治法施行令第144条)については、量が膨大であること、見開きで見ることが前提になっていることなどから、一部紙配布を残しています。

<議決の内容と効果>(p179)

特別多数議決について、「3分の2以上など」という追記がされています。
特別多数議決については、

①出席議員の3分の2以上の多数による議決を要する場合(秘密会の開催など)
②議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の多数による議決を要する場合(議員の除名処分など)
③議員の4分の3以上が出席し、その5分の4以上の多数による議決を要する場合(地方公共団体の議会の解散に関する特例法による議会の解散)

があります。

<専決処分と法規担当>(p185)

専決処分と法規担当の部分で、損害賠償に際しては、「議決で定める金額の範囲内であるかによって」という記述が、「その金額によって」に変更されています。範囲内という記述が不正確?であるか、議決で定めるというのが分かりにくいからなのか、真意は分かりかねるところです。

地方自治法第180条第1項は、「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる」としていますので、「議会の議決で定める」というのは正しく、また、多くは「100万円以内」などと定められるので「金額の範囲内」というのも正しいように思います。単に読みやすさの配慮でしょうか。

<法律を理解するコツ>(p198-200)

「法律を理解するコツ」として新しく追加された部分です。初めての条文を読む際のコツが書かれています。本書のどの位置にこれを入れるか迷うところですが、第2章の条文の構造の当たりにあってもよかったかなと思います。

<本紙と号外>(p203)

令和5年の官報の発行に関する法律についての記述が追加されています。

<官報のチェック>(p205)

「官報」が「インターネット版官報」に修正されています。

<パブリックコメントのチェック>(p206)

パブリックコメントのURLがe-Govのそれに変わっています。このイーガブですが、白石忠志先生は、御自身のYouTube動画で自身は「イーゴブ」と読むこともあったと述べられています。

<各種試験・勉強会>(p210・p220)

旧版ではこのあたりに「7-5 各種試験・勉強会の活用」があり、自治体法務検定や法学検定、行政書士、宅地建物取引主任者、自主勉協会、自治体間交流などについて書かれていましたが、がっつり削除されています。その代わり、p220の「法務知識の習得」にコンパクトにまとめた形で追加されています。

<衆議院サイト検索のコツ>(p215)

衆議院のホームページでの過去の法案の検索方法が旧版と変わっています。あまり意識したことはなかったのですが、検索方法が変わったんですね。
なお、p152と記述が一部被っています。書いた方が別なのかな?笑

<カギは想像力>(p216)

ワード検索のキーワードに「平」が追加されています。

<規定すべき内容の固め方>(p217)

タイトルが、原課と固める→内容の固め方に変わっています(p217)。原課とともにという視点は記述の内容から変わっていないように思います。

<法務の効果的な執行>(p219)

「7-9 法務の効果的な執行」の部分が追加されました。①の「原課への支援」は、相談後も原課のことを気に掛けるようにとの部分ですが、それは現実的には厳しいのではないかなと思います。法知識向上に向けた取組をするという部分は納得です。

庁内研修については、塩浜さんの文章のどこかで見たような記述なのですが、思い出せません。塩浜研修のコツが入っているようなイメージです。

<一太郎データには配慮を>(p224)

p223でMicrosoft Word(以下単に「Word」とします)とあるので、「一太郎データには配慮を」の部分のMicrosoft Wordの記述は、旧版どおりWordのままでよいのではないかと思います。

<法律相談とは>(p226)

重複していた「法律相談として、」の記述が削除されています。

<法律相談の進め方>(p229)

「そのような場合、」が追加されています。
「赴任」を「配属」に修正していますが、p232は赴任のままです。

<相談しやすい法規担当になるには>(p232)

p233に図を加えたからか、いくつかの記述が修正、順番(語順)の入れ替えなどがされています。

<法律相談の心がまえ>(p233)

千葉県の政策法務ニュースレターの紹介が削除されています。確かに、令和2年から更新されていないようですので、不要とは思いますが、バックナンバーが結構参考になりますので、一度も読んだことがない方は見てみてもよいと思います。
https://www.pref.chiba.lg.jp/seihou/gyoukaku/newsletter/index.html

p233に庁内法律相談のフローが追加されています。法規担当として、どのように相談を処理していくかの一つの参考になると思います。

<「訴えてやる」と言われた>(p245)

憲法が保証する→保障する…ですかね。これは改定前も同じです。

・p246
日常業務が「証拠」になるの部分は、いくつかの記述を修正しています。コンパクト→小型、ICレコーダーの記述を削除、接続詞の「また、」を削除、「行政マン」を削除などです。

<適正な行政手続>(p247)

大切な「行政手続法(条例)の順守」が追加されました。紙幅の関係上、大変コンパクトな記述です。法規担当になったばかりの方は、他の書籍でぜひ知識を深めたいところです。まずは、板垣勝彦著『行政手続と自治体法務』(第一法規/2024)をお勧めします。

<行政不服審査制度>(p249)

行政不服審査法の改正に伴い、記述が大幅に修正されている部分です。
さらっと書いてありますが、「なお、審査請求自体は、対象となった処分の効力を停止させるものではありません」という指摘は重要なポイントです。

<手続きの主な流れ>(p250)

審査請求について、手続の主な流れの図が分かりやすいので、まずはここを押さえるとよいかと思います。

<情報公開制度の対応>(p251-252)

制度への関りの部分を削除し(p251)、代わりに行政不服審査制度の特例=審理員の排除について記載が加わっています(p252)。

旧版から同じですが、少し欲張ると、個人情報保護制度についても触れてあるとよかったかなと思います。

<ブックガイド・参考文献>(p253)

『行政庁」は建物ではなく人ですの部分が削除されています。

法制執務の部分では、少し古くなってしまった本を削除し(上田章・笠井真一『条例規則の読み方・つくり方(第2次改訂版)』(学陽書房)、ぎょうせい法制執務研究会編著『全訂図説法制執務入門』(ぎょうせい))、新たに吉田利宏さんの『新法令用語の常識』と『新法令解釈・作成の常識』が加えられています。自治体の例規に触れているから追加されたようですね。

最近出版された、伊藤和之著『基礎から分かる!自治体の例規審査』(学陽書房)も入っています。大変分かりやすくコンパクトにまとめられた(本は分厚いですが)本なので、ぜひ読んでほしいです。

【判例学習】は、削除されています。

【文書事務】の部分が【公用文】に代わっています。澤俊晴『自治体職員のための文書起案ハンドブック』(第一法規)が、澤さんの最新の著書『通る起案はここが違う!公務員の文書起案のルール』(学陽書房)に代わっています。基本的な記述に変わりはないのですが、より実務的になったのが後者の本です。

小澤達郎・前田敏宣『自治体の公用文作成ハンドブック」(学陽書房)が削除され、工藤勝己著『一発OK!誰もが納得!公務員の伝わる文章教室』(学陽書房)に代わっています。

【議会事務】について、全国市議会議長会編『地方議会議員ハンドブック』が、野村憲一著『いちばんやさしい地方議会の本』(学陽書房)に代わっています。個人的には、議会対応研修の資料を作ったときに、いろいろ議会関係の本を読んだ中で、地方議会議員ハンドブックが一番オリジナルな記述も多くて、この本にしか書いていないことも多かったので、地方議会議員ハンドブックは結構お勧めです。

【法律相談】について、『地方自治課題解決事例集(第4次改訂版)(ぎょうせい)』が追加されています。確かに、多くの事例が入っていて読みやすいのですが、これを全部読むのはきついですね笑

<参考文献>(p255)

高久さんの「市町村条例クリニック」が「市町村クリニック」になっています笑

高久泰文さんは、参議院法制局にいらっしゃった方で、一度研修を受けたことがありますが、しゃべりが穏やかで、具体例も豊富で、とても楽しく聞かせてもらいました。


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