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読了:『犯罪(Verbrechen)』 by シーラッハ〜ドイツ犯罪リーガルもの

こんにちは!

部屋の整理整頓で発掘された大量の積読から、まず、一番薄いこの本を読む。実際にベルリンで刑事事件弁護士を務めるフェルデナント・フォン・シーラッハによる『犯罪(Verbrechen)』。

いつ購入したか不明だが、帯の2012年本屋大賞の翻訳小説部門第一位という言葉が、購入の決め手だったことは間違いない。

この短編小説では、筆者と想定される刑事事件弁護士の目線で、複数の事件とその背景となる物語が繰り広げられる。

11作の短編の主なテーマは以下:

1)言葉の暴力を繰り返す妻と耐えようとする夫
2)とても怖い日本人マフィア風の家に盗みに入ったチンピラの恐怖
3)奇妙な姉と弟の愛情の結末
4)レバノン人犯罪者一家の話
5)内戦の国から逃れた少女とホームレスの青年との愛
6)ベイルートのパレスチナ難民キャンプ出身の青年と女子学生の不幸な行き違い
7)ネオナチ・チンピラを殺す国籍不明の男
8)お役所仕事が人を狂わす
9)伯爵の息子の狂気
10)甘やかされたハンニバル
11)エチオピア孤児の絶望と幸せ

アメリカのリーガル・ドラマは複数見ているが、この小説では、アメリカとは異なるドイツの刑事事件裁判の進め方や、ヨーロッパやアフリカ等の周辺の貧困国とドイツの関係、ネオナチやチンピラなどのベルリンの治安なども学べる。

淡々とした語り口ながら、残酷な殺害シーンや、些細なことでの行き違いが犯罪につながったり、貧困等から犯罪に手を染めるしかないリアルで悲しい現実にやるせない気分になる。

11篇の中では、数少ない、誰も殺されず、極悪人も出てこない、一番最後のエチオピア孤児の物語が好みだ。ドイツで生まれ育ったからか、その後、彼が逃避行するアフリカのコーヒー農園でヒーローになる。現地のドクターとの再開のシーンに感動する。

面白いから、みんな、オススメ〜!というタイプの本ではないが、ドイツの刑事事件弁護士目線での事件や現地に興味があれば、読んで見ても良いと思う。

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