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ウクライナ戦争2周年 ロシアはある時点で力尽きる

ロシアがウクライナに侵攻したのは2022年2月24日です。あれから2年が経ちました。

僕は開戦の直前に「いざ戦争となればロシアが3年くらいは平気で持久戦を戦える」という記事を書きました。実際、そうなっています。

しかし今後の展開としてはロシアは次第に劣勢になると予想します。その理由は国庫の歳入の内訳がドラマチックに変わり、やりくりが苦しくなると思うからです。

具体的には国策企業ガスプロムはいままで西欧の国々を上得意の客としてきましたが、ボイコットによりいずれ西欧への売上高はゼロになると思います。

下のチャートはEUがどこから天然ガスを買っているか? を示しています。

(出典:FT)

ロシアが激減していることがわかります。その代わりに米国のシェールをLNGというカタチで輸入することが増えています。

ロシアは西欧に高い値段で天然ガスを売ってきました。いま西欧へ向かうパイプラインは無用の長物化しています。もちろんベラルーシなどの近隣諸国へは未だ天然ガスを出荷しているもののこれらの国は貧しいので高いカネを吹っ掛けるわけにはゆきません。中国がロシア産の原油や天然ガスを以前よりたくさん買い始めていることは事実です。しかし天然ガスに限って言えばガッツリとまとまった量を供給するにはパイプラインの新設が必要であり、巨額の先行投資資金を費やしてそれを建設するだけの追加需要が中国から発生するか? といえばそれは大いに疑問です。つまりEU市場を失ったことを中国やその他の市場で埋め合わせすることはできないのです。

ガスプロムから上がる利益は大統領の取り巻きに対しておカネをばら撒く活動資金でもあります。それが自由に使えなくなるリスクもあるわけです。

加えて最近はLNGによる供給過剰から欧州の天然ガスの指標銘柄であるTTFの価格は安値圏を這っています。

(出典:トレーディングエコノミクス)

ロシアの景気は一見すると良いように見えるのですが、これは開戦直後にエネルギー価格が高騰したので儲けたカネを軍事産業に集中して投入した「戦争景気」であり、リターンを生まない一過性の費消のために国富が消えて行っているのです。

いまは北朝鮮から155ミリ榴弾の提供を受けてロシアは前線で有利に戦争をすすめているものの、北朝鮮が「世界の工場」のような感じで製造業でリードしているという風に考えるのはビジネスを知らないひとたちだけでしょう。単に昔から作り置きしてあったストックをロシアに回しただけです。

つまりロシアの戦場での大砲の優位性も、どれだけ長続きするかわからないのです。

ロシアという国は石油天然ガスの生産ならびに周辺国への安値提供が脅かされると、とたんに求心力を失うお国柄として知られています。一例として1988年にアゼルバイジャンのバクーでの石油サービス関連労働者のストライキがあったとき、ドリルビットなどの消耗品の不足でソ連の原油生産がピークを付けたことがありましたが、それから間もなくベルリンの壁が崩壊しました。

またソ連崩壊後、「世紀の売出し」により次々に民営化されたロシアの石油会社は古い技術に依拠していた関係で油井の含水率が上昇するとどんどん生産力が低下し、市場経済への移行が投資家の期待を裏切ったためデフォルト→ルーブル危機をもたらしました。

いま再びウクライナ戦争に絡むボイコットでロシアには航空機の交換部品や油田の掘削に使われる消耗品がアメリカから輸出されなくなっています。奇しくもルーブル危機のときアメリカはドットコムブームでドルが強く、「パックス・アメリカーナ(米国の世紀)」ということが言われました。

いまAIで再びアメリカは黄金時代を迎えようとしています。化石燃料に依存する経済の国が勝てるわけがありません。

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